2020年2月27日木曜日

経歴詐称記事のあとがき的なもの


「山写」なる人物のこと


こういう記事を書きました。


登山ライターとしてこういうことに関わるのは、気が進むものではありません。そもそも人の批判をするのは気が重い行為であるし、やたら時間と神経を使うわりにいいことがあまりないからです。ネット上でへんな誹謗中傷を書かれたりもします。


以前、栗城史多さんについて私が書いた記事がかなり注目されたことがありました。以来、登山の正義を追求する”山岳警察“としての役割を期待されているような気がするのですが、積極的にやりたいとは思いません。というのも、それをしたことろで、私には実利がないからです。


私が仕事をしている登山・クライミングメディアというのは、趣味レジャーのものであって、基本的には読者のためになるポジティブな情報を提供することがテーマであります。そこでは闇を暴くようなネガティブな記事はあまり好まれません。私が文春の記者だったら違うのでしょうが、登山界では、微妙な案件にすぐ首を突っ込む危ないライターとして避けられてしまうおそれがあります。


それでもこういうことをやってしまうのは、第一に、本当のことを知りたいからです。正義感ではありません。求めているのは真実です。私は真実を知りたいという欲求が人より強いのだと思います。デマや嘘に踊らされることがものすごく苦痛なのです。自分が踊らされるのもいやだし、踊らされている人の姿を見るのもいやだ。


東日本大震災で原発事故があったときや、STAP細胞事件があったときなどは(最近ではコロナウイルスも)、自分には判断不能な情報が飛び交い、何が真実なのかまったくわからない状況が続いて、個人的にはとてもストレスでした。本当のことが知りたい!


首を突っ込む第二の理由は、本当のことを伝えるのが専門家の仕事だろうと思っているからです。原発事故のときもSTAP細胞のときも、おそらく真実はここだとわかっていた専門家はいたはずだと思います。でも伝え方が下手だったり、内部者ならではのしがらみがあったり、さらには陰謀論が好きな人が事態を混乱させたりして、そういう人の声が表に強く出てこなかったのでないか。


山写さんの件でいえば、私にはすぐわかってしまったような嘘でした。でも、こんな稚拙な(と私には思える)嘘でも、カンチェンジュンガとマナスルの違いを知らず、ヒマラヤン・データベースなど存在すら知らない人にはわからないのだ。ということを、5ちゃんねるやツイッターで交わされている議論を見ていて強く感じました。これは栗城さんの件のときに感じた感覚とまったく同じものでした。


そこでは、意図的な嘘や間違った思い込みでも、伝え方が巧みであれば世論は容易に流されてしまう。ならば、だれの目にも動かしようがない真実を、事情をよく知っている専門家がガツンと立ててやらなければいけない。それがこの世界でメシを食っている人間の使命であろう。


カッコよくいえば、そういうことが、こういうことをやってしまう動機です。所詮、自己満足ではあります。でも、だれかの役に立っていることを願っているし信じてもいます。


2020年2月26日水曜日

「山写」なる人物のこと

先日、山岳写真の分野で経歴詐称事件が発覚しました。詐称していたのは、「山写」と名乗って山岳写真家として活動していた人物。顔と本名を公表していないので何者なのかがよくわからないのですが、ツイッターで1万人以上のフォロワーを抱え、各種企業とコラボして山岳写真のセミナーなども開催し、ある種のインフルエンサー的な存在となっていました。


登山と写真で仕事をしている人。


一般にはあまり知られていないと思われるのですが、登山と写真両方に関心のある人たちにはそれなりに影響力と存在感を持っていたと思います。とくにここ一年ほどは、ファイントラックの山岳写真用ジャケットの開発に協力したり、ペンタックスとコラボしたセミナーが開催されたり、YAMAPで連載が始まったりなど、活動が本格化していました。


本人が自称している経歴は以下のようなもの:


・20代は海外で山岳写真の修行をつむ

・現在は海外の組織に所属する立場。日本の山岳風景の撮影と、山岳写真の啓蒙のため帰国して活動している

・自身の写真作品は海外で高額で取引されている

・登山実績も豊富。これまでにエベレスト、マカルー、カンチェンジュンガ、モンブランなど多くの海外高峰に登る

・フリークライミングもうまく、これまでの最高グレードはオンサイト5.12b

・WEBディレクター/デザイナーとしての顔も持ち、さまざまなプロジェクトに参画してきた

・平湯温泉で各種広報、地方創生的な事業を行なってきた


年齢は30代と思われるのですが、こうして並べてみるとスーパーマンというか、そんな人いるの!?って感じです。






私が初めてこの人の存在を知ったのは、2016年、この記事を見たことがきっかけでした。


登山用ザックに一眼レフと大量のレンズをパッキングをする方法


まず引っかかったのがブログのタイトル「登山と写真で仕事をしている人。」


私は職業柄、登山と写真で仕事をしている人はたいてい知っているのですが、こんな人がいることはまったく知らなかった。登山と写真で仕事をしている人というのは大変少なく、私のような山岳ライター/編集者にとっては、常時大募集しているような人材であります。しかもブログを見ると、かなり登れるようであり、年齢も若そうだ。これは貴重人材!


ところが、記事をよく読んでみると、なにかがおかしい。とくに、カメラの予備ボディを持っていないところと、荷物が多すぎるということに違和感を抱きました。私の知っている山岳カメラマンは、山中での故障に備えて予備のカメラボディを必ず持っていたし、撮影機材をできるだけ持つために、登山装備は限界まで切り詰める人がほとんどでした。それに比べると、どうもプロっぽくない。


そのへんの疑問をFacebookに投げてみると、知り合いが「それ、たぶん平湯の人だよ」と教えてくれました。平湯温泉の観光協会で仕事をしている人だというのです。平湯というのは北アルプスの玄関口となる町。なんらか写真の心得がある山好きの職員が、写真素材を自分で撮影して観光協会の仕事をしているということなのか。なるほど、それなら「登山と写真で仕事をしている人。」というタイトルもあり得ると納得して、しばらくは存在を忘れていました。


再びその存在を意識するようになったのは、2017年末か2018年初頭ごろ。この人がカンチェンジュンガを登ったらしいという話がSNSで回ってきたのを目にしたときでした。――えっ、カンチェンジュンガ!? 


カンチェンジュンガというのは、ヒマラヤ8000m峰のなかでも難しい山で、日本人でここに登ったことのある人はそう多くはありません。


あらためてプロフィールを見てみると、すでにエベレストとマカルーにも登ったことになっている。エベレスト、マカルー、カンチェンジュンガの3山に登ったことがある日本人となると、ごく限られるはず。そんな人を知らないということはあるだろうか……。


これが、同じ8000m峰でも、エベレスト、チョー・オユー、マナスルの3山を登ったということだったら、ここまで違和感は抱かなかったと思います。この3山はガイド登山が発達していて、いまや日本人登頂者なんて無数にいるからです。しかしカンチェンジュンガとマカルーは違う。


そこで、ヒマラヤの登山者がほぼすべて記録されている「ヒマラヤン・データベース」を見てみました。案の定、それらしき人物の記載が見つからない。名前と年齢がわからないのではっきりしたことはいえないけれど、これはかぎりなく嘘っぽいのではないか……。





【ここでおまけ】

ヒマラヤン・データベースというのは、エリザベス・ホーリーという伝説的な山岳ジャーナリストが始めたもので、世界中の山岳メディアが第一級の参考資料としているものです。その網羅性と正確性は驚くべきもの。ただし閲覧の仕方がちょっとわかりにくい。私も使うたびに忘れていて困っていたのですが、今回、ある人が非常にわかりやすく使い方をまとめてくれていたので、自分の備忘録を兼ねて掲載しておきます。引用が長くなるので、先に進みたい人はとばしてかまいません。


ちなみにこの一連ツイートはツイッター上で発見したものなので、この「ひゅ〜む」さんが何者なのか私にはわかりません。が、記述内容からしてヒマラヤ登山に詳しい人と思われます。


















【ここから本文再開】

これで俄然、この山写なる人の言うことが眉唾っぽく感じられてきました。あらためて見ると、登山実績のほかの経歴も、上に書いたようにキラ星のような実績が並ぶにもかかわらず、それが事実だと信じるに足る具体的な記述がほとんどありません。


なんなんだろな、この人は……。


と思っているうちに、山写さんがセミナーを開催するという情報を得ました。どういう人なのか見てみたいという好奇心で、私はセミナーに応募してみました。まあ、さすがに好奇心だけでは応募はしなかったところですが、セミナーのテーマがちょうど私が知りたかったこと(Lightroomを使った色調調整の方法)だったことと、ちょうど購入を考えていたモニターを使えるということが後押しになりました。


セミナー会場で実際に目にした山写さんの印象をひと言で言うと、「ああ、これはやっぱり登っていないな」というものでした。


8000m峰を3山登り、フリークライミングでも5.12をオンサイトする人といえば、日本のトップクライマーの一角といっていい実力です。国内最高の”猛者の集い”とされるWCM(ウィンタークライマーズミーティング)に参加する資格が十分にあるといえるでしょう。


そのレベルの人たちには一様のある”雰囲気”があります。まず体型。細身で全体にキュッと引き締まった体格をしています。立ち方もシュッとしているというか。筋肉が引き締まっているため、スッと立っているだけで関節が正しい位置におさまっているんでしょうね。そして手がゴツい。日焼けするため肌が浅黒い人が多いのも特徴です。


対して山写さんはごく普通の人でした。トップクライマー特有の雰囲気がまったくないのです。見た目だけでわかるのかと思われるでしょうが、トップクライマーにたくさん会ってきた経験があれば、違和感はすぐ感じ取れます。会って得られる情報というのはものすごく多く、それは言葉にはならなくても、感覚的な確信をもたらすにはとても重要なのです。


とはいえもちろん、それは私の主観でしかないので、これだけで登っていないと公に決めつけることはできません。ただし、自分のなかでの評価としてはもう十分でした。「この人は自分で言っているような登山はしていない」と。


余談ですが、セミナー自体はよいものでした。ひとりに1台パソコンが用意されていて、実際に操作しながら解説を聞けるのでわかりやすく、自分的には得るもののあるセミナーでした。3時間みっちり、山写さんが全部自分で作ったという36ページのテキスト付き(パワーポイントのホチキス止めとかじゃなくて、ちゃんとオールカラー印刷してある冊子)。かなり力の入ったものであったことは付言しておきます。しかも参加費無料!




経歴を詐称していると個人的には確信したので、以降は関わり合いを持たないようにしていました。私が仕事上で付き合いのある会社や個人が山写さんとも付き合っていて、そういうのを横目で見ながら「大丈夫なのかな……」と思いつつも、部外者が口出しをするのも気が引けるので、あくまで横目で見るだけにとどめていました。


そういう期間が1年半ほど続いたのち、今年に入ってから「ちょっとこれはまずいかも」と思い始めました。


ひとつは、山写さんが活動の場を広げ、影響力を強めてきたこと。実体のない経歴を土台にした人が影響力を持つのは、どんな事情があったとしてもいいことではありません。


ふたつ目は、私が新たに連載を始めたYAMAP MAGAZINEで山写さんも連載を始めたこと。山写さんはかなりド派手な詐称をしていたので、バレるのは時間の問題だと思っていました。そんな地雷みたいな人が同じメディアで連載をしていれば、こちらも巻き添えを食うおそれがある。立ち上がったばかりのYAMAP MAGAZINEにとっては、時間を置くほど、嘘が爆発したときの痛手は深くなるだろう。


さらにこれ。


これからエベレストに挑戦しようとしている新進の山岳写真家に、ドヤ顔でエールを送っている。これはちょっと見ていられなかったな。


どういうつもりなのか知らないが、この上田さんという写真家に対してあまりにも失礼でしょう。他人の話題に乗っかって「サミッターのフォトグラファー」と言いたかっただけなんじゃないのか。


上田さんはアマダブラムやマナスルに登っている人。山写さんの怪しさには気付いていたと思うし、その人物から公の場でこうして先輩面でコメントされたときの感情を想像するとやるせないものがあります。




自分には関係ないし……と見過ごしてもいられなくなってきたなと考え始めたころ、山写さんのあるツイートが目に入りました。ネットの掲示板で誹謗中傷されているので訴訟を起こすというのです。検索してみると、5ちゃんねるのカメラカテゴリーにそのスレッドはありました。


中を見てみると、山写さんの経歴がおかしいという議論で燃えさかっていました。ああ、ついに地雷が爆発するときがきたのかな。


掲示板の指摘はかなり具体的なものもあって、訴訟を起こすと言っていたわりには第三者からしても山写さんに分が悪く見えました。そのうち山写さんのツイッターでも弱々しい発言が目立ってきました。しかし、経歴が虚偽なのかどうかについてはのらりくらりと明言を避け、一方で、5ちゃんねるで言われていることも匿名掲示板であるがゆえに決定的な説得力に欠け、白黒はっきりしないまま、議論はなんとなくフェードアウトしていきそうになっていました。


それまでずっとネット上の議論を見物していた私は、ここで我慢できなくなってつい口を出してしまいました。



ツイッター上で尋ねたのは、登山歴は山写さんが公に発表していることなので、その返答は公の場でしてもらう必要があると考えたからです。そして3山を登頂したかどうかについて尋ねたのは、はい/いいえで答えられるシンプルな質問にしたかったから。解釈の余地を残す複雑な質問をすると、あいまいな答で逃げられるからです。


回答はこの場で欲しかったのですが、DM(1対1のクローズドなメッセージ)で来ました。本人曰く、3山いずれも登頂していないということでした。その結果を私が公開したのがこれです。




そしてこちらは山写さん本人のツイート。




DMでは、登頂していないのならどこまで登ったのかとも聞きました。標高で答えてくれましたが、それは所属組織の守秘義務にあたるので公表しないでくれと言われたのでここには書きません。では所属組織の名前を教えてほしいとも聞きましたが、それも言えないとのことでした。


全然納得はできませんが、自称していた登山実績のうち最重要なものが虚偽であったことを証明できたことだけで十分なので、それ以上は突っ込みませんでした。


ひとつ私の印象を付け加えるならば。


答えてくれた最高到達高度もおそらく事実ではないでしょう。エベレスト、マカルー、カンチェンジュンガには行ってもいないと私は想像しています。仮に行っていたとしても、トレッキングで行ける範囲で山麓からの撮影にとどまっているはず。しかしその写真すら一枚も見たことがないのだから、そもそも行ったことがないと判断するのが常道というものだと思います。


これ以降、山写さんは1日に数十ツイートもしていたツイッターでぱったり口を閉ざしてしまいました。その間に5ちゃんねる上では、山写さんが過去に書いたブログなどが次々に発掘されて、登山実績のほかにも、自称していたさまざまな経歴が8割方虚偽であったことがほぼほぼ証明されてしまいました。


なんだか、かのショーンK事件を見ているようでしたが、ショーンK氏にしろ山写氏にしろ、なぜこんな危うい経歴で表舞台に出ていこうとしたのか、そこはまったくわかりません。


当初は軽い気持ちで盛って話していたことが意外に疑われることもなく、それに気をよくして次第にエスカレートしていくうちに自分でも整合性がとれなくなっていった……ということなのかとも想像しますが、本当のところはなにもわからないですね……。







最後に山写さんについて擁護もすると、基本的には能力のある人なんだと思います(他人に対して上から目線な言い方ですが)。セミナーが充実していたことは上に書きましたし、乗鞍岳で登山道整備プロジェクトを仕切った実績も事実のようです。


そして私がブログやツイッターを見て驚いていたのは、経験がないはずのことをよくここまでリアルに書けるなということ。大ポカも随所にあったにせよ、先鋭登山やクライミングについてけっこう細かいことを正しく書いていたことも多かったのです。おそらく、想像力に長けた人なんだと思います。ライターや編集者にたまにいるのですが、あまり知らない分野のことでも、いくつか資料を読んだだけで、その世界の核心や微妙なニュアンスを正確につかめる勘のいい人がいるんです。山写さんにもその匂いを感じました。


あとは、たとえそれぞれがトップレベルではなくても、ウェブに強くて、写真が撮れて、登山のことをわかっている。この3つが揃っている人材は登山業界ではとても貴重です。その力は正しく発揮されれば、欲しがる会社はたくさんあるはず。おかしな嘘で台無しにしてしまうのはもったいないとも思っています。






*本論とは離れた部分で個人的な思いをあとがき的に書きました。

経歴詐称記事のあとがき的なもの



2020年2月11日火曜日

YAMAP magazineで連載を始めました

スポルティバ・ネパールエボGTX | Long Term Impression #02

ブログで紹介するのを忘れておりましたが、地図アプリのYAMAPが新たに立ち上げたWEBマガジンで山道具の連載をしています。2回目となるこの記事では、スポルティバのネパールエボGTXについて書いています。


当初、編集部の打合せでは「ROCKIN' ONの2万字インタビューにならって2万字インプレッションはどうか」などと話しており、要するに、とことん突っ込んだ道具レビューをやろうというのが趣旨であります。さすがに2万字は書けませんでしたが、8000字くらいの大作になっています。


初回はこのテントでした。こちらもぜひ。

ニーモ・ホーネットストーム1P | Long Term Impression #01

2020年1月9日木曜日

赤岳鉱泉でG5使ってみました。注目ブランドKAILASもあったよ


1月5日・6日で八ヶ岳に行ってアイスクライミングしてきました。上の写真は裏同心ルンゼ。10年ぶりくらいに行きました。どんな感じだったか、行く前はあまり思い出せなかったのだけど、現場に立ってみると風景はほとんど記憶にありました。


今回は取材仕事。泊まりは山小屋(赤岳鉱泉)で、初日はアイスキャンディで登りました。

アイスキャンディ





ところで赤岳鉱泉では、ギアのレンタルを行なっています。これまで利用したことがなかったのですが、ちょうど試してみたい靴があったので、レンタルしてみました。


使ってみたのはこれ。



スポルティバのG5


いやー、これ、いいですわ……。


とにかくめちゃ軽い。いま履いている靴(ネパールエボ)より200gくらい軽いだけなんだけど、なんだか数字以上に軽さを感じます。歩きもクライミングも明らかに軽快になれる。冬靴も軽くなったなあ。


あと、Boaシステムが便利。靴紐じゃなくてダイヤルで締め込む仕組みなのだけど、調整や脱ぎ履きがものすごくラクです。これはいい。壊れたときに現場で直せないという不安はありますが、このラクさには抗いがたい魅力がある。


あまりにも難点なのがその価格。消費税込みで93500円というのは、あんまりでございますよ。シャモニではスポルティバそんなに高くなかったので、ヨーロッパ行く機会があったらそこで買いたいなと思います。行ける機会がいつあるのか知らんけど。






さて、赤岳鉱泉のギアレンタル、初めて利用してみましたが、これいい仕組みだと感じました。冬ギアを実際に使って試すことができるところって、ここくらいしかないですからね。買うの迷ってるギアがあったら、一回ここ来て試してみる価値はあるんじゃないかと思いました。


レンタル品はこんな感じ。


【ブーツ】
・スポルティバ G5
・スポルティバ ネパールエボ(旧型)
・マムート ノードワンド
・スカルパ レベルウルトラ
・ミレー ダヴァイ
・(もうひとつあったけどメモし忘れた)






【アックス】
・ペツル ノミック
・ペツル クォーク
・ブラックダイヤモンド バイパー
・カシン Xドリーム
・クライミングテクノロジー ノースクーロワール
・ミゾー きら星
・ミゾー 北辰
・グリベル ノースマシンカーボン
・DMM スウィッチ
・コング ソウル
・サレワ ノースX
・カイラス エンテオスⅡ
・カイラス ダガー






【クランポン】
・ペツル 新型ダート
・ペツル リンクス
・ペツル サルケン
・グリベル G22
・グリベル G20
・グリベル ランボー4
・グリベル G14
・カシン ブレードランナー
・クライミングテクノロジー ハイパースパイク
・クライミングテクノロジー ライカン
・カイラス クランツ





アイスツールについては主要どころはほぼ揃っている感じ。


注目はカイラス。最近、マニアの間で話題になっていた中国のブランドです。というとクオリティに疑問を持ってしまいそうですが、これがよくできているというのです。私も現物は初めて見ましたが、質感は欧米ブランド品と遜色ないように感じました。


レンタルは1日500円。詳しい利用規程はここに書いてあったので、参考にしてみてください。







2019年11月3日日曜日

オリンピックのスポーツクライミングに大問題勃発

クライミング協会、代表選考巡りCASに提訴(写真=共同)


東京オリンピックのスポーツクライミング競技が大混乱に陥っています。


オリンピック代表選手の決定方法をめぐって、日本の協会(JMSCA/日本山岳・スポーツクライミング協会)と、国際スポーツクライミング連盟(IFSC)が食い違いを起こし、スポーツ仲裁裁判所という機関での法廷闘争に発展しようとしているのです。


現在、オリンピック代表入りを目指してがんばっている選手が何人もいますが、この騒動の行方次第では代表への道が絶たれてしまう選手もいるのだから、これは大きな問題です。


東京オリンピックの代表決定方法はけっこう複雑で、私も正確に把握しないまま、これまでJMSCAの発表を鵜呑みにしてきました。が、この機会にちょっと整理してみました。


まずは原典にあたる必要があります。以下は、IFSCが定めた、オリンピック選手選考システムの規約です。ここに書いてあることを前提にしながら、話を進めていこうと思います。


QUALIFICATION SYSTEM – GAMES OF THE XXXII OLYMPIAD – TOKYO 2020

第32回オリンピック競技大会(2020/東京)選手選考システム(上記の和訳)





東京オリンピックには何人出られるのか

・男女各20人が出場可能
・20人のうち1人は開催国枠
・20人のうち1人は三者委員会招待枠
・ひとつの国から最大2人(男女合わせて最大4人)出場できる


選手数規定の要点は上記のようなところです。


日本は開催国枠として男1人+女1人は出場できることがすでに確定しておりますが、これは各国ごとの上限人数に含まれるので、日本だけ5人以上出場できるということにはなりません。他国と同様、最大で男2人+女2人までです。



「三者委員会招待」というのは詳細が書かれていないのでわかりません。選考に漏れた選手のなかから、最終的にIFSC権限で出場させたい人を1人選ぶということなのかな?




どうやって出場選手を選ぶのか

選手は以下の大会のどれかに出場することが条件になっています。


1)世界選手権(2019年8月/すでに終了)

2)オリンピック予選大会(2019年11月28日~12月1日/フランス・トゥールーズ)

3)大陸別選手権(アフリカ・アジア・ヨーロッパ・パンアメリカン・オセアニアの計5エリアで、2020年2~5月に開催される)


各段階において、以下のように選考方法が定められています(男女とも同じ)。


1)世界選手権……上位7人までに入るとオリンピック出場権を得られる。

2)オリンピック予選大会……世界選手権でオリンピック出場権を得た選手をのぞいたワールドカップランキング上位20人がこの予選大会に出場できる。ここで上位6人に入るとオリンピック出場権を得られる。

3)大陸別選手権……優勝者がオリンピック出場権を得られる。優勝者が1か2ですでに出場権を得ている選手だった場合は、次点選手を繰り上げ。


7+6+5(大陸別選手権優勝者は5人いるので)=計18人
これに開催国枠1人と三者委員会招待枠1人を加えて、計20人が、オリンピック出場選手となります。


注意点としては、各国ごとの上限人数。たとえば世界選手権で7位以内に入っても、同じ国の選手が上位に2人いたらオリンピック出場権は得られません。実際、世界選手権で日本は男子・女子ともにそういう状況になりました。




JMSCAとIFSCの言い分

8月の世界選手権の結果は以下のとおりです。


男子名前
1位楢﨑智亜日本
2位ヤコブ・シューベルトオーストリア
3位リシャット・カイブリンカザフスタン
4位原田 海日本
5位楢﨑明智日本
6位藤井 快日本
7位ミカエル・マエムフランス
8位アレクサンダー・メゴスドイツ
9位ルドビコ・フォッサリイタリア
10位ショーン・マッコールカナダ

女子名前
1位ヤーニャ・ガンブレットスロベニア
2位野口啓代日本
3位ショウナ・コクシーイギリス
4位アレクサンドラ・ミロスラフポーランド
5位野中生萌日本
6位森 秋彩日本
7位伊藤ふたば日本
8位ペトラ・クリングラースイス
9位ブルック・ラブトゥアメリカ
10位ジェシカ・ピルツオーストリア


・上位7人まで
・ただし1国につき2人まで
という規約を文面どおりに当てはめると、この世界選手権でオリンピック出場権を得た選手は以下のようになります。


男子名前出場権
1位楢﨑智亜日本
2位ヤコブ・シューベルトオーストリア
3位リシャット・カイブリンカザフスタン
4位原田 海日本
5位楢﨑明智日本
6位藤井 快日本
7位ミカエル・マエムフランス
8位アレクサンダー・メゴスドイツ
9位ルドビコ・フォッサリイタリア
10位ショーン・マッコールカナダ


女子名前出場権
1位ヤーニャ・ガンブレットスロベニア
2位野口啓代日本
3位ショウナ・コクシーイギリス
4位アレクサンドラ・ミロスラフポーランド
5位野中生萌日本
6位森 秋彩日本
7位伊藤ふたば日本
8位ペトラ・クリングラースイス
9位ブルック・ラブトゥアメリカ
10位ジェシカ・ピルツオーストリア


これが、現在、IFSCが主張している結果です。日本人は男女ともにすでに上限の2人が埋まったので、これで最終決定といいます(JMSCAによれば「新解釈」と呼ばれるもの)。


それに対してJMSCAが主張しているのは、日本人で出場権を得たのは、男子は楢﨑智亜、女子は野口啓代のみで、他はまだ未定だとするもの。


これだけ聞くと、IFSCの言うことのほうに理があるように思えます。


ただし、JMSCAが主張する決定方法は、すでに今年5月に発表されており、それはIFSCも理解していたはず。JMSCAの方法は本来の規約の拡大解釈と読める部分もあるのですが、JMSCAによれば、IFSCと何度も協議を重ねて問題がないことを確認したうえで作成したものといいます。


このJMSCAの決定方法をIFSCが認めていた証拠もあります。




Day 9: I’m going to the Olympics! 🤯 ⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀ This morning could not have gone worse; I slipped twice in speed, had a terrible boulder round, and threw a Hail Mary in Lead. Through events, some uncontrollable by myself, I managed to get enough points to qualify for the Olympics. 😍🔥 ⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀ It feels like a weird dream that I might wake up from at any given second. 🙈 ⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀ I have to take this moment, this post, to thank everyone around me. The support I feel from everyone is nothing short of amazing. My Canadian Team here on the ground (@alannah_yip @allisonvest @jason.holowach @becca_frangos @lucasuchida , the Canadian staff @head.wilson @climbCanada , our wonder Physio @lenlenlemon , all my sponsors listed below, my management team @delve.media , the whole b2ten organization; people know who they are and I appreciate every one of you. ⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀ I have had the dream of going to the Olympics since before I can remember; that becoming a reality now, in the sport of climbing that I love so dearly is just ... unbelievable. ❤️ ⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀ ⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀ ⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀ ⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀ ⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀ @adidasterrex | @scarpana | @joerockheads | @verticalartclimbing | @flashedclimbing | @perfect_descent | @visaca #verticalart #climbing #train #canada #instagood #picoftheday #photooftheday #athlete #igers #amazing #sports #fitspo #gymlife #power #fitfam #adventure #fitness #work #workhard #workout #strength #challenge #follow #ninja #gym #fun #olympics #olympics2020
Sean McColl(@mccollsean)がシェアした投稿 -




これは、男子10位のショーン・マッコールと、女子10位のジェシカ・ピルツが、世界選手権直後に更新したインスタグラム。「オリンピック決まったよ」と報告しています。


IFSCが主張するとおりなら、このふたりはオリンピックの出場権は獲得できていないはず。


つまり、少なくとも世界選手権直後の段階では、原田海と野中生萌の出場権は決定しておらず、JMSCAの主張のとおりに物事は進んでいたのです。




ねじれはどこにあるのか


いったいなぜこんなことになっているのか。


関係者に事情を聞いたわけではないので、ここから先は推論になりますが、問題の核心は「事前協議」の内容にあるのではないでしょうか。


JMSCAは、代表決定方法についてIFSCと協議を重ねて作成したと言っておりますが、そこでどんな話を、だれと、どのような形で行なったのか。そこに今回の問題のカギがあるように思えます。


ひとつ考えられるのは、口頭でのやりとりしかしていなかったのではないかということ。書面等で明確に残していなかったため、IFSCの態度にブレが生じてしまっているのではないか。あるいは、JMSCA側になんらかの誤解などがあった可能性もあります。


【2019/11/3追記】
上記の可能性はほぼないということが判明しました。


ともあれ、こうなった以上、行く末は、スポーツ仲裁裁判所の調停を見守るしかなさそうです。






それにしても、IFSCも、原田・野中が代表決定とあくまで主張するなら、ぬか喜びさせてしまったショーン・マッコールとジェシカ・ピルツへの対応はどうするんでしょうね。ふたりはすでに来年のオリンピックに照準を合わせていて、今月末のオリンピック予選大会の準備などしていないでしょうし。


今後の大会で結果を出してオリンピックに出たいとがんばっていた日本の他の選手も本当に気の毒です。じつはつい数日前、その対象選手のひとりにインタビューしたばかりで、オリンピックへの抱負をいろいろ聞いたところでした。その人がいま何を感じているかと考えると、私自身も気が重いです。


記者会見でJMSCAは「大人の事情で混乱させられ、出られるか出られないかわからない状況になった。選手には申し訳ない」とコメントしたそうです。個人的にこの言葉には、JMSCAの誠意を感じました。選手の情熱が空振りで終わることがないように、解決に全力を尽くしてほしいと願うばかりです。




2019年8月17日土曜日

わかりやすい文章にするためのたった3つの簡単なコツ

あおりタイトルです笑


知り合いとツイッターで法律文のわかりにくさについてやりとりをしていたところ、思いついたことがあったので書いておきます。わかりにくい文章とその改善策についてです。


私が以前勤めていたころの『山と溪谷』編集部では、プロライターはあまり起用せず(起用したくとも登山のプロライターがほとんどいなかった)、登山家や山小屋の人、カメラマンなどに原稿を書いてもらうことがほとんどでした。彼ら彼女らは文章の専門家ではないので、文章にはそれなりに難があります。そこを編集者が手を入れて読みやすく整えるということをしていました。


そんなことを毎月、何年もやっていると、ある一定の傾向が見えてくるもの。文章を書き慣れていない人がやってしまいがちな問題点。


いろいろありますが、もっとも単純かつもっとも頻度が高いものを挙げるとすると、以下の3つになります。


・文章が長い
・語順がおかしい
・接続詞が多い


以下解説します。





文章が長い


”秋の唐松岳はダケカンバやナナカマドの紅葉だけでなく、頚城山塊から南アルプスまで広がる雲海や劔・立山連峰の上空を染めて日本海に沈む太陽、街灯りと満天の星空など秋ならではの素晴らしい光景が期待できる。”


これは実際に私が受け取った生原稿の一文です。途中で「ん?」と思って前に戻って読み返したりしませんでしたか。問題はいくつもあるのだけど、まずは一文が長すぎるのです。


この文章の構造はこのようになっています。


秋の唐松岳は
・ダケカンバやナナカマドの紅葉(だけでなく)
・頚城山塊から南アルプスまで広がる雲海(や)
・劔・立山連峰の上空を染めて日本海に沈む太陽
・街灯りと満天の星空
など秋ならではの素晴らしい光景が
期待できる。


秋の唐松岳には紅葉のほかにも3つの魅力があると言っているわけですね。しかし、「秋の唐松岳は」と始まった文章が結論を言うまでに、4つの要素を入れてしまっているので、読み手はなんの話だったのか途中でわからなくなってしまうのです。


この場合のいちばん簡単な修正法は、文章を短く切ることです。


たとえばこんなふうに。


”秋の唐松岳の魅力は、ダケカンバやナナカマドの紅葉だけにあるわけではない。頚城山塊から南アルプスまで広がる雲海、劔・立山連峰の上空を染めて日本海に沈む太陽、街灯りと満天の星空など、秋ならではの素晴らしい光景も期待できる。”


だいぶ読みやすくなったんじゃないでしょうか。もともとの文章が言葉足らずなので、(の魅力)とか(にあるわけ)などの補足が必要で、後半では、助詞「や」や読点「、」を数カ所調整もしていますが、読みやすくなったもっとも大きな理由は、文章をふたつに分けたことにあります。


一般的に、わかりやすい文章を書くには一文を50字以内にとどめたほうがよいといわれます。これは経験的にもそんな感じかなと思います。作家を目指しているとかでもないかぎり、文章は50字といわず短いほどよいです。長い一文を誤解なく読ませるには技術が必要だからです。


試しに、私がここまで書いてきた一文の平均文字数を数えてみたら、約37字でした。20字台がもっとも多くて9文、次に30字台の6文。それに対して、例に出した原稿の一文は98字。この長さをスルッと読ませるにはそれなりに工夫が必要です。


【まとめ】
ひとつの文章はできるだけ短く!(50字以内が目安)





語順がおかしい


”富士ノ折立からは、剱岳が残雪をいただいた内蔵助カールの後方に顔を出す。”


これはおかしいところたぶんすぐわかると思います。


"富士ノ折立からは、残雪をいただいた内蔵助カールの後方に剱岳が顔を出す。”


こうすればよいわけですよね。簡単な修正ですが、こういうの非常に多いです。


なぜこうなってしまうかというと、書き手の頭のなかには剱岳がもっとも印象的な光景として残っているからです。なので、真っ先に「剱岳が!」と言いたくなってしまう。まずそれを言って落ち着いてから、補足的な状況描写を書くと、上の文のようになってしまうというわけです。


この文章はこういう構造になっています。


(富士ノ折立からは)
・剱岳が
・残雪をいただいた内蔵助カールの後方に
顔を出す


「剱岳が」も「残雪をいただいた内蔵助カールの後方に」も、どちらも「顔を出す」につながります。


こういう場合は、「短い言葉ほど近くに置く」という原則を守るだけで、俄然誤解が少なくなります。「剱岳が」のほうが「残雪をいただいた内蔵助カールの後方に」より文字数が少なく短い。そういう言葉ほど、つなげたい言葉の近くに置く。これ、とても単純な原則ですが効果絶大です。


一方、上の文章がこういう構造だったらどうでしょう。


(富士ノ折立からは)
・残雪をいただいた剱岳が
・内蔵助カールの後方に
顔を出す


もともとの文章では「残雪をいただい」ているのは内蔵助カールですが、今度は剱岳が「残雪をいただい」ている状況を書きたい場合。


1)富士ノ折立からは、残雪をいただいた剱岳が内蔵助カールの後方に顔を出す。

2)富士ノ折立からは、内蔵助カールの後方に残雪をいただいた剱岳が顔を出す。


この場合は1のもともとの語順のほうが明らかに誤解が少ないですよね。誤解が少なくなる理由はいくつかあるのですが、「短い言葉ほど近くに置」いていることはそのひとつであります(短いといってもこの場合はわずか1字ですが。それでも重要です)。


このあたりのことは、本多勝一氏の『日本語の作文技術』という本に非常に詳しくかつわかりやすく載っています。私は学生時代にこの本を読んで、とても影響を受けました。このこと以外にも、わかりやすい文章を書くためのコツが満載なので、激おすすめしておきます。






【まとめ】
長い言葉ほど遠くに、短い言葉ほど近くに置く!





接続詞が多い


「そして」とか「しかし」とか「ところで」とか「だから」とか「したがって」とか「ところが」とか「それから」とか「あるいは」とか「また」とか「なぜなら」とか「すなわち」とか。


接続詞って息つぎみたいなもので、なんとなく使われているケースが多いのです。よくよく考えるとそこに意味はないんだけど、「なんとなく」使うと、「なんとなく」文章がまとまったような気がして、つい使ってしまうんですよね。


これはたくさん使ったからといって文章がわかりにくくなるというわけでは必ずしもないのですが、文章がギクシャクして読みづらくはなります。


とくに個人的に注目しているのは「また」。「これは○○である。また、あれは××である」などと使われるアレです。好きな人はほんとによく使うけれど、これは意味のない接続詞の筆頭格で、経験的に9割の「また」は不要です。「また」を外すことで前後の「てにをは」を整える必要がある場合もありますが、そのまま外してしまっても問題がないことも多いです。そして、「また」を外したほうが、往々にして文章のリズムはよくなります。


たとえばこういう文章。


”花崗岩と砂礫の斜面は、雨後や霜が付いている時は滑りやすいので特に注意が必要だ。また下山時も同様である。”


この原稿を私はどうリライトしたのかなと思って、誌面を見てみたら、こうなっていました。


”花崗岩と砂礫の斜面は、雨後や霜が付いているときは滑りやすいので特に注意が必要だ。下山時も同様である。”


後者のほうがすんなり読めませんか(そうでなかったらすみません)。そもそも前者の「また」は、ほとんど機能してないよね。


「また」には、文章のリズムを悪くするほかに、文章を堅苦しくするという効能もあります。ここで「又」なんて漢字を使えばダブルでその効果が期待できます。クレームや抗議文などで相手を脅かしたいときには多用するといいのかもしれませんが、日常文章では使わないのが吉です。


もちろん、接続詞には使わないとならないものもあります。「しかし」とか逆説の接続詞なんかはその代表格。そのほかにも、文章のリズムを整えるためだけに使いたくなることもあります。私自身が、リズム整えのための接続詞を多用してしまうほうです。


ただし一般的には、接続詞はできるだけ使わないようにしたほうが文章は読みやすく、すっきりするはずです。「できるだけ使わないぞ」と意識すると、使いたくなったときに、文章の意味を通すために別の表現を考えざるを得なくなります。たいていの場合は、ちょっと考えると別の表現が見つかるんですよ。これは文章トレーニングにすごく効果的だと思います。実際、私は他人の文章をリライトすることでこれを毎月繰り返しているうちに、表現の引き出しがすごく増えました。だからおすすめなのです。


接続詞を使わないですむ表現がどう考えても見つからない場合。このときこそが、接続詞を使うべきときなのであります。こういう、ここぞというときに放つ乾坤一擲の接続詞は、逆にすごい切れ味を持ちますので。


【まとめ】
「また」は使用禁止!





****


ところでツイッターにも書いたのですが、「一文が長い」ということでこれまでもっとも印象に残っている文章があります。「号泣議員」として有名になった野々村竜太郎氏のブログなのですが、その長さはまさに超弩級。すごいです、どうぞ。


”特に本日、裁判を受ける義務を果たすために、テレビ局やラジオ局、新聞社、通信社、週刊誌や漫画・アニメ等出版社、インターネット新聞・テレビやブログ・ツイッター・フェイスブック等、フリージャーナリスト等全てのマスコミ、報道機関等に関係される皆様が第一回公判では300人以上も押し掛け、自宅や家族宅の生活圏に近付かないのは勿論、何人たりとも皆様と出会わず撮影されず取材強要されず無事に出廷し帰宅するためにも、是非とも何人たりとも皆様が押し掛け出廷や帰宅の妨げをされませんように、テレビ局やラジオ局、新聞社、通信社、週刊誌や漫画・アニメ等出版社、インターネット新聞・テレビやブログ・ツイッター・フェイスブック等、フリージャーナリスト等全てのマスコミ、報道機関等に関係される皆様に対しまして、コメントや会見は一切致しませんし、建造物侵入等自宅や家族宅の訪問やインターホンを鳴らしたりカメラを操作・名刺や手紙等を投函・待ち伏せ、付きまとい、張り込みや監視する行為等、制作者・著作者・著作権者でございます私のブログや写真、映像、YouTube、Facebook等を無断無許可で転載や引用、紹介等する行為、私や家族を記事や放送等で名誉毀損・信用毀損・侮辱・誹謗中傷等全ての人権侵害や「誤報」・迷惑行為・加害行為、公益・知る権利・報道の自由・公平で公正な「事実や真実」を伝える報道のためでもなく憲法第14条の精神も知らず、主に誹謗中傷や名誉毀損等人権侵害を行うことで出廷前に私や家族を社会的に抹殺することで視聴率・購読数・閲覧数・スポンサー便宜等営利目的や自分達の仕事・報酬のために、資本力や同じ人間の所業ではない常軌を逸した異常な組織的人海戦術に物を言わせることで公平で公正な「事実や真実」を隠蔽したりグレン・ホワイトの実験、ディパヤン・ビスワスやルビー・ドラキアの報告結果等の応用を悪用した編集や情報操作等、事件と無関係の事柄や、裏付け・検証の行われていない公平で公正な「事実や真実」と異なる報道、私を無断無許可で撮影する全ての行為やその撮影された写真や映像を記事や放送で使用する全ての行為、3時間以上にも及ぶ私の会見映像や無断無許可撮影した映像等を私や家族を社会的に抹殺するためにご都合主義に基づいた編集等を施した上で、名誉毀損・信用毀損・侮辱・誹謗中傷等全ての人権侵害と私が思料したり、事件と直接関係ない記事や放送等での使用、私に取材強要する等接触や暴行、話し掛けや強要、追い回しや脅迫などの全ての迷惑加害行為、その取材等の際の音声を記事や放送で使用する全ての行為等を固くお断り申し上げ、ご遠慮されますよう、お願い申し上げます。”



なんと約1100字、一気の長文です。この間、「。」はひとつもありません。これほどの長さの一文には滅多にお目にかかれません(なんですが、判決文とか法的文章には珍しくないんですよね。なんと2000字という一文まであると聞きました。正確な伝達がもっとも必要とされる文章でなぜそうなのかは本当に謎です)。


この文章には「無駄に漢字が多すぎる」という問題もあり、突っ込みどころ満載。リライト素材としては20年に一度級の超大物。これを見つけたときは、ふらっと釣り(ネットサーフィン)に出かけたら、500kgのマグロがかかってしまったような感覚でした。これをわかりやすい文章に直すのは相当に骨が折れますが、リライターとしては腕が鳴るところであります。




2019年7月25日木曜日

登山地図を見るために(だけじゃないけど)機種変更しました




最近、スマホを機種変更しました。ずっと使っていたiPhone SEから、Galaxy A30という機種に。iOSはとても気に入っていたのだけど、のっぴきならぬ事情からAndroidに復帰です。


機種変更の最大理由は画面サイズ。iPhone SEは4インチという、いまどき珍しいほどの小ささ。片手におさまるコンパクトサイズはとても使い勝手がよかったのだけど、だけど……、画面が小さくて見えなぁーーい!(バサーッ!!)


老眼が進んでつらくなってきたのです。年配の方が電車内などでタブレットを使っている理由がわかりました。


新しい機種は、画面サイズ6.4インチ。もういっそのこと、いちばんデカいやつにしてやれと思い、現行品のなかでは最大クラスのGalaxy A30にしました。iPhoneにもXS MAXという画面6.5インチのモデルがあるのですが、いかんせん高すぎる。12万円くらいします。それに対してA30は3万円ほど(UQモバイルで購入)。


画面拡大効果は上の写真を見てもらえば一目瞭然で、地図の見やすさ・情報量が圧倒的。これだけで変えてよかったと思えます。画面の面積比でいえば、A30はSEの2.2倍ほどもあります。すなわち2倍以上の情報が表示できるわけです。山でスマホ地図を見るとき、これまでは狭い窓からのぞきこんでいるような窮屈さを感じていたのですが、だいぶマシになりそうです。


あとは防水機能。山で使うことを考えると、やはり防水性は欲しいです。iPhone SEは防水機能がないので、雨のときに取り出すのは躊躇していました。auとかUQモバイル版のA30はけっこう強力な防水性を備えているので(SIMフリー版は防水防塵機能がないので注意)、雨のときも安心して使えそう。それからホントかどうか知らないけど、防水・防塵機能を備えていると、低温にも強くなると聞いたことがあります。私のSEはバッテリーがへたっていることもあるけど、冬山に持っていくとあっという間に落ちたりして困ってました。A30がどうかはまだわからないけど、冬山でのバッテリー持ちも期待しています。


が、ひとつ問題が。




A30はデカすぎて、いつもスマホを入れているショルダーポーチに入らないのです。




歩行中にもスマホやカメラをすぐ取り出せるショルダーポーチは自分的には必携装備。いくつか持っているのですが、そのどれにも入りませんでした。


そこで、ショップ店頭で実際にA30を片っ端から入れてみて、入るものを探したのだけど、このサイズになると入るものが少ない! 選択肢は実質的に2つくらいに限られました。


最終的に選んだのがこれ。



ミレーのヴァリエポーチというやつ。




今まで使っていた同じくミレーのヴォヤージュパッデッドポーチ(右)と比べると、えらくデカくなってしまった。A30を入れることだけを考えると、もう少しコンパクトなほうがいいのだけど、なにしろ選択肢が少ないのでしかたがない。




デカいぶん、Galaxy A30も余裕で入ります。2ポケットタイプなので、コンパクトカメラも同時に入れられます。エナジーバーなどの行動食なども入りそう。しばらくはこの組み合わせでやってみます。



あ、ちなみにiPhone SEも引退はしてません。LINEモバイルのいちばん安いプランのSIMカードを入れて予備として利用しています。A30はau回線で、LINEモバイルはドコモ回線なので、山での通話可能範囲が補え合える。2台あれば、1~2日の山行ならモバイルバッテリーを待たなくても行けそうなので、わりといい運用方法なのではないかなと思っています。



2019年7月1日月曜日

海外登山技術研究会に登壇しました




先週6月23日、日本山岳・スポーツクライミング協会が開催している「海外登山技術研究会」というイベントに登壇してきました。


このイベントは、澤田実さんが中心となって企画されてきたものですが、5月に亡くなってしまったので、急遽私に代役の依頼がきたというものです。講演的なものは苦手意識があるし、澤田さんの代役というのも正直荷が重いと思ったのですが、話が来たのがイベントまで2週間ちょっとというタイミング。迷っているヒマはないと思い、思い切って即断で引き受けました。


テーマは「無補給登山の可能性」。昨年、トランス・ジャパン・アルプス・レースを無補給で完走した望月将悟さんを主役に、「無補給」なる行為の意義や可能性について掘り下げようというものです。


澤田さんがこのテーマで何を表現しようとしていたのか、正確にはわかりません。が、なんとなく想像できるものはあります。


レースといえど、食料や燃料をすべて自分で持ち運ぶ行為は、まさに登山そのもの。そこに望月さんのような先鋭的なフィジカルを掛け合わせれば、これまでに考えもつかなかったようなことが可能になるのではないか。かつてヨーロッパの山岳スキーレースに刺激を受けて、冬の黒部横断でそれまでの常識を超えたような登山を実践した経験をもつ澤田さんであるからこそ、望月さんのチャレンジに特別な可能性を感じ取ったのではないか……。そういう方向なら話せることもあるだろうと。


そんな基本線に沿って、スライド使いながら30分ほどしゃべりました。詳しい内容は省きますが(トークの情報量ってすごく多くて、文字再現すると30分ほどでも1万字くらいになってしまうのです)、ひとつ、自分でもいいこと言ったなと思うのがこれ。




登山の原初的動機ってこれじゃないかと私は考えています。「行けなかった所に行く」ために、さまざまな技術や登り方を開発・発展させてきた歴史が登山にはあります。


エイドステーションや荷物のデポを前提とした山岳レースは、肉体的パフォーマンスを純粋に追求するには適した場ですが、レースの運営体制やコースが変われば、同じパフォーマンスは発揮できなくなってしまう。一方、デポや他人のサポートを前提としない望月さんの無補給スタイルならば、仮にコースが無人の原野を行く400kmに変わったとしても対応できるわけです。


どんな条件、どんなコンディションが出てきても突破できるような術を身につけることが登山の原初的目的であるとするならば、望月さんが目指したことはまさに登山の源流。


で、重要なことなんですが、源流がよいのは、たんなる懐古趣味とか伝統主義ということではなく、行ける場所の範囲が広がることにあります。だって、他人の助力なしに400kmの山岳コースを6日間で踏破できる能力があるわけですよ。それができるのならば、これまでは思いも付かなかった場所や課題すら視野に入ってくる可能性が広がるのではないかと思うのです。




ーーというようなことを、会場ではしゃべりました。


すると、望月さんは最前列で、「なるほど!」というような顔をしていました。いやいや、あなたのことですよと、ツッコミを入れる場面ですが、望月さんはキラキラした目で他人事のようにうんうんとうなずいているのです。


望月さん、まともに話したのはこのイベントがほぼ初めてでしたが、無邪気というか子どものような人でした。「これやりたい!」「おおーっ! やろうやろう!」という感じ? 「子どものよう」というと失礼にあたるのだとすれば、純粋というか。私がしゃべったような理屈っぽい動機で無補給チャレンジをやったのではなく、ただただ「それは面白そうだ」と感じて無補給をやったというのです。


この感じ、思い当たる人が他にもふたりいます。平山ユージさんと三浦雄一郎さん。彼らは、自分がやりたいと思ったことに一点の曇りももたず、子どものように全力で突き進めるメンタルをもっています。望月さんも同じ人種だった。話していて、ユージさんと三浦さんが思い浮かんでしかたなかった。


この人たちは、理屈抜きに直感で本質を突く能力をもっているところも共通しています。たとえばユージさんのレッジ・トゥ・レッジ。詳しい説明は省きますが、このことって、それまでのクライマーが全員、心のどこかに引っかかっていたことではありながら、見て見ぬふりをしてきたことであるのです。が、ユージさんはビッグウォール経験数回でこのことに気づき、裸の王様を指摘するがごとく、「だってそのほうがよくない?」と、まったくもってストレートにレッジ・トゥ・レッジを実践しました。これは世界のクライミング史に残る意識革命だったと私は思っているのですが、望月さんの無補給トライにも似たようなものを感じます。一流は、理屈抜きに一撃でコトの本質を見抜く能力を持っているのだと。


イベントでもしゃべりましたが、じつはこの無補給思想、トランス・ジャパン・アルプス・レースが始まったころすでにあったのです。




これは、トランス・ジャパン・アルプス・レース創始者である岩瀬幹生さんがレースを始める前、ひとりで日本海~太平洋トライを重ねていた20年くらい前に書いた記録の一節です。


レースが回を重ねるにつれて、途中の山小屋などで食料を補給することはほぼ前提となっていきましたが、創始者が最初に思い描いたのは無補給であったわけです。


「このこと、知ってましたか?」と望月さんに聞いたら、「いや、初めて知りました」と明るく答えました。やはり望月さんは直感で源流に行き着いていたのだ。





慣れないトークショー、しかも急遽代役ということで、かなり緊張して臨みましたが、まあまあしゃべれたかな。会場には私の妻(望月ファン)も来ていたので出来を聞いてみたら「すごく聞きやすかった。見直した」と言っていたので、まあよかったのでしょう。2週間背負っていた肩の荷が下りた気分です。