2019年11月3日日曜日

オリンピックのスポーツクライミングに大問題勃発

クライミング協会、代表選考巡りCASに提訴(写真=共同)


東京オリンピックのスポーツクライミング競技が大混乱に陥っています。


オリンピック代表選手の決定方法をめぐって、日本の協会(JMSCA/日本山岳・スポーツクライミング協会)と、国際スポーツクライミング連盟(IFSC)が食い違いを起こし、スポーツ仲裁裁判所という機関での法廷闘争に発展しようとしているのです。


現在、オリンピック代表入りを目指してがんばっている選手が何人もいますが、この騒動の行方次第では代表への道が絶たれてしまう選手もいるのだから、これは大きな問題です。


東京オリンピックの代表決定方法はけっこう複雑で、私も正確に把握しないまま、これまでJMSCAの発表を鵜呑みにしてきました。が、この機会にちょっと整理してみました。


まずは原典にあたる必要があります。以下は、IFSCが定めた、オリンピック選手選考システムの規約です。ここに書いてあることを前提にしながら、話を進めていこうと思います。


QUALIFICATION SYSTEM – GAMES OF THE XXXII OLYMPIAD – TOKYO 2020

第32回オリンピック競技大会(2020/東京)選手選考システム(上記の和訳)





東京オリンピックには何人出られるのか

・男女各20人が出場可能
・20人のうち1人は開催国枠
・20人のうち1人は三者委員会招待枠
・ひとつの国から最大2人(男女合わせて最大4人)出場できる


選手数規定の要点は上記のようなところです。


日本は開催国枠として男1人+女1人は出場できることがすでに確定しておりますが、これは各国ごとの上限人数に含まれるので、日本だけ5人以上出場できるということにはなりません。他国と同様、最大で男2人+女2人までです。



「三者委員会招待」というのは詳細が書かれていないのでわかりません。選考に漏れた選手のなかから、最終的にIFSC権限で出場させたい人を1人選ぶということなのかな?




どうやって出場選手を選ぶのか

選手は以下の大会のどれかに出場することが条件になっています。


1)世界選手権(2019年8月/すでに終了)

2)オリンピック予選大会(2019年11月28日~12月1日/フランス・トゥールーズ)

3)大陸別選手権(アフリカ・アジア・ヨーロッパ・パンアメリカン・オセアニアの計5エリアで、2020年2~5月に開催される)


各段階において、以下のように選考方法が定められています(男女とも同じ)。


1)世界選手権……上位7人までに入るとオリンピック出場権を得られる。

2)オリンピック予選大会……世界選手権でオリンピック出場権を得た選手をのぞいたワールドカップランキング上位20人がこの予選大会に出場できる。ここで上位6人に入るとオリンピック出場権を得られる。

3)大陸別選手権……優勝者がオリンピック出場権を得られる。優勝者が1か2ですでに出場権を得ている選手だった場合は、次点選手を繰り上げ。


7+6+5(大陸別選手権優勝者は5人いるので)=計18人
これに開催国枠1人と三者委員会招待枠1人を加えて、計20人が、オリンピック出場選手となります。


注意点としては、各国ごとの上限人数。たとえば世界選手権で7位以内に入っても、同じ国の選手が上位に2人いたらオリンピック出場権は得られません。実際、世界選手権で日本は男子・女子ともにそういう状況になりました。




JMSCAとIFSCの言い分

8月の世界選手権の結果は以下のとおりです。


男子名前
1位楢﨑智亜日本
2位ヤコブ・シューベルトオーストリア
3位リシャット・カイブリンカザフスタン
4位原田 海日本
5位楢﨑明智日本
6位藤井 快日本
7位ミカエル・マエムフランス
8位アレクサンダー・メゴスドイツ
9位ルドビコ・フォッサリイタリア
10位ショーン・マッコールカナダ

女子名前
1位ヤーニャ・ガンブレットスロベニア
2位野口啓代日本
3位ショウナ・コクシーイギリス
4位アレクサンドラ・ミロスラフポーランド
5位野中生萌日本
6位森 秋彩日本
7位伊藤ふたば日本
8位ペトラ・クリングラースイス
9位ブルック・ラブトゥアメリカ
10位ジェシカ・ピルツオーストリア


・上位7人まで
・ただし1国につき2人まで
という規約を文面どおりに当てはめると、この世界選手権でオリンピック出場権を得た選手は以下のようになります。


男子名前出場権
1位楢﨑智亜日本
2位ヤコブ・シューベルトオーストリア
3位リシャット・カイブリンカザフスタン
4位原田 海日本
5位楢﨑明智日本
6位藤井 快日本
7位ミカエル・マエムフランス
8位アレクサンダー・メゴスドイツ
9位ルドビコ・フォッサリイタリア
10位ショーン・マッコールカナダ


女子名前出場権
1位ヤーニャ・ガンブレットスロベニア
2位野口啓代日本
3位ショウナ・コクシーイギリス
4位アレクサンドラ・ミロスラフポーランド
5位野中生萌日本
6位森 秋彩日本
7位伊藤ふたば日本
8位ペトラ・クリングラースイス
9位ブルック・ラブトゥアメリカ
10位ジェシカ・ピルツオーストリア


これが、現在、IFSCが主張している結果です。日本人は男女ともにすでに上限の2人が埋まったので、これで最終決定といいます(JMSCAによれば「新解釈」と呼ばれるもの)。


それに対してJMSCAが主張しているのは、日本人で出場権を得たのは、男子は楢﨑智亜、女子は野口啓代のみで、他はまだ未定だとするもの。


これだけ聞くと、IFSCの言うことのほうに理があるように思えます。


ただし、JMSCAが主張する決定方法は、すでに今年5月に発表されており、それはIFSCも理解していたはず。JMSCAの方法は本来の規約の拡大解釈と読める部分もあるのですが、JMSCAによれば、IFSCと何度も協議を重ねて問題がないことを確認したうえで作成したものといいます。


このJMSCAの決定方法をIFSCが認めていた証拠もあります。




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これは、男子10位のショーン・マッコールと、女子10位のジェシカ・ピルツが、世界選手権直後に更新したインスタグラム。「オリンピック決まったよ」と報告しています。


IFSCが主張するとおりなら、このふたりはオリンピックの出場権は獲得できていないはず。


つまり、少なくとも世界選手権直後の段階では、原田海と野中生萌の出場権は決定しておらず、JMSCAの主張のとおりに物事は進んでいたのです。




ねじれはどこにあるのか


いったいなぜこんなことになっているのか。


関係者に事情を聞いたわけではないので、ここから先は推論になりますが、問題の核心は「事前協議」の内容にあるのではないでしょうか。


JMSCAは、代表決定方法についてIFSCと協議を重ねて作成したと言っておりますが、そこでどんな話を、だれと、どのような形で行なったのか。そこに今回の問題のカギがあるように思えます。


ひとつ考えられるのは、口頭でのやりとりしかしていなかったのではないかということ。書面等で明確に残していなかったため、IFSCの態度にブレが生じてしまっているのではないか。あるいは、JMSCA側になんらかの誤解などがあった可能性もあります。


【2019/11/3追記】
上記の可能性はほぼないということが判明しました。


ともあれ、こうなった以上、行く末は、スポーツ仲裁裁判所の調停を見守るしかなさそうです。






それにしても、IFSCも、原田・野中が代表決定とあくまで主張するなら、ぬか喜びさせてしまったショーン・マッコールとジェシカ・ピルツへの対応はどうするんでしょうね。ふたりはすでに来年のオリンピックに照準を合わせていて、今月末のオリンピック予選大会の準備などしていないでしょうし。


今後の大会で結果を出してオリンピックに出たいとがんばっていた日本の他の選手も本当に気の毒です。じつはつい数日前、その対象選手のひとりにインタビューしたばかりで、オリンピックへの抱負をいろいろ聞いたところでした。その人がいま何を感じているかと考えると、私自身も気が重いです。


記者会見でJMSCAは「大人の事情で混乱させられ、出られるか出られないかわからない状況になった。選手には申し訳ない」とコメントしたそうです。個人的にこの言葉には、JMSCAの誠意を感じました。選手の情熱が空振りで終わることがないように、解決に全力を尽くしてほしいと願うばかりです。




2019年8月17日土曜日

わかりやすい文章にするためのたった3つの簡単なコツ

あおりタイトルです笑


知り合いとツイッターで法律文のわかりにくさについてやりとりをしていたところ、思いついたことがあったので書いておきます。わかりにくい文章とその改善策についてです。


私が以前勤めていたころの『山と溪谷』編集部では、プロライターはあまり起用せず(起用したくとも登山のプロライターがほとんどいなかった)、登山家や山小屋の人、カメラマンなどに原稿を書いてもらうことがほとんどでした。彼ら彼女らは文章の専門家ではないので、文章にはそれなりに難があります。そこを編集者が手を入れて読みやすく整えるということをしていました。


そんなことを毎月、何年もやっていると、ある一定の傾向が見えてくるもの。文章を書き慣れていない人がやってしまいがちな問題点。


いろいろありますが、もっとも単純かつもっとも頻度が高いものを挙げるとすると、以下の3つになります。


・文章が長い
・語順がおかしい
・接続詞が多い


以下解説します。





文章が長い


”秋の唐松岳はダケカンバやナナカマドの紅葉だけでなく、頚城山塊から南アルプスまで広がる雲海や劔・立山連峰の上空を染めて日本海に沈む太陽、街灯りと満天の星空など秋ならではの素晴らしい光景が期待できる。”


これは実際に私が受け取った生原稿の一文です。途中で「ん?」と思って前に戻って読み返したりしませんでしたか。問題はいくつもあるのだけど、まずは一文が長すぎるのです。


この文章の構造はこのようになっています。


秋の唐松岳は
・ダケカンバやナナカマドの紅葉(だけでなく)
・頚城山塊から南アルプスまで広がる雲海(や)
・劔・立山連峰の上空を染めて日本海に沈む太陽
・街灯りと満天の星空
など秋ならではの素晴らしい光景が
期待できる。


秋の唐松岳には紅葉のほかにも3つの魅力があると言っているわけですね。しかし、「秋の唐松岳は」と始まった文章が結論を言うまでに、4つの要素を入れてしまっているので、読み手はなんの話だったのか途中でわからなくなってしまうのです。


この場合のいちばん簡単な修正法は、文章を短く切ることです。


たとえばこんなふうに。


”秋の唐松岳の魅力は、ダケカンバやナナカマドの紅葉だけにあるわけではない。頚城山塊から南アルプスまで広がる雲海、劔・立山連峰の上空を染めて日本海に沈む太陽、街灯りと満天の星空など、秋ならではの素晴らしい光景も期待できる。”


だいぶ読みやすくなったんじゃないでしょうか。もともとの文章が言葉足らずなので、(の魅力)とか(にあるわけ)などの補足が必要で、後半では、助詞「や」や読点「、」を数カ所調整もしていますが、読みやすくなったもっとも大きな理由は、文章をふたつに分けたことにあります。


一般的に、わかりやすい文章を書くには一文を50字以内にとどめたほうがよいといわれます。これは経験的にもそんな感じかなと思います。作家を目指しているとかでもないかぎり、文章は50字といわず短いほどよいです。長い一文を誤解なく読ませるには技術が必要だからです。


試しに、私がここまで書いてきた一文の平均文字数を数えてみたら、約37字でした。20字台がもっとも多くて9文、次に30字台の6文。それに対して、例に出した原稿の一文は98字。この長さをスルッと読ませるにはそれなりに工夫が必要です。


【まとめ】
ひとつの文章はできるだけ短く!(50字以内が目安)





語順がおかしい


”富士ノ折立からは、剱岳が残雪をいただいた内蔵助カールの後方に顔を出す。”


これはおかしいところたぶんすぐわかると思います。


"富士ノ折立からは、残雪をいただいた内蔵助カールの後方に剱岳が顔を出す。”


こうすればよいわけですよね。簡単な修正ですが、こういうの非常に多いです。


なぜこうなってしまうかというと、書き手の頭のなかには剱岳がもっとも印象的な光景として残っているからです。なので、真っ先に「剱岳が!」と言いたくなってしまう。まずそれを言って落ち着いてから、補足的な状況描写を書くと、上の文のようになってしまうというわけです。


この文章はこういう構造になっています。


(富士ノ折立からは)
・剱岳が
・残雪をいただいた内蔵助カールの後方に
顔を出す


「剱岳が」も「残雪をいただいた内蔵助カールの後方に」も、どちらも「顔を出す」につながります。


こういう場合は、「短い言葉ほど近くに置く」という原則を守るだけで、俄然誤解が少なくなります。「剱岳が」のほうが「残雪をいただいた内蔵助カールの後方に」より文字数が少なく短い。そういう言葉ほど、つなげたい言葉の近くに置く。これ、とても単純な原則ですが効果絶大です。


一方、上の文章がこういう構造だったらどうでしょう。


(富士ノ折立からは)
・残雪をいただいた剱岳が
・内蔵助カールの後方に
顔を出す


もともとの文章では「残雪をいただい」ているのは内蔵助カールですが、今度は剱岳が「残雪をいただい」ている状況を書きたい場合。


1)富士ノ折立からは、残雪をいただいた剱岳が内蔵助カールの後方に顔を出す。

2)富士ノ折立からは、内蔵助カールの後方に残雪をいただいた剱岳が顔を出す。


この場合は1のもともとの語順のほうが明らかに誤解が少ないですよね。誤解が少なくなる理由はいくつかあるのですが、「短い言葉ほど近くに置」いていることはそのひとつであります(短いといってもこの場合はわずか1字ですが。それでも重要です)。


このあたりのことは、本多勝一氏の『日本語の作文技術』という本に非常に詳しくかつわかりやすく載っています。私は学生時代にこの本を読んで、とても影響を受けました。このこと以外にも、わかりやすい文章を書くためのコツが満載なので、激おすすめしておきます。






【まとめ】
長い言葉ほど遠くに、短い言葉ほど近くに置く!





接続詞が多い


「そして」とか「しかし」とか「ところで」とか「だから」とか「したがって」とか「ところが」とか「それから」とか「あるいは」とか「また」とか「なぜなら」とか「すなわち」とか。


接続詞って息つぎみたいなもので、なんとなく使われているケースが多いのです。よくよく考えるとそこに意味はないんだけど、「なんとなく」使うと、「なんとなく」文章がまとまったような気がして、つい使ってしまうんですよね。


これはたくさん使ったからといって文章がわかりにくくなるというわけでは必ずしもないのですが、文章がギクシャクして読みづらくはなります。


とくに個人的に注目しているのは「また」。「これは○○である。また、あれは××である」などと使われるアレです。好きな人はほんとによく使うけれど、これは意味のない接続詞の筆頭格で、経験的に9割の「また」は不要です。「また」を外すことで前後の「てにをは」を整える必要がある場合もありますが、そのまま外してしまっても問題がないことも多いです。そして、「また」を外したほうが、往々にして文章のリズムはよくなります。


たとえばこういう文章。


”花崗岩と砂礫の斜面は、雨後や霜が付いている時は滑りやすいので特に注意が必要だ。また下山時も同様である。”


この原稿を私はどうリライトしたのかなと思って、誌面を見てみたら、こうなっていました。


”花崗岩と砂礫の斜面は、雨後や霜が付いているときは滑りやすいので特に注意が必要だ。下山時も同様である。”


後者のほうがすんなり読めませんか(そうでなかったらすみません)。そもそも前者の「また」は、ほとんど機能してないよね。


「また」には、文章のリズムを悪くするほかに、文章を堅苦しくするという効能もあります。ここで「又」なんて漢字を使えばダブルでその効果が期待できます。クレームや抗議文などで相手を脅かしたいときには多用するといいのかもしれませんが、日常文章では使わないのが吉です。


もちろん、接続詞には使わないとならないものもあります。「しかし」とか逆説の接続詞なんかはその代表格。そのほかにも、文章のリズムを整えるためだけに使いたくなることもあります。私自身が、リズム整えのための接続詞を多用してしまうほうです。


ただし一般的には、接続詞はできるだけ使わないようにしたほうが文章は読みやすく、すっきりするはずです。「できるだけ使わないぞ」と意識すると、使いたくなったときに、文章の意味を通すために別の表現を考えざるを得なくなります。たいていの場合は、ちょっと考えると別の表現が見つかるんですよ。これは文章トレーニングにすごく効果的だと思います。実際、私は他人の文章をリライトすることでこれを毎月繰り返しているうちに、表現の引き出しがすごく増えました。だからおすすめなのです。


接続詞を使わないですむ表現がどう考えても見つからない場合。このときこそが、接続詞を使うべきときなのであります。こういう、ここぞというときに放つ乾坤一擲の接続詞は、逆にすごい切れ味を持ちますので。


【まとめ】
「また」は使用禁止!





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ところでツイッターにも書いたのですが、「一文が長い」ということでこれまでもっとも印象に残っている文章があります。「号泣議員」として有名になった野々村竜太郎氏のブログなのですが、その長さはまさに超弩級。すごいです、どうぞ。


”特に本日、裁判を受ける義務を果たすために、テレビ局やラジオ局、新聞社、通信社、週刊誌や漫画・アニメ等出版社、インターネット新聞・テレビやブログ・ツイッター・フェイスブック等、フリージャーナリスト等全てのマスコミ、報道機関等に関係される皆様が第一回公判では300人以上も押し掛け、自宅や家族宅の生活圏に近付かないのは勿論、何人たりとも皆様と出会わず撮影されず取材強要されず無事に出廷し帰宅するためにも、是非とも何人たりとも皆様が押し掛け出廷や帰宅の妨げをされませんように、テレビ局やラジオ局、新聞社、通信社、週刊誌や漫画・アニメ等出版社、インターネット新聞・テレビやブログ・ツイッター・フェイスブック等、フリージャーナリスト等全てのマスコミ、報道機関等に関係される皆様に対しまして、コメントや会見は一切致しませんし、建造物侵入等自宅や家族宅の訪問やインターホンを鳴らしたりカメラを操作・名刺や手紙等を投函・待ち伏せ、付きまとい、張り込みや監視する行為等、制作者・著作者・著作権者でございます私のブログや写真、映像、YouTube、Facebook等を無断無許可で転載や引用、紹介等する行為、私や家族を記事や放送等で名誉毀損・信用毀損・侮辱・誹謗中傷等全ての人権侵害や「誤報」・迷惑行為・加害行為、公益・知る権利・報道の自由・公平で公正な「事実や真実」を伝える報道のためでもなく憲法第14条の精神も知らず、主に誹謗中傷や名誉毀損等人権侵害を行うことで出廷前に私や家族を社会的に抹殺することで視聴率・購読数・閲覧数・スポンサー便宜等営利目的や自分達の仕事・報酬のために、資本力や同じ人間の所業ではない常軌を逸した異常な組織的人海戦術に物を言わせることで公平で公正な「事実や真実」を隠蔽したりグレン・ホワイトの実験、ディパヤン・ビスワスやルビー・ドラキアの報告結果等の応用を悪用した編集や情報操作等、事件と無関係の事柄や、裏付け・検証の行われていない公平で公正な「事実や真実」と異なる報道、私を無断無許可で撮影する全ての行為やその撮影された写真や映像を記事や放送で使用する全ての行為、3時間以上にも及ぶ私の会見映像や無断無許可撮影した映像等を私や家族を社会的に抹殺するためにご都合主義に基づいた編集等を施した上で、名誉毀損・信用毀損・侮辱・誹謗中傷等全ての人権侵害と私が思料したり、事件と直接関係ない記事や放送等での使用、私に取材強要する等接触や暴行、話し掛けや強要、追い回しや脅迫などの全ての迷惑加害行為、その取材等の際の音声を記事や放送で使用する全ての行為等を固くお断り申し上げ、ご遠慮されますよう、お願い申し上げます。”



なんと約1100字、一気の長文です。この間、「。」はひとつもありません。これほどの長さの一文には滅多にお目にかかれません(なんですが、判決文とか法的文章には珍しくないんですよね。なんと2000字という一文まであると聞きました。正確な伝達がもっとも必要とされる文章でなぜそうなのかは本当に謎です)。


この文章には「無駄に漢字が多すぎる」という問題もあり、突っ込みどころ満載。リライト素材としては20年に一度級の超大物。これを見つけたときは、ふらっと釣り(ネットサーフィン)に出かけたら、500kgのマグロがかかってしまったような感覚でした。これをわかりやすい文章に直すのは相当に骨が折れますが、リライターとしては腕が鳴るところであります。




2019年7月25日木曜日

登山地図を見るために(だけじゃないけど)機種変更しました




最近、スマホを機種変更しました。ずっと使っていたiPhone SEから、Galaxy A30という機種に。iOSはとても気に入っていたのだけど、のっぴきならぬ事情からAndroidに復帰です。


機種変更の最大理由は画面サイズ。iPhone SEは4インチという、いまどき珍しいほどの小ささ。片手におさまるコンパクトサイズはとても使い勝手がよかったのだけど、だけど……、画面が小さくて見えなぁーーい!(バサーッ!!)


老眼が進んでつらくなってきたのです。年配の方が電車内などでタブレットを使っている理由がわかりました。


新しい機種は、画面サイズ6.4インチ。もういっそのこと、いちばんデカいやつにしてやれと思い、現行品のなかでは最大クラスのGalaxy A30にしました。iPhoneにもXS MAXという画面6.5インチのモデルがあるのですが、いかんせん高すぎる。12万円くらいします。それに対してA30は3万円ほど(UQモバイルで購入)。


画面拡大効果は上の写真を見てもらえば一目瞭然で、地図の見やすさ・情報量が圧倒的。これだけで変えてよかったと思えます。画面の面積比でいえば、A30はSEの2.2倍ほどもあります。すなわち2倍以上の情報が表示できるわけです。山でスマホ地図を見るとき、これまでは狭い窓からのぞきこんでいるような窮屈さを感じていたのですが、だいぶマシになりそうです。


あとは防水機能。山で使うことを考えると、やはり防水性は欲しいです。iPhone SEは防水機能がないので、雨のときに取り出すのは躊躇していました。auとかUQモバイル版のA30はけっこう強力な防水性を備えているので(SIMフリー版は防水防塵機能がないので注意)、雨のときも安心して使えそう。それからホントかどうか知らないけど、防水・防塵機能を備えていると、低温にも強くなると聞いたことがあります。私のSEはバッテリーがへたっていることもあるけど、冬山に持っていくとあっという間に落ちたりして困ってました。A30がどうかはまだわからないけど、冬山でのバッテリー持ちも期待しています。


が、ひとつ問題が。




A30はデカすぎて、いつもスマホを入れているショルダーポーチに入らないのです。




歩行中にもスマホやカメラをすぐ取り出せるショルダーポーチは自分的には必携装備。いくつか持っているのですが、そのどれにも入りませんでした。


そこで、ショップ店頭で実際にA30を片っ端から入れてみて、入るものを探したのだけど、このサイズになると入るものが少ない! 選択肢は実質的に2つくらいに限られました。


最終的に選んだのがこれ。



ミレーのヴァリエポーチというやつ。




今まで使っていた同じくミレーのヴォヤージュパッデッドポーチ(右)と比べると、えらくデカくなってしまった。A30を入れることだけを考えると、もう少しコンパクトなほうがいいのだけど、なにしろ選択肢が少ないのでしかたがない。




デカいぶん、Galaxy A30も余裕で入ります。2ポケットタイプなので、コンパクトカメラも同時に入れられます。エナジーバーなどの行動食なども入りそう。しばらくはこの組み合わせでやってみます。



あ、ちなみにiPhone SEも引退はしてません。LINEモバイルのいちばん安いプランのSIMカードを入れて予備として利用しています。A30はau回線で、LINEモバイルはドコモ回線なので、山での通話可能範囲が補え合える。2台あれば、1~2日の山行ならモバイルバッテリーを待たなくても行けそうなので、わりといい運用方法なのではないかなと思っています。



2019年7月1日月曜日

海外登山技術研究会に登壇しました




先週6月23日、日本山岳・スポーツクライミング協会が開催している「海外登山技術研究会」というイベントに登壇してきました。


このイベントは、澤田実さんが中心となって企画されてきたものですが、5月に亡くなってしまったので、急遽私に代役の依頼がきたというものです。講演的なものは苦手意識があるし、澤田さんの代役というのも正直荷が重いと思ったのですが、話が来たのがイベントまで2週間ちょっとというタイミング。迷っているヒマはないと思い、思い切って即断で引き受けました。


テーマは「無補給登山の可能性」。昨年、トランス・ジャパン・アルプス・レースを無補給で完走した望月将悟さんを主役に、「無補給」なる行為の意義や可能性について掘り下げようというものです。


澤田さんがこのテーマで何を表現しようとしていたのか、正確にはわかりません。が、なんとなく想像できるものはあります。


レースといえど、食料や燃料をすべて自分で持ち運ぶ行為は、まさに登山そのもの。そこに望月さんのような先鋭的なフィジカルを掛け合わせれば、これまでに考えもつかなかったようなことが可能になるのではないか。かつてヨーロッパの山岳スキーレースに刺激を受けて、冬の黒部横断でそれまでの常識を超えたような登山を実践した経験をもつ澤田さんであるからこそ、望月さんのチャレンジに特別な可能性を感じ取ったのではないか……。そういう方向なら話せることもあるだろうと。


そんな基本線に沿って、スライド使いながら30分ほどしゃべりました。詳しい内容は省きますが(トークの情報量ってすごく多くて、文字再現すると30分ほどでも1万字くらいになってしまうのです)、ひとつ、自分でもいいこと言ったなと思うのがこれ。




登山の原初的動機ってこれじゃないかと私は考えています。「行けなかった所に行く」ために、さまざまな技術や登り方を開発・発展させてきた歴史が登山にはあります。


エイドステーションや荷物のデポを前提とした山岳レースは、肉体的パフォーマンスを純粋に追求するには適した場ですが、レースの運営体制やコースが変われば、同じパフォーマンスは発揮できなくなってしまう。一方、デポや他人のサポートを前提としない望月さんの無補給スタイルならば、仮にコースが無人の原野を行く400kmに変わったとしても対応できるわけです。


どんな条件、どんなコンディションが出てきても突破できるような術を身につけることが登山の原初的目的であるとするならば、望月さんが目指したことはまさに登山の源流。


で、重要なことなんですが、源流がよいのは、たんなる懐古趣味とか伝統主義ということではなく、行ける場所の範囲が広がることにあります。だって、他人の助力なしに400kmの山岳コースを6日間で踏破できる能力があるわけですよ。それができるのならば、これまでは思いも付かなかった場所や課題すら視野に入ってくる可能性が広がるのではないかと思うのです。




ーーというようなことを、会場ではしゃべりました。


すると、望月さんは最前列で、「なるほど!」というような顔をしていました。いやいや、あなたのことですよと、ツッコミを入れる場面ですが、望月さんはキラキラした目で他人事のようにうんうんとうなずいているのです。


望月さん、まともに話したのはこのイベントがほぼ初めてでしたが、無邪気というか子どものような人でした。「これやりたい!」「おおーっ! やろうやろう!」という感じ? 「子どものよう」というと失礼にあたるのだとすれば、純粋というか。私がしゃべったような理屈っぽい動機で無補給チャレンジをやったのではなく、ただただ「それは面白そうだ」と感じて無補給をやったというのです。


この感じ、思い当たる人が他にもふたりいます。平山ユージさんと三浦雄一郎さん。彼らは、自分がやりたいと思ったことに一点の曇りももたず、子どものように全力で突き進めるメンタルをもっています。望月さんも同じ人種だった。話していて、ユージさんと三浦さんが思い浮かんでしかたなかった。


この人たちは、理屈抜きに直感で本質を突く能力をもっているところも共通しています。たとえばユージさんのレッジ・トゥ・レッジ。詳しい説明は省きますが、このことって、それまでのクライマーが全員、心のどこかに引っかかっていたことではありながら、見て見ぬふりをしてきたことであるのです。が、ユージさんはビッグウォール経験数回でこのことに気づき、裸の王様を指摘するがごとく、「だってそのほうがよくない?」と、まったくもってストレートにレッジ・トゥ・レッジを実践しました。これは世界のクライミング史に残る意識革命だったと私は思っているのですが、望月さんの無補給トライにも似たようなものを感じます。一流は、理屈抜きに一撃でコトの本質を見抜く能力を持っているのだと。


イベントでもしゃべりましたが、じつはこの無補給思想、トランス・ジャパン・アルプス・レースが始まったころすでにあったのです。




これは、トランス・ジャパン・アルプス・レース創始者である岩瀬幹生さんがレースを始める前、ひとりで日本海~太平洋トライを重ねていた20年くらい前に書いた記録の一節です。


レースが回を重ねるにつれて、途中の山小屋などで食料を補給することはほぼ前提となっていきましたが、創始者が最初に思い描いたのは無補給であったわけです。


「このこと、知ってましたか?」と望月さんに聞いたら、「いや、初めて知りました」と明るく答えました。やはり望月さんは直感で源流に行き着いていたのだ。





慣れないトークショー、しかも急遽代役ということで、かなり緊張して臨みましたが、まあまあしゃべれたかな。会場には私の妻(望月ファン)も来ていたので出来を聞いてみたら「すごく聞きやすかった。見直した」と言っていたので、まあよかったのでしょう。2週間背負っていた肩の荷が下りた気分です。




2019年5月22日水曜日

澤田実さん、寂しいです




遭難するような人ではないと思っていたので、不意打ちをくらったようで本当にショックです。


2年前、澤田さんについて書いた文章があります。結果的に公開されずじまいだったのですが、自分としても自信作で、なにより、澤田実という登山家の魅力をとてもよく表現できたと思っているので、ここに公開します。







***************


首都圏に住む登山歴数年以上の人は、この顔に見覚えがあるんじゃないだろうか? 「あっ、カモシカの人だ!」と気づいたあなた、あなたは鋭い。東京・高田馬場にある登山ショップ「カモシカスポーツ」に行くと、いつもニコニコと人なつっこい笑顔で立っている店員さん。それが澤田実さんである。


「でも久しぶりに見た気がする……」と感じたあなた、あなたはさらに鋭い。澤田さんは3年前にカモシカスポーツを辞めている。現在は山岳ガイドとして活動しているのだ。


澤田さんのガイド資格は、「日本山岳ガイド協会認定・山岳ガイド・ステージⅡ」というもの。技術レベルでいえば国際山岳ガイドに次ぐもので、国内では取得するのがもっとも難しい資格。やさしそうな見た目とは裏腹に、アルパインクライミングから山岳スキー、沢登りなど難しい登山を得意としているのが澤田さんの持ち味だ。


ガイドを始める前から、登山家としてもその名を知られていた澤田さんだが、その山遍歴はとにかく多彩である。





まずは高所登山。これまでヒマラヤ、アラスカ、アンデス、アフリカ、カムチャツカなど、海外の高峰に数多く登頂。ナンガ・パルバットやエベレストといった8000m峰にも登っている。





国内の雪山にも足繁く通う。なかでも北アルプスの黒部横断登山はライフワークといえるほど、さまざまなコース、さまざまなスタイルで挑戦している。





そしてクライミング。本場ヨセミテでのロッククライミングのほか、北アルプス錫杖岳や瑞牆山などで新ルートの開拓もしている。





沢登りにも強い。日本最大の滝といわれる立山・称名滝全4段を通して初めて登ったのはこの人だ。





山岳スキーに強いのも澤田さんの大きな持ち味。スキーを利用して、黒部横断を11時間で成し遂げてもいる。





こんなことまで。「小川山レイバック」という有名なクライミングルートを「ギター初登」。音楽も得意な澤田さんは、途中のテラスで尾崎豊を熱唱した。




こうして並べてみると、ほとんど登山の全ジャンルをこなしているといってもいいほど。しかもそのいずれもハイレベルで。このマルチプレイヤーぶりは日本の登山界では際立っている。それはガイドという仕事にも大いに生かされているようだ。







「どれがいちばん好きかって? うーん、ひとつには決められないなあ……」


高所登山からスキー、沢登りまで、まんべんなくハイレベルにやっている人ってあまりいないと思うんですが。


「面白そうだなと思うことをそのときどきにやってきただけなんですよ。山って、それぞれに、いちばんいい季節、いちばん合った登り方があるじゃないですか。そのいちばんおいしいところを選んでいったら、結果的にいろいろやることになっていたということなんです」


澤田さんが登山を始めたのは大学に入ってから。愛知県出身の澤田さんは、「北海道になんとなく憧れがあって」北海道大学に進学。そこで探検部に入部したことで登山と出会った。


探検部というのは、山だけでなく、川下りや洞窟探検、海でのダイビングなど、さまざまな活動を行なう。部の活動ではないが、澤田さんは、1年休学して150日ほどかけて日本徒歩縦断(北海道宗谷岬~九州佐多岬)ということも行なっている。





大学探検部時代、北海道天塩川をイカダで河口まで下った


いろいろやったなかでも「登山がいちばんバリエーション豊かで面白い」と感じた澤田さんは、卒業後も就職せず、山で生きていくことを決意。山小屋やスキー場など、山でのアルバイトを見つけて働くようになる。しかし、こうした山での仕事は意外と登山には行けないことがわかり、当時はクライマーの職場として人気があった窓拭き会社のアルバイトに転身。同時に上京して山岳会に入り、実力のある仲間を得た澤田さんの登山熱は爆発していく。


1994年にアラスカのデナリ(6190m)に登り、90年代は毎年のように海外登山に出かける。ヒマラヤ8000m峰も登るようになり、その実力と大学で地質学を学んだ経験を買われて、エベレストの山頂で化石を探すというテレビ番組の企画にも起用された。「化石探しが目的だったんですが、いい化石が見つからないうちに山頂に着いちゃった(笑)」





1997年に登ったナンガ・パルバット(8126m)


このころの澤田さんの生活は完全に山中心。窓拭きの仕事はかなり自由がきいたため、長期山行や海外登山にもしばしば出かけている。厳冬期2月の単独黒部横断にも挑戦し、11日間でこれを達成している。この時期の剱岳は非常に厳しく、登られた記録があまりない。そこにあえて挑戦した澤田さんは、山岳会の記録にこう書いている。


「休みが取れないことをうまい口実に敢えて避けてはいなかっただろうか。誰もやらなかったのならば、山のためにフリーター生活をしている僕が行かなくてどうするのか」


2004年には、スペインで行なわれた山岳スキーの世界選手権にも出場。4人チームで、ほかのメンバーは、松原慎一郎(山岳ガイド)、横山峰弘(トレイルランナー)、佐藤佳幸(元アドベンチャーレーサー、現アドベンチャーカメラマン)という強力なもの。





2004年の山岳スキー世界選手権


このレースで澤田さんは、海外の強豪選手のスピードに衝撃を受ける。このノウハウと装備を日本の山に持ち込んだら、それまで想像もつかなかったすごいことができるんじゃないか。そして黒部横断ワンデイという、当時としては途方もない発想にいたる。





黒部横断を11時間18分で達成


超軽量スキーとデイパックに、レーシングスーツで身を包んだ、冬山登山の常識を飛び越えた異様な風体の男が冬の黒部を疾走。11時間強という、それまで考えられなかったタイムで横断を達成した。







そして2004年にカモシカスポーツのスタッフとなる。家族ができ、不安定なアルバイトのままではいられなくなった末の決断だったが、自分の経験が生かせる職場は楽しく、好きなものに囲まれた毎日で、最新の道具事情にも詳しくなった。


接客業を経験したことも大きい。それまでは嗜好を同じくする仲間としか付き合ったことがなかったのだが、登山ショップには、ハイキングからクライミングまで、さまざまな趣味嗜好のお客さんが来店する。自分の発想にはまったくなかった相談を受けることもある。そんな経験を通じて、山を見る目も広がっていった。


気がつくと、ショップ勤務も10年になろうとしていた。カモシカスポーツの顔のひとりとして定着していた2014年、澤田さんはカモシカスポーツを辞め、山岳ガイドへの転身を決断する。


「やっぱり僕は山にいたかったんですよ。ショップは休みが限られますから、時間の自由がきかないし、長期の登山も行きにくい。もっと山にいる時間を増やしたい――その条件に合って、自分の経験も生かせる仕事はなにかなと考えたときに、出てきた答えが山岳ガイドでした」


もっと山に行きたい。そういう自分の欲求から選んだ新たな道だったが、ここにきて、マルチプレイヤーとして活躍してきた経験が生きている。さまざまな山、さまざまな登り方に対応できるのだ。この3月には、かつて自身が11時間で行った黒部横断コースを、お客さんに請われて2泊でガイドした。こういう、あらゆる技術と経験の複合技が必要なコースをリードできるガイドは多くない。


現在は年に200日近く山に入る毎日。ガイドの仕事だけでなく、自分の登山を磨くことも忘れていない。この冬には、10日ほどかけて穂高の継続登山をしてきた。「目標にしていた岩壁は、天気が悪くて逃げまくっちゃいましたけど(笑)」。


どんな山でも楽しい。そう語る澤田さんの表情は、カモシカスポーツでもおなじみだった、ニコニコとして人なつっこい笑顔のままだった。

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やりきったと思える人生を送れて幸せだったと思っていてほしいです。が、思い残すことはあったはず。ご本人とご遺族が安らかな日々を送れる日が来ることを願って。


2019年4月14日日曜日

「遭難救助は税金のムダ」なんかじゃないと思うのだが





白馬山頂から滑り下りたところ、カリカリのアイスバーンでヒヤッとしたという動画。これのコメント欄が燃えていました。登山のリスクとそれに対する世間の認識について、いろいろ考えさせられるやりとりなので、興味のある人は見てみてください。


発端はこういうコメント。

ゲレンデじゃない場所で滑る事の危険性や無謀さの認識はあるのでしょうか。しかも誰も足を踏み入れてないような急斜面を横滑りで下るって、雪崩でも引き起こしたいのかって思ってしまう。雪崩を引き起こしたり、遭難した場合、多方面に迷惑が掛かるってのに。勝手に失踪するならともかく、雪山の事故で山岳救助隊なんか出動しようもんなら、どれだけの血税が無駄に使われることか。

自分はここにすごく引っかかりました。山岳遭難が起こったときなどに、よくこのように「税金が無駄になる」という趣旨の批判がなされるのですが、これにはいつも激しく違和感を抱きます。


だって人の命が危険にさらされているわけですよ。そこに税金を使わずしていったいどこに使うのか。「登山は遊びで行っているのに」という意識からこういう言葉が発せられると思うのですが、ならば、海水浴で溺れた人も休日のドライブで事故を起こした人も助ける価値がないのか。そんなことないでしょう。どれも等しく助けなくてはいけないし、それこそ税金の使い方としては、人命救助はもっとも優先度が高いものであるはず。


「危険なことを好き好んでやっているのだから自業自得」という意識も、批判の背景にはあるのでしょう。が、登山の死亡率って、0.005%くらいですよ(600万人登山人口がいて、年間の死亡者数が300人くらいなので)。新聞が山岳遭難を大きく取り上げてきた歴史があるので、登山って実態以上に危険なものというイメージがついてしまっているように感じます。


おそらくですけれど、「税金の無駄使い」と批判する人は、登山をシリア潜入などと同じようなことと考えているのではないでしょうか。わざわざ危険を冒して、なんの意味があるのかわからないことをやっている人たちという認識。それを人的・金銭的コストをかけてまで助ける必要があるのかと。そう考えると私も批判を理解できるような気がするのです。イラクやシリアでの捕虜事件のニュースを聞いたとき、私のなかにも批判の目で見たくなる感情が少しはあったからです。


でもそれは、私はイラクやシリアのことをよく知らないし、そこに向かう人のことも知らないからなんですよね。「北斗の拳みたいな場所にのこのこ出かける間抜けなやつ」という程度の雑なイメージしか描けないから、雑な感情しか抱けないわけです。


そうであるのならば、税金がどうのという大上段な議論をしてはいけないと思うんです。「気に食わない」程度の雑な言い方ならかまわないと思いますよ。けれど、雑である状況認識に、税金という精緻な議論が必要なものをからませると、そこにはズルさを感じてしまう。私が「税金の無駄使い」論が嫌いなのはそこに大きな理由がありそうだ。動画の一連のコメントを読んでいて、そんなことを思いました。



2019年3月19日火曜日

連載「山岳スーパースター列伝」最終回



雑誌『PEAKS』でやっていた人気連載「山岳スーパースター列伝」が、15日発売の4月号で終了しました。記事冒頭にも書きましたが、終了の理由はネタ切れ。もう紹介できる人がいなくなってしまったというわけです。


連載が始まったのは2013年5月号なので、まる6年間やっていたことになります。フリーになったばかりのころに始まった連載であり、初代の担当編集は、その数カ月前まで私の部下だった臺代裕夢という男でした(こやつ、つい最近、小学館ライトノベル大賞という文学賞で優秀賞を受賞しました!)。「山岳スーパースター列伝」という軽薄なタイトルは編集部がつけたものであり、私ではないのでよろしくお願いします。


連載では1回の休載をはさんで、計71人の登山史上の偉人について書き続けてきました。1回が約1700字あるので、計約12万字。おお~。われながらよく書いたな~。


書くにあたって毎回念頭においていたのは、読者に、偉人の実績よりも人物に興味をもってもらうようにすること。そのために、ダメなところを含めて人間くさいエピソードをできるだけ盛り込むようにしていました。だってすごい実績を教科書的に羅列したところで面白くないですからね。読者の記憶に残らなければ連載の価値はないと思って毎月書いていました。


そのため、71人の人選はそれなりに偏っています。人間くさい面を書こうとすると、私がなんらかの思い入れがある人しか書けないわけです。連載のテーマからすると、エベレスト初登頂者のヒラリーやテンジンなども出てきておかしくないわけですが、結局登場していません。シェルパ枠からは代わりにバブ・チリなんてマニアックな人を登場させたりしていました。


ところで、この連載のもうひとつの主役といっていい存在が、綿谷寛画伯によるイラストです。


画伯は登山をやる人ではありません。なので、連載開始当初は、人物の写真やら道具の説明やら、いろいろ資料をそろえて渡し、どんなイラストを描けば人物のイメージに合うか細かく指示していました。


が、画伯はその指示をことごとく無視して独自のイラストを仕上げてきます。ところがそれが、私がイメージしていたものよりもはるかによいのです。なので私はそのうち、人物の顔写真数枚と、どんな人なのかの簡単な説明1行くらい渡すだけになりました。あとは画伯におまかせしたほうがいいものになるという判断です。


それでも登山を知らないはずの画伯が、しかもイラストと原稿は同時進行だったので本文を読んでいるわけでもないのに、なぜこんなズバリのイメージを描くことができるのか、毎回本当に不思議でした。


最近のいちばんの傑作は、2019年3月号で岩崎元郎さんを取り上げたとき。岩崎さんの背後に「岩崎さ~ん」と呼びかけるハイカーが描かれておりました。こんな小細工、私は指示してませんよ! でも、中高年登山者に絶大な人気を誇った岩崎さんを表現するに、これ以上効果的な描き込みがあるでしょうか!? 画伯はどこでこんな絶妙なニュアンスを知ったのか……。




画伯はもともと『POPEYE』や『MEN'S CLUB』などで活躍していたファッションイラストの巨匠。そのイラストは、だれもが一度は見たことがあるんじゃないかと思います。本来、画伯、画伯となれなれしく呼べる存在ではありません。が、本人のメールアドレスからしてwatatani-gahaku@~なので、もういいんじゃないか(笑)。ということで、編集部との内輪ではつねに「画伯」と呼ばせていただいておりました。


綿谷画伯に描いていただいたおかげで、連載はぐっと格調高いものになったと思っております。画伯こそ真のプロ。そんな尊敬できるイラストレーターとコンビを組ませていただけたことは私の誇りであり、感謝のひと言であります。もう、71枚のイラストだけをまとめて画集を作りたいくらいです。


読者のみなさんもぜひ、画伯のイラストに注目して連載ページを見返してみてください。6年間ありがとうございました。




2019年3月3日日曜日

「私にも登れますか」には答えられません




昔、山と溪谷編集部にいたころに、こういう問い合わせの電話をよく受けた。


「私にも○○山は登れますか」


これは絶対に答えられない質問なんですよ。だって、登れるか登れないかというのは、人によって大きく変わってしまうから。電話をかけてきているのが登山経験豊富な人である場合と初心者とでは、答は180度変わってしまうこともあるわけです。


「140kmのスライダーは私にも打てますか」と聞かれたら、相手がプロ野球選手なら「打てるんじゃないでしょうか」と答えるだろうし、野球素人なら「無理だと思いますよ」と答えますよね。それと同じことなのです。


もちろん、だからといって「わかりません」とひと言で切って捨てるのではなく、電話をかけてきた人の登山経験を聞いたりして、可能性を探る会話はするわけですが、いずれにしろ最終的に結論を提示することはありません。そこで安易に「登れると思いますよ」とか「無理でしょうね」とか言ってしまうほうが、むしろ無責任かと思うのです。


だから七ツ石小屋のケースも、問い合わせをするなら、こう聞くべきなのであります。


× 「アイゼンないけど今週末なら登れますか」

○ 「いま登山道に積雪ありますか」


登れるか登れないかの判断はできないけれど、積雪があるかどうかは客観的事実なので答えられる。その事実をもとに行けるかどうかを判断するのはあくまで本人。というか、本人あるいは近しい人にしかその判断はできない。


がしかし、客観的事実から登れるかどうかを判断できる人は、そもそもこういう質問をしないだろうという矛盾にいま気づきました。ならば百歩譲ってこう聞いてほしい。


「雪山経験○回で、これまで××山とか△△山などに登りました。それくらいの経験で今週末七ツ石山に登ることについてどう思われますか?」


これならば、質問というより相談といった類のことになるので、もう少し実のあることを答えられる余地はあります。


とはいえ、山小屋や雑誌編集部、山岳ガイドなどは発言に責任が伴う立場なので、会ったこともない人に対して確定的なことは言わないし言えません。そこはやっぱりお忘れなくとしかいいようがないモヤモヤした結論になってしまいましたがよろしくお願いします。



2019年2月26日火曜日

統計の読み方には注意しようという話


このような記事を目にしました。登山者が山でどんなカメラを使っているのかということなどを、山と溪谷社がアンケートで調べたというもの。私は登山も写真撮影もどちらも好きなので、これは興味深い。


内容を見てみると、意外な発見がけっこうあります。


たとえば、山でいちばんよく使われているのはコンパクトデジタルカメラだという(38%)。これは意外。いまや山でもスマホで撮影する人が多いだろうと思っていたのだけど、結果は違うようだ。ちなみにスマホの割合は24%で全体の2位。3位が一眼レフで22%。スマホと一眼の差がほとんどないのもびっくり。


撮影したデータの保管について、ダントツの1位(45%)が「パソコンに保存」というのもわりと驚き。みんな意外と几帳面なんだな。


あとは動画。「撮りたいと思わない」という人が45%もいることも、個人的な体感からすると予想外な結果でした。


がしかし、こういう統計とかアンケートって、結果だけ見てパッと判断するのは危険だと常々思っています。どういうアンケートが行なわれているのか、その背景もよく見て考えないと。


そこで目に付いたのが、アンケートの回答者でした。有効回答者数は3156人。これは十分な数といえるでしょう。


問題は性別と年代。男女比は81:19。男性が圧倒的でした。年代については、76%が50歳以上。つまり、このアンケートに答えた人の8割は50歳以上の男性といえるのです(厳密にはそうはいえないのだけど、まあざっくりと)。


登山者全体のなかで、50歳以上の男性が多いことは確かですが、それにしても8割はないでしょう。女性や50歳以下の男性ももっといるよ。


つまりこのアンケート結果は、50歳以上の男性登山者の実態を表したものとはいえるけれど、登山者全体の実態からするとそれなりにズレがあるんじゃないかと。私が「意外な発見」と感じたのは、そのズレのせいじゃないかと思ったのですが、どうなんでしょうかね!?





2019年2月7日木曜日

NumberWebで連載始めました

スマホアプリは山岳遭難の救世主?老舗『山と溪谷』も"推奨"に方針転換!(森山憲一)

登山とクライミングをテーマにしたコラム連載をNumberWebで始めることになりました。


基本的に1カ月に2回のペースで、登山ネタとクライミングネタを交互にやっていく予定です。Numberなのでスポーツ寄りのテーマが多めになるとは思いますが、初回からかなり山っぽいテーマなので、どうなるかは自分でもわかりません。クライミングは純粋スポーツクライミングからときにはアルパイン系ネタまで入ってくるんじゃないかと思います。


このブログでときたま書いていたオピニオンチックな話も、それなりに一般性をもつものはNumberで書くようにするかもしれません。逆にこのブログはNumberでは書けないようなマニアックな話を中心にしたいなと思っています。やたら突っ込んだ長文の道具レビューとか角幡唯介のおちんちんがどうしたとかいう話ですね笑


「こんなテーマ読みたい」などのリクエストがありましたら、コメントなどでお寄せください。ぜひ参考にさせていただきます。


よろしくどうぞ~