「登山写真」の撮り方 その1|森山憲一|山岳ライター
2026年7月9日木曜日
2022年7月1日金曜日
盗用とか無断転載とか著作権のもろもろ
あるYouTube動画に私が撮影した写真が無断で使われていて、クレームを入れたら動画は削除されたということがありました。こういうことたまにあって、以前もブログ相手にクレーム入れたりしたことがあったな。
私が編集仕事を始めたときに先輩から教えられたことってたくさんあるのだけど、「盗用をしない」というのは、そのなかでもトップクラスに重要なことのひとつでした。他人の文章や写真、イラストなどを無断で使ったことが発覚したら、その人の編集者人生・ライター人生はその時点でほぼ終了するーーというのが、業界の当然の認識だったのです。
しかしこれは出版や新聞、テレビなどあくまでマスコミ業界内の常識であって、一般の人にそこまで厳しい認識は求められていなかったと思います。ところがインターネットの登場によって、現在は1億(世界なら80億)総表現者時代に。すべての人に著作権の知識や認識が求められるようになってしまいました。
著作権というのは非常に難しい概念で、私も基本を理解するまでに10年くらいかかりました。新人に教えるにしても、手を変え品を変え、さまざまな事例を体験させながら、数年かけてようやっと理解してもらえるような代物なのです。
編集部に入ってきたばかりの新人が、記事中の写真すべてをネットでコピった写真で構成していることに校了間際の水際で気づき、深夜にあらゆる人に電話をかけまくって総動員状態で作り替えたりしたこともありました。当の新人にはもちろんキツイお灸をすえましたが、最初は「えっ、ネットからとってきちゃダメなんですか?」と真顔で言ってました。こいつが人一倍ダメだったという可能性もありますが、出版社に入ってくる人でも最初はこんなもんです。
こういう体験があるので、私自身はインターネット上での盗用には比較的寛容なほうだと自認しています。だって1億(もしくは80億)人に著作権のこの難しいルールを守らせるなんて無理だから。大きな問題が生じないかぎりは黙認でいいと思っているし、実際そうしてきたものもたくさんあります。
そもそも、現行の著作権法は時代に合っていないのです。基本的に紙・フィルム時代の表現を想定した内容になっており、これだけ多くの人が毎日大量の発信をし、表現の手段も多岐にわたり、しかもコピーが圧倒的に簡単になった時代にはまったく対応できていないのです。現代のインターネット表現において混乱や矛盾が生じまくってしまうのは当然のこと。
とはいえ、無法状態でいいと思っているわけではなく、個人的には以下のような基準を設け、ここに抵触するものにはクレームを入れるようにしています。
1)表現そのものよりも、明らかに金儲けが目的であるもの
2)著作者や、著作物に関係する人の尊厳を傷つけるもの
3)コピー作品が原作より影響力をもってしまう場合
今回の動画は2に抵触しました。1にも該当する可能性はありますが、そこは実情がわからないので不問。
ところで著作権について話をし始めると、どうしても理屈っぽくなってしまいがちです。「~をしてはいけない」という話ばかりで、「じゃあ、どうすればいいのよ!」という気持ちにもなります。そこで、いちばん重要なポイントをひとつだけあげておきます。
他人が作った表現物を使うときは、作者の許可をとる
これです。
これをやりさえすれば、トラブルを起こしてしまうことはほぼありません。
もちろん手間がかかりますよ。使用許可をくれない人だっているかもしれない。でもそこを怠ると、後々、思わぬトラブルに巻き込まれることがあるってことです。
個人的には、こんな面倒なことをしなくても、もっと気軽にコピー利用ができる新しい時代のルールや法律ができてほしいなと思っています。でも現状そうはなっていないので、最低限のルールは守らないといけない。ましてやプロであるなら(=金をとっているなら)、最低限では全然ダメで、最大限守らないとね。
【おまけ情報】
ここで激しくオススメの本を紹介しておきます。著作権の本を何冊読んでも一向に理解できなかった諸々の事柄が、この本を読んで私はすべて一掃されました。
著作権の本って、「著作権とは、財産権、人格権、隣接権から構成されており~」なんて説明から始まるものが多いのですが、この本はまったく違います。「アンディ・ウォーホールのキャンベルスープの絵は権利侵害に当たるのか」とか「マッド・アマノのコラージュは著作権侵害に当たるのか」など、実際に問題になった実例をもとに、著作権なるものの勘所をじつにわかりやすく面白く解説してくれています。
なにより私が目を開かされたのは、著作権法の「真の目的」。著作権というと、著作者の権利を守ることばかりが注目されますが、法律の真の目的はそこではなく、創作行為をより活発にすることにあるのだというのです。パクられ放題の世の中だと、バカバカしくなって創作などする人がいなくなってしまうので、そうならないために著作者の権利を守る。順番が違うのです。
この根っこを理解させてくれるところが、この本の最大の価値かなと思います。ここさえわかっていれば、あらゆる裁判の判例もなぜそういう判断になるのか概ね理解できるようになるし、自分の身の回りの事例もこの根っこから延長して判断できるように私はなりました。
私はこの旧版を持っていて、編集部の新人に著作権について教えるとき、まずはこれを読めといつも推薦していたのですが、今本棚を探したら見つからない。だれかに貸したまま借りパクになっていると思われます。
とにかく、ここまで読んできて、著作権に興味をもった人には、この本を読むことを超絶オススメします!
2020年2月27日木曜日
経歴詐称記事のあとがき的なもの
「山写」なる人物のこと
こういう記事を書きました。
登山ライターとしてこういうことに関わるのは、気が進むものではありません。そもそも人の批判をするのは気が重い行為であるし、やたら時間と神経を使うわりにいいことがあまりないからです。ネット上でへんな誹謗中傷を書かれたりもします。
以前、栗城史多さんについて私が書いた記事がかなり注目されたことがありました。以来、登山の正義を追求する”山岳警察“としての役割を期待されているような気がするのですが、積極的にやりたいとは思いません。というのも、それをしたことろで、私には実利がないからです。
私が仕事をしている登山・クライミングメディアというのは、趣味レジャーのものであって、基本的には読者のためになるポジティブな情報を提供することがテーマであります。そこでは闇を暴くようなネガティブな記事はあまり好まれません。私が文春の記者だったら違うのでしょうが、登山界では、微妙な案件にすぐ首を突っ込む危ないライターとして避けられてしまうおそれがあります。
それでもこういうことをやってしまうのは、第一に、本当のことを知りたいからです。正義ではありません。求めているのは真実です。私は真実を知りたいという欲求が人より強いのだと思います。デマや嘘に踊らされることがものすごく苦痛なのです。自分が踊らされるのもいやだし、踊らされている人の姿を見るのもいやだ。
東日本大震災で原発事故があったときや、STAP細胞事件があったときなどは(最近ではコロナウイルスも)、自分には判断不能な情報が飛び交い、何が真実なのかまったくわからない状況が続いて、個人的にはとてもストレスでした。本当のことが知りたい!
首を突っ込む第二の理由は、本当のことを伝えるのが専門家の仕事だろうと思っているからです。原発事故のときもSTAP細胞のときも、おそらく真実はここだとわかっていた専門家はいたはずだと思います。でも伝え方が下手だったり、内部者ならではのしがらみがあったり、さらには陰謀論が好きな人が事態を混乱させたりして、そういう人の声が表に強く出てこなかったのでないか。
山写さんの件でいえば、私にはすぐわかってしまったような嘘でした。でも、こんな稚拙な(と私には思える)嘘でも、カンチェンジュンガとマナスルの違いを知らず、ヒマラヤン・データベースなど存在すら知らない人にはわからないのだ。ということを、5ちゃんねるやツイッターで交わされている議論を見ていて強く感じました。これは栗城さんの件のときに感じた感覚とまったく同じものでした。
そこでは、意図的な嘘や間違った思い込みでも、伝え方が巧みであれば世論は容易に流されてしまう。ならば、だれの目にも動かしようがない真実を、事情をよく知っている専門家がガツンと立ててやらなければいけない。それがこの世界でメシを食っている人間の使命であろう。
カッコよくいえば、そういうことが、こういうことをやってしまう動機です。所詮、自己満足ではあります。でも、だれかの役に立っていることを願っているし信じてもいます。
2020年2月26日水曜日
「山写」なる人物のこと
登山と写真で仕事をしている人。rel="nofollow"
一般にはほとんど知られていないと思われるのですが、登山と写真両方に関心のある人たちにはそれなりに影響力と存在感を持っていたと思います。とくにここ一年ほどは、ファイントラックの山岳写真用ジャケットの開発に協力したり、ペンタックスとコラボしたセミナーが開催されたり、YAMAPで連載が始まったりなど、活動が本格化していました。
本人が自称している経歴は以下のようなもの:
・20代は海外で山岳写真の修行をつむ
・現在は海外の組織に所属する立場。日本の山岳風景の撮影と、山岳写真の啓蒙のため帰国して活動している
・自身の写真作品は海外で高額で取引されている
・登山実績も豊富。これまでにエベレスト、マカルー、カンチェンジュンガ、モンブランなど多くの海外高峰に登る
・フリークライミングもうまく、これまでの最高グレードはオンサイト5.12b
・WEBディレクター/デザイナーとしての顔も持ち、さまざまなプロジェクトに参画してきた
・平湯温泉で各種広報、地方創生的な事業を行なってきた
年齢は30代と思われるのですが、こうして並べてみるとスーパーマンというか、そんな人いるの!?って感じです。
私が初めてこの人の存在を知ったのは、2016年、この記事を見たことがきっかけでした。
登山用ザックに一眼レフと大量のレンズをパッキングをする方法rel="nofollow"
まず引っかかったのがブログのタイトル「登山と写真で仕事をしている人。」
私は職業柄、登山と写真で仕事をしている人はたいてい知っているのですが、こんな人がいることはまったく知らなかった。登山と写真で仕事をしている人というのは大変少なく、私のような山岳ライター/編集者にとっては、常時大募集しているような人材であります。しかもブログを見ると、かなり登れるようであり、年齢も若そうだ。これは貴重人材!
ところが、記事をよく読んでみると、なにかがおかしい。とくに、カメラの予備ボディを持っていないところと、荷物が多すぎるということに違和感を抱きました。私の知っている山岳カメラマンは、山中での故障に備えて予備のカメラボディを必ず持っていたし、撮影機材をできるだけ持つために、登山装備は限界まで切り詰める人がほとんどでした。それに比べると、どうもプロっぽくない。
そのへんの疑問をFacebookに投げてみると、知り合いが「それ、たぶん平湯の人だよ」と教えてくれました。平湯温泉の観光協会で仕事をしている人だというのです。平湯というのは北アルプスの玄関口となる町。なんらか写真の心得がある山好きの職員が、写真素材を自分で撮影して観光協会の仕事をしているということなのだろうか。なるほど、それなら「登山と写真で仕事をしている人。」というタイトルもあり得ると納得して、しばらくは存在を忘れていました。
再びその存在を意識するようになったのは、2017年末か2018年初頭ごろ。この人がカンチェンジュンガを登ったらしいという話がSNSで回ってきたのを目にしたときでした。――えっ、カンチェンジュンガ!?
カンチェンジュンガというのは、ヒマラヤ8000m峰のなかでも難しい山で、日本人でここに登ったことのある人はそう多くはありません。
あらためてプロフィールを見てみると、すでにエベレストとマカルーにも登ったことになっている。エベレスト、マカルー、カンチェンジュンガの3山に登ったことがある日本人となると、ごく限られるはず。そんな人を知らないということはあるだろうか……。
これが、同じ8000m峰でも、エベレスト、チョー・オユー、マナスルの3山を登ったということだったら、ここまで違和感は抱かなかったと思います。この3山はガイド登山が発達していて、いまや日本人登頂者なんて無数にいるからです。しかしカンチェンジュンガとマカルーは違う。
そこで、ヒマラヤの登山者がほぼすべて記録されている「ヒマラヤン・データベース」を見てみました。案の定、それらしき人物の記載が見つからない。名前と年齢がわからないのではっきりしたことはいえないけれど、これはかぎりなく嘘っぽいのではないか……。
【ここでおまけ】
ヒマラヤン・データベースというのは、エリザベス・ホーリーという伝説的な山岳ジャーナリストが始めたもので、世界中の山岳メディアが第一級の参考資料としているものです。その網羅性と正確性は驚くべきもの。ただし閲覧の仕方がちょっとわかりにくい。私も使うたびに忘れていて困っていたのですが、今回、ある人が非常にわかりやすく使い方をまとめてくれていたので、自分の備忘録を兼ねて掲載しておきます。引用が長くなるので、先に進みたい人はとばしてかまいません。
ちなみにこの一連ツイートはツイッター上で発見したものなので、この「ひゅ〜む」さんが何者なのか私にはわかりません。が、記述内容からしてヒマラヤ登山に詳しい人と思われます。
良い機会なので山写氏を例に、ヒマラヤンデータベースの使い方を簡単に解説してみます。ヒマラヤ遠征の膨大な記録閲覧が、なんと無料。— ひゅ~む (@hume55240618) February 9, 2020
↓まずは下のページからソフトをダウンロードします(続く)https://t.co/rne59A9ujv
(続き)インストールは不要。解凍するだけです。— ひゅ~む (@hume55240618) February 9, 2020
さて山写氏は↓のように言っていました。D4Sの発売日は2014年3月6日なので、エベレストとマカルーに登った(登頂ではない)のは2014年以降ということになります。
調べてみましょう(続く) pic.twitter.com/Jv6EqveGrO
(続き)ソフトを起動してSearch→Find Membersと進むと、調べたい山に遠征した「人物」を探せます。— ひゅ~む (@hume55240618) February 9, 2020
後述しますが、「遠征」を調べたい場合は「Find Expeditions」を選択してください(続く) pic.twitter.com/3TmQ1ttik5
(続き)— ひゅ~む (@hume55240618) February 9, 2020
①にマカルーを意味する「MAKA」※
②に「2014」
③に「Japan」
と入力して下の方にある「OK」ボタンを押すと、2014年以降マカルーに遠征した日本人が検索されます。その結果は…
※略称は「Select Peak」で検索できます
(④をチェックすると登頂した人に絞れます)
(続く) pic.twitter.com/94GKw92wYq
(続き)こちらが検索結果。年代順にソートしています。さて山写氏はこの中に…🤔— ひゅ~む (@hume55240618) February 9, 2020
ちなみに①は検索条件です。②にある通り、[S]マークがあると登頂したことを意味します。③のように名前の後ろに記されます。④は遠征の管理番号(?)で、MAKA-***-**の前2桁が西暦の下2桁を意味します。
(続く) pic.twitter.com/oI8k7PVLQV
(続き)名前をダブルクリックすると詳細が表示されます。更に「Show Expedition」をクリックすると遠征のルートやメンバーなども確認できます。— ひゅ~む (@hume55240618) February 9, 2020
(続く) pic.twitter.com/iCVVy6v3FT
(続き)さて、ではカンチェンジュンガはどうでしょうか。山写氏のツイート(↓はその一例)を信じるなら2017年秋に遠征したようです。しかもカンチェンジュンガ主峰ではなく中央峰。これは珍しい。— ひゅ~む (@hume55240618) February 9, 2020
それでは検索してみましょう(続く) pic.twitter.com/ozhN3DhoOp
(続き)今回は「人物」ではなく「遠征」で検索してみます。カンチェンジュンガ中央峰を意味する「KANC」、時期は特定できているので「2017」と入力して検索すると…— ひゅ~む (@hume55240618) February 9, 2020
「そんな遠征ねーよwwww」
と出てしまいました…😢
(続く) pic.twitter.com/zvsIOPU2Ah
(続き)主峰の間違いかもしれないので、「KANG」で検索してみます。結果が2枚目。— ひゅ~む (@hume55240618) February 9, 2020
①にあるように、成功した遠征の場合は②の位置に「+」マークがつきます。すなわち、2017年のカンチェンジュンガ遠征は全て失敗だったことを意味します。
注目して欲しいのは「Season」。秋の遠征がない…(続く) pic.twitter.com/pGO25v3ICj
(続き)ご覧頂いたように、ヒマラヤンデータベースは成功失敗を問わず記録しています。載らないことってあるのでしょうか?トレッキングパーミットでこっそり登るなら理論上は可能かもしれませんが、それはまた別の大問題。— ひゅ~む (@hume55240618) February 9, 2020
なお、山写氏の言うマカルー東稜の遠征も近年の記録は見つかりません…
【補足のFAQ】— ひゅ~む (@hume55240618) February 10, 2020
Q.山写さんはカメラマンやサポートメンバーだったから載らないのでは?
A.載ります。添付はイモトアヤコさんがマナスルに登った時の記録ですが、メンバーにはサミットプッシュしていないカメラマンも含まれています。そもそも、マカルーもカンチェンジュンガも記録そのものがありません pic.twitter.com/6H9aPTcHIx
【ここから本文再開】
これで俄然、この山写なる人の言うことが眉唾っぽく感じられてきました。あらためて見ると、登山実績のほかの経歴も、上に書いたようにキラ星のような実績が並ぶにもかかわらず、それが事実だと信じるに足る具体的な記述がほとんどありません。
なんなんだろな、この人は……。
と思っているうちに、山写さんがセミナーを開催するという情報を得ました。どういう人なのか見てみたいという好奇心で、私はセミナーに応募してみました。まあ、さすがに好奇心だけでは応募はしなかったところですが、セミナーのテーマがちょうど私が知りたかったこと(Lightroomを使った色調調整の方法)だったことと、ちょうど購入を考えていたモニターを使えるということが後押しになりました。
セミナー会場で実際に目にした山写さんの印象をひと言で言うと、「ああ、これはやっぱり登っていないな」というものでした。
8000m峰を3山登り、フリークライミングでも5.12をオンサイトする人といえば、日本のトップクライマーの一角といっていい実力です。国内最高の”猛者の集い”とされるWCM(ウィンタークライマーズミーティング)に参加する資格が十分にあるといえるでしょう。
そのレベルの人たちには一様のある”雰囲気”があります。まず体型。細身で全体にキュッと引き締まった体格をしています。立ち方もシュッとしているというか。筋肉が引き締まっているため、スッと立っているだけで関節が正しい位置におさまっているんでしょうね。そして手がゴツい。日焼けするため肌が浅黒い人が多いのも特徴です。
対して山写さんはごく普通の人でした。トップクライマー特有の雰囲気がまったくないのです。見た目だけでわかるのかと思われるでしょうが、トップクライマーにたくさん会ってきた経験があれば、違和感はすぐ感じ取れます。会って得られる情報というのはものすごく多く、それは言葉にはならなくても、感覚的な確信をもたらすにはとても重要なのです。
とはいえもちろん、それは私の主観でしかないので、これだけで登っていないと公に決めつけることはできません。ただし、自分のなかでの評価としてはもう十分でした。「この人は自分で言っているような登山はしていない」と。
余談ですが、セミナー自体はよいものでした。ひとりに1台パソコンが用意されていて、実際に操作しながら解説を聞けるのでわかりやすく、自分的には得るもののあるセミナーでした。3時間みっちり、山写さんが全部自分で作ったという36ページのテキスト付き(パワーポイントのホチキス止めとかじゃなくて、ちゃんとオールカラー印刷してある冊子)。かなり力の入ったものであったことは付言しておきます。しかも参加費無料!
経歴を詐称していると個人的には確信したので、以降は関わり合いを持たないようにしていました。私が仕事上で付き合いのある会社や個人が山写さんとも付き合っていて、そういうのを横目で見ながら「大丈夫なのかな……」と思いつつも、部外者が口出しをするのも気が引けるので、あくまで横目で見るだけにとどめていました。
そういう期間が1年半ほど続いたのち、今年に入ってから「ちょっとこれはまずいかも」と思い始めました。
ひとつは、山写さんが活動の場を広げ、影響力を強めてきたこと。実体のない経歴を土台にした人が影響力を持つのは、どんな事情があったとしてもいいことではありません。
ふたつ目は、私が新たに連載を始めたYAMAP MAGAZINEで山写さんも連載を始めたこと。山写さんはかなりド派手な詐称をしていたので、バレるのは時間の問題だと思っていました。そんな地雷みたいな人が同じメディアで連載をしていれば、こちらも巻き添えを食うおそれがある。立ち上がったばかりのYAMAP MAGAZINEにとっては、時間を置くほど、嘘が爆発したときの痛手は深くなるだろう。
さらにこれ。
これからエベレストに挑戦しようとしている新進の山岳写真家に、ドヤ顔でエールを送っている。これはちょっと見ていられなかったな。
どういうつもりなのか知らないが、この上田さんという写真家に対してあまりにも失礼でしょう。他人の話題に乗っかって「サミッターのフォトグラファー」と言いたかっただけなんじゃないのか。
上田さんはアマダブラムやマナスルに登っている人。山写さんの怪しさには気付いていたと思うし、その人物から公の場でこうして先輩面でコメントされたときの感情を想像するとやるせないものがあります。
自分には関係ないし……と見過ごしてもいられなくなってきたなと考え始めたころ、山写さんのあるツイートが目に入りました。ネットの掲示板で誹謗中傷されているので訴訟を起こすというのです。検索してみると、5ちゃんねるのカメラカテゴリーにそのスレッドはありました。
中を見てみると、山写さんの経歴がおかしいという議論で燃えさかっていました。ああ、ついに地雷が爆発するときがきたのかな。
掲示板の指摘はかなり具体的なものもあって、訴訟を起こすと言っていたわりには第三者からしても山写さんに分が悪く見えました。そのうち山写さんのツイッターでも弱々しい発言が目立ってきました。しかし、経歴が虚偽なのかどうかについてはのらりくらりと明言を避け、一方で、5ちゃんねるで言われていることも匿名掲示板であるがゆえに決定的な説得力に欠け、白黒はっきりしないまま、議論はなんとなくフェードアウトしていきそうになっていました。
それまでずっとネット上の議論を見物していた私は、ここで我慢できなくなってつい口を出してしまいました。
ツイッター上で尋ねたのは、登山歴は山写さんが公に発表していることなので、その返答は公の場でしてもらう必要があると考えたからです。そして3山を登頂したかどうかについて尋ねたのは、はい/いいえで答えられるシンプルな質問にしたかったから。解釈の余地を残す複雑な質問をすると、あいまいな答で逃げられるからです。
回答はこの場で欲しかったのですが、DM(1対1のクローズドなメッセージ)で来ました。本人曰く、3山いずれも登頂していないということでした。その結果を私が公開したのがこれです。
山写さんに確認が取れました。— 森山憲一 (@kenichimoriyama) February 8, 2020
【エベレスト、マカルー、カンチェンジュンガに登頂はしていない】
たいへんな誤解と被害を生むおそれがあるので、プロフィール等は早急に書き換えていただくようお願いしました。
そしてこちらは山写さん本人のツイート。
DMでは、登頂していないのならどこまで登ったのかとも聞きました。標高で答えてくれましたが、それは所属組織の守秘義務にあたるので公表しないでくれと言われたのでここには書きません。では所属組織の名前を教えてほしいとも聞きましたが、それも言えないとのことでした。
全然納得はできませんが、自称していた登山実績のうち最重要なものが虚偽であったことを証明できただけで十分なので、それ以上は突っ込みませんでした。
ひとつ私の印象を付け加えるならば。
答えてくれた最高到達高度もおそらく事実ではないでしょう。エベレスト、マカルー、カンチェンジュンガには行ってもいないと私は想像しています。仮に行っていたとしても、トレッキングで行ける範囲で山麓からの撮影にとどまっているはず。しかしその写真すら一枚も見たことがないのだから、そもそも行ったことがないと判断するのが常道というものだと思います。
これ以降、山写さんは1日に数十ツイートもしていたツイッターでぱったり口を閉ざしてしまいました。その間に5ちゃんねる上では、山写さんが過去に書いたブログなどが次々に発掘されて、登山実績のほかにも、自称していたさまざまな経歴が8割方虚偽であったことがほぼほぼ証明されてしまいました。
なんだか、かのショーンK事件を見ているようでしたが、ショーンK氏にしろ山写氏にしろ、なぜこんな危うい経歴で表舞台に出ていこうとしたのか、そこはまったくわかりません。
最後に山写さんについて擁護もすると、基本的には能力のある人なんだと思います(他人に対して上から目線な言い方ですが)。セミナーが充実していたことは上に書きましたし、平湯温泉にいたころに乗鞍岳で登山道整備プロジェクトを仕切った実績も事実のようです。
そして私がブログやツイッターを見て驚いていたのは、経験がないはずのことをよくここまでリアルに書けるなということ。大ポカも随所にあったにせよ、先鋭登山やクライミングについてけっこう細かいことを正しく書いていたことも多かったのです。おそらく、想像力に長けた人なんだと思います。ライターや編集者にたまにいるのですが、あまり知らない分野のことでも、いくつか資料を読んだだけで、その世界の核心や微妙なニュアンスを正確につかめる勘のいい人がいるんです。山写さんにもその匂いを感じました。
あとは、たとえそれぞれがトップレベルではなくても、ウェブに強くて、写真が撮れて、登山のことをわかっている。この3つが揃っている人材は登山業界ではとても貴重です。その力は正しく発揮されれば、欲しがる会社はたくさんあるはず。おかしな嘘で台無しにしてしまうのはもったいないとも思っています。
*本論とは離れた部分で個人的な思いをあとがき的に書きました。
経歴詐称記事のあとがき的なもの
2019年2月26日火曜日
統計の読み方には注意しようという話
登山者のデジカメアンケートのまとめです。個人的に、興味深かったのは、登山では一眼レフユーザーが多いんだなぁ・・・、ということでした。https://t.co/BJqszc9z9S— ヤマケイオンライン (@YAMAKEI_ONLINE) 2019年2月25日
このような記事を目にしました。登山者が山でどんなカメラを使っているのかということなどを、山と溪谷社がアンケートで調べたというもの。私は登山も写真撮影もどちらも好きなので、これは興味深い。
内容を見てみると、意外な発見がけっこうあります。
たとえば、山でいちばんよく使われているのはコンパクトデジタルカメラだという(38%)。これは意外。いまや山でもスマホで撮影する人が多いだろうと思っていたのだけど、結果は違うようだ。ちなみにスマホの割合は24%で全体の2位。3位が一眼レフで22%。スマホと一眼の差がほとんどないのもびっくり。
撮影したデータの保管について、ダントツの1位(45%)が「パソコンに保存」というのもわりと驚き。みんな意外と几帳面なんだな。
あとは動画。「撮りたいと思わない」という人が45%もいることも、個人的な体感からすると予想外な結果でした。
がしかし、こういう統計とかアンケートって、結果だけ見てパッと判断するのは危険だと常々思っています。どういうアンケートが行なわれているのか、その背景もよく見て考えないと。
そこで目に付いたのが、アンケートの回答者でした。有効回答者数は3156人。これは十分な数といえるでしょう。
問題は性別と年代。男女比は81:19。男性が圧倒的でした。年代については、76%が50歳以上。つまり、このアンケートに答えた人の8割は50歳以上の男性といえるのです(厳密にはそうはいえないのだけど、まあざっくりと)。
登山者全体のなかで、50歳以上の男性が多いことは確かですが、それにしても8割はないでしょう。女性や50歳以下の男性ももっといるよ。
つまりこのアンケート結果は、50歳以上の男性登山者の実態を表したものとはいえるけれど、登山者全体の実態からするとそれなりにズレがあるんじゃないかと。私が「意外な発見」と感じたのは、そのズレのせいじゃないかと思ったのですが、どうなんでしょうかね!?
2019年1月30日水曜日
クライミングコンペ撮影の勘所
クライミング写真というのは、いい位置にポジション取りできるかどうかが、写真技術よりずっとクオリティを左右するもの。で、そのポジション取り自体も”技術”なのであります。— 森山憲一 (@kenichimoriyama) 2019年1月29日
昔、飯山健治というクライミングカメラマンが言っていたのだけど、飯山さんは下からルートを見ただけで、どこが核心か、そこのムーブはどうなるか、ベストの瞬間にクライマーの顔はどちらを向くかを瞬時に読み取り、そちら側に位置取りをするそうです。— 森山憲一 (@kenichimoriyama) 2019年1月29日
で、飯山さんはベストポジションにロープを張ってぶら下がるまでの作業スピードもすごく速かった。ポジションの読みとセッティングスピードの速さ。これはだれにでもできることではなくて、やはり技術なのです。— 森山憲一 (@kenichimoriyama) 2019年1月29日
日曜日にボルダリングジャパンカップを撮影しに行ったのだけど、報道各社のカメラマンの数がすごく増えていることに加えて、彼らもクライミング撮影に慣れてきて、いいポジションはすぐ取られてしまうようになったので、年々撮影がやりにくくなってきた。— 森山憲一 (@kenichimoriyama) 2019年1月29日
1、2年前までは、課題を見ていち早くベストポジションを取ることができたし、へんな場所に陣取っている報道カメラマンを見て「わかってないね、チミたち」と優越感に浸れたのだけど、もういまや無理。これからは人のねらわない独自の視点を見つけないと。— 森山憲一 (@kenichimoriyama) 2019年1月29日
クライミングコンペ撮影でいちばん重要なのは、ゴールホールドをどちらの手で取る設定になっているかを読み取ること。それによって、完登時のガッツポーズがどちらを向くかが決まるので。このへんのことも報道カメラマンにバレてきてしまっているので、もう黙ってる必要もなくなりましたw— 森山憲一 (@kenichimoriyama) 2019年1月29日
ふと思いついて、ツイートの転載という手抜きエントリーやってみました。すみません。
2018年8月1日水曜日
登山用カメラ(E-M1)のフード改造
7月26日~28日に剱岳に行っていました。登ったのは、剱沢~長次郎谷~八ツ峰Ⅵ峰Cフェース剣稜会ルート~八ツ峰~北方稜線~剱岳本峰~剱沢というラウンドコース。疲れた~。
ここのところ、山に行くときはもっぱらオリンパスのE-M1というカメラを使っています。ミラーレスカメラというやつですが、一眼レフに比べて小さく軽く、そのくせ防塵防滴性能はニコン並みに強力といわれ、山カメラとしてはかなりいい感じです。剱もこれで行きました。
メインで使っているキヤノンEOS6Dに比べると、画質面ではやはり劣りますが、重さが半分近くになるのだから文句はいえません。それに劣るといっても、スマホやコンデジよりははるかによく、印刷用途にも使えます。実際、このカメラを現場で使っているプロカメラマンもいます。
合わせるレンズはこれ一択。
ちょっと重く、高いレンズですが、写りがめちゃくちゃによく、もう手放せません。すばらしいレンズです。
が、問題がひとつ。フードの出来がよくないのです。外れやすいとか壊れやすいとか、とかく評判がよくありません。Amazonのレビューも散々です。
個人的にはもっと大きな問題を感じていて、それは、フードが浅すぎること。山で持ち歩いていると、レンズ面を岩とかにヒットさせてしまいそうで安心できない。
私は山でカメラを持ち歩くとき、下の写真のようにたすき掛けにしているのですが、傾斜の強い岩場などを登っていると、けっこう岩にカメラが当たるんですよね。以前、それでレンズ面にキズをつけてしまったこともありました。
なんとかしたいなと思っていたところ、よさそうなものを見つけました。
同じオリンパスの別のレンズ用のフード。レンズ口径が同じなので、自分のレンズにも使えるだろうと買ってみたら、見事ジャストフィット。十分に深くてレンズの保護力も問題なさそうだし、固定方法も改良されていて、これならば外れやすいとかの問題もほぼ起こらなさそう。
こうして見ると深さの違いは歴然。
が、問題はあります。このフードは17mmレンズ用なので、広角端12mmのマイズームレンズに付けると、四隅がケラレるのです。ノー加工でも使えるかな~と淡い期待で買ってみましたが、やっぱりダメでした。
で、少々手を加えました。
画角に干渉する部分をこうやってルーターで削ります。けっこう硬質なプラスチックで、非力なミニルーターだと時間がかかりましたが、ケラレ具合を確認しながら、しこしこ削りました。
ケラレがなくなったところで削りをストップ。これくらいになりました。けっこうギリで止めているので、もう少し削ったほうが安心かもしれませんが、まあ大丈夫でしょう(今のところ問題なし)。
ちょっと手間はかかりましたが、今のところ使用感・安心感ともに申し分なく、使い勝手は大きく向上しました。
剱岳もこのフード装着で行ったのですが、岩にぶつけまくってフードはこのとおり。
旧フードだったら、レンズ面にもキズがつくこともあったかもしれませんが、今回はもちろん無傷。荒っぽく使っても気にならない道具はやはりいいですね。ひと手間かかりますが、12-40mmズーム使っている方にはオススメです。
2017年8月17日木曜日
TJAR写真集外伝・高橋香と岩崎勉の熱走
先日発売された写真集『TJAR』の巻末に、トランスジャパンアルプスレース(TJAR)とはなんたるかという文章を書きました。
その最後のほうに、こんなことを書いています。
だれもがレースの主役であり、その証として、ゴールを果たしたときに、優勝者よりも周囲の感動を呼ぶ人も少なくない。
これだけ読むとなんだかきれいごとのようにも聞こえますが、ここを書いたときには、あるふたりの人物を頭に浮かべていました。
ひとりは、2006年の第3回大会で完走を果たした高橋香さん。もうひとりは、2016年の第8回大会で完走した岩崎勉さんです。
伝説のラストラン、高橋香
高橋さんは、2004年の第2回大会に初出場して、無念のリタイヤ。8日目の21時32分、制限時間まであと2時間半のところで心が折れ、井川でレース続行を断念しています。
どうしても完走を果たしたい高橋さんは、2年後の第3回大会にもエントリー。この大会は、出走者6人のうち4人が早々に脱落する波乱の大会になりました。高橋さんも前回よりは速いペースで進んだものの、南アルプスを越えて井川に下りてきたときには、すでに最終日8日目の朝8時。それまでのペースを考えると、制限時間内の完走は微妙という時間でした。
しかしここから高橋さんは、周囲が驚く激走を見せます。このとき、選手に密着していたカメラマンの柏倉陽介や運営の方から届く報告に、私は心動かされました。
「高橋さん、井川に現われました。今日中のゴールは難しいかも…」
「高橋さん、すごい勢いで走ってます!」
「コンビニで買い物中。元気そうです!」
「現在××地点。これ、もしかしたらいけるかも!!」
「19時25分、大浜海岸に着きました!!!」
このときの優勝者は、同じ日の10時48分にゴールした間瀬ちがやさん。これは現在のところ唯一の女性優勝という貴重な記録なのですが、私は高橋さんがゴールしたときのほうが感激しました。間瀬さんには申し訳ないのですが、それだけ、最後の高橋さんの走りは鬼気せまるというか、どうしても完走したいという執念を感じさせるものだったのです。まさに熱走。
今回、写真集の文章を書くために過去の記録を見返していて、高橋さんがこのラストランをどれだけがんばっていたのかという裏付けを発見しました。井川から大浜海岸まで、高橋さんの所要時間は約11時間。現在とはチェックポイントの位置が違うので正確な比較はできませんが、これは、昨年、4日23時間52分という驚異の新記録で優勝した望月将悟さんの区間タイムとあまり変わらないのです!
ふだんの高橋さんはもの静かで、情熱を内に秘めるタイプでした。その高橋さんが見せた完走への執念。そこに私は感動したのです。
ところが、翌年、高橋さんは奥多摩で行なわれていたレース中に、心臓発作で帰らぬ人となってしまいました。この知らせには本当に驚いたし、今でも残念でなりません。
ご両親・ご家族は、高橋さんが情熱を傾けたTJARを知りたい、なにか力になりたいという思いから、その後、レースの手伝いなどをされていました。このことにも、私は胸が熱くなるものがありました。
10年越しの完走、岩崎勉
もうひとりは岩崎勉さん。
岩崎さんは2006年の第3回大会に出場している、TJARの歴史のなかでもかなり初期メンバーのひとりです。これまで4回出場をしていますが、なかなか完走を果たすことができていませんでした。
2006 菅ノ台でタイムオーバー
2008 不参加
2010 選考会で出場資格を得られず
2012 タイムオーバーとなったが走り続け、8日23時間23分でゴール
2014 西鎌尾根で、救援者支援のためレース離脱
高橋香さんが激走を見せた2006年は、中央アルプスを越えたところでタイムオーバー。2012年は、8日間という制限時間を超えても、自身のチャレンジとして走り続けて太平洋に到達。このときすでにレースは終了しており、深夜でもあることから、海岸にはだれもいないだろうと予想していたけれど、多くの人が待っていてくれて感激したといいます。
台風の直撃を受けた2014年は、運営からの要請を受けて、自らレースを離脱。大荒れの北アルプス稜線上で、救援者の支援にまわりました。この直前には、コース上でうずくまっている選手を見つけ、安全を確認したので先に進んだものの、どうしても気になり、戻ったりもしています。本当にいい人なのです。
2016年大会の最終日、ネットでレースの動向をチェックしていた私は、その岩崎さんが、時間内にゴールできそうなところを進んでいることを知ります。がんばれ!! 思わず画面越しに応援の声をかけそうになりました。
そして17時48分。
どうですか、この最高の表情。私はこれを見たとき、涙が出そうになりました。TJARのゴールシーンというのは、だれもが最高の顔をしているのですが、わたし的には、この岩崎さんの顔がTJAR史上ベストです。
で、そう感じたのは私だけではなかったようです。
ここに私が大好きな一枚がありまして、残念ながら写真集には使えなかったのですが、ぜひ見てもらいたいので掲載しておきます。
さらに。
ただいま、北~中央~南アルプスのコース上にある山小屋全39軒に、写真集を背負って届けるというプロジェクトも敢行中です。1冊1.7kgあるので、「これ、手持ちで全部届けるのは無理だろ!?」と言っていたのですが、TJAR出走経験者が12人も協力してくれることになりました。これ以上ない強力な飛脚の登場により、今シーズン中に全冊配布を終えられそうです。一部の小屋にはすでに置かれています。ここも貴重な立ち読み可能な場所ですので、登山で寄った際にはぜひ見てみてください。
写真集「TJAR」 | tjar photo book on the BASE
TJAR Photo Book Facebookページ
2017年7月25日火曜日
TJAR Photo Bookできました
じつはこの間、栗城史多さん本人にも会いました。あるメディアが興味をもってくれて、取材をしようとしたのですが、記事化は断られ、「会うだけなら」ということで、本当に会うだけ会って、1時間半ほど話をしてきました。
感想としては、前回・前々回のブログはとくに修正の必要はないな、ということ。そして、取材として受けてもらえない以上、これ以上こちらにはできることはないので、この件は自分的には終了というか、一段落という感じです。
で、まるで別件。
この間、すごい本の制作にかかわっておりました。15000円の写真集です。トランスジャパンアルプスレースという、世界一過酷な山岳レースを4人のカメラマンが追ったものです。箱入りハードカバー/布張り金箔押し/オールカラー160ページという、出版社勤務時代にもやったことのない超豪華な製本。私は巻末の文章執筆を担当しました。
2002年に始まったこのレース、当時から興味を持っていて、自分自身、取材をしたり、関係者に会ったりしたことも何度もあります。レースにかかわっている人たちがとにかく純粋で、レース云々もさることながら、その人間的魅力に惹かれました。おっと、ここを書き出すと10000字くらい止まらないので、そのへんの詳しいことはまた別の機会に。
写真集の発売は8月11日(山の日)。
発売に合わせて、出版イベントをやります。収録写真のパネル展示やスライドショー、トークタイムなどもやりますので、興味のある方はぜひお越しください。
日時:8月11日(金・祝・山の日) 10時~16時
会場:ビクトリノックスジャパン株式会社 1Fショールーム
東京都港区西麻布3-18-5
10:00 オープン
10:30 カメラマンあいさつ&トークショー
12:00 スライドショー
13:30 TJARについてQ&A(岩瀬幹生・飯島浩ほか予定)
15:00 選手・主催者トークショー
16:00 閉会
*10時開場〜15時入場終了/16時閉会
2016年10月22日土曜日
山岳写真のウソ
コースは、ロープウェー〜八海山〜阿寺山というもの。八海山はさすがに人気の山だけあって、平日だというのにけっこうな数の登山者が来ていました。ただ、私をのぞいてほぼ全員がロープウェーからの往復だったようで、阿寺山方面はひとりの登山者にも会わず。こちらは登山道も荒れ気味で、静かなもんでした。
個人的お目当てのひとつだったのが、八海山の紅葉。昔、この隣の中ノ岳で人生最高の紅葉を見たことがあるので、このへんの紅葉の美しさには期待していたのです。
……というのはウソで、実際はこんな感じでした。
最初の写真は「風景モード」という、彩度とコントラストを上げた設定にしているので、ビビッドで派手な発色になっています。実際の見た目に近いのは2枚目の写真のほうです。
山の風景ってのは、こういうふうに彩度とコントラストを上げると簡単に見栄えのいい写真になるのです。やり方は簡単。カメラの設定を「風景」とか「ビビッド」とかにしておくだけ。インスタグラムアプリとかは、イイ感じのプリセットがいっぱいあって撮影後に選べるようになっていますが、要はこういうことをやっているわけです。
こういう色調整というのは、プロのカメラマンも多かれ少なかれみんなやっています。紅葉の取材に行って「紅葉イマイチだったな」というときでも、カメラマンから写真をもらったら素晴らしい紅葉が写っていた、なんて経験も一度や二度ではありません。もはやデジタルはなんでもできるのです。
で、デジタルだけではありません。フィルム時代、山の撮影ではフジの「ベルビア」というフィルムが圧倒的な人気を誇っていました。風景写真家や山岳写真家の8割から9割はベルビアを使用していたと記憶しています。このベルビアというフィルムはどぎつい発色が特徴で、それこそ冒頭の八海山の写真のような色が出ました。空は完璧に青く、樹々はすばらしく緑で、紅葉を撮れば、どうってことのない紅葉が錦の海になったものです。
さて、紅葉についての山岳写真のウソ、もうひとつあります。それは、紅葉がパッとしないとき、「紅葉がきれいな木をひとつだけ見つけ、それを手前に配置する」というものです。
具体的な例で説明しましょう。
これは2014年の9月末に裏剱の仙人池という、紅葉撮影の名所で撮ったものです。山旅ツアーのチラシに使えそうな素晴らしい紅葉だと思いませんか。
しかし、この写真を撮った場所から3m左に移動して撮ったものがこちら。
俄然、冴えない風景になってしまいました。しかし、当日の現場の印象としてはこちらのほうが実を表しています。
もうひとつ、こういうのもあります。
これは2013年の9月20日ごろに剱沢で撮ったものですが、これだけ見ると、周囲一帯が紅葉に包まれているように思えます。
しかしここからぐーっと引いて周囲一帯を写すとこんな具合でした。
「コレ」と記したのが、1枚目に写っているオレンジに紅葉した木。豆粒のごとくで、他はまだ青々としており、紅葉というにはまだ早すぎる感じであることがわかると思います。
雑誌に載っているような紅葉の山岳写真は、上に書いた2点のどちらか、あるいは両方をやっているものがほとんどといっても過言ではありません。逆に言えば、これらをやるだけで、あなたの紅葉写真のインパクトは倍増するはずであります。さらに言えば、インスタグラムやフェイスブックのタイムラインに流れてくる写真に「お! すごい!」と早合点して出かけたところ、大したことなかったという悲喜劇を防ぐためにも。。。
2016年5月17日火曜日
"The 9th Grade"
先月行ったシャモニで買ってきた本。フリークライミングの150年にわたる歴史を、人物中心、写真中心に解き明かしていくというもの。あまりにもすばらしい本です。
昨年フランスで出版され、書店ではフランス語版と英語版両方売ってました。買ってきたのはもちろん英語版。フランス語は読めないからね。もうあまりのすばらしさに値段見ないで買ってしまったのでいくらだったか覚えておりませんが、50ユーロくらい(6000円くらい)だったかな。
著者は、ダビド・シャンブルというフランス人クライマー。版元はles editions du MONT-BLANCというところで、ディレクターという肩書きでカトリーヌ・デスティベルの名前も入っています。
とにかくすばらしい本です。英語が読めなくても、眺めているだけでお腹いっぱいになれる充実写真の連発。とはいえ、文章も読みたいので、有志の方、手分けして訳しませんか。
まあ、とにかく見ていただきたい。
【2020.3.25追記】
2018年に改訂版が出ているようです。初版より8ページ多いみたいなので、初版出版後の最新事情が追加されているのかもしれません。
2016年5月3日火曜日
オールドレンズの味わい
おもちゃを買ってしまいました。昔のペンタックススクリューマウントのレンズを、最新のキヤノンEOSに装着できるアダプターです。
アダプターといってもこんな簡単なもの。オートフォーカスも自動絞りも動きません。操作はオールマニュアルです。
Amazonでたまたま見つけて安かったので即買い。おそらく中国製のクオリティもへったくれもないものですが、機能的にはこれで充分なのです。
ペンタスクリューマウントレンズは3本持っています。左から35mm/f3.5、55mm/f1.8、135mm/f3.5。おそらく50年以上前のもので、中学生のときにじいちゃんの形見をもらったものです。何十年か死蔵していましたが、活躍のときがやってきました。
実写
50年前のレンズなんてボロボロの写りだろうと予想していましたが、想像以上に健闘しました。さすがに開放はアマアマですが、5.6くらいまで絞るとかなりしゃっきり写るのにびっくり。














































