2019年3月19日火曜日

連載「山岳スーパースター列伝」最終回



雑誌『PEAKS』でやっていた人気連載「山岳スーパースター列伝」が、15日発売の4月号で終了しました。記事冒頭にも書きましたが、終了の理由はネタ切れ。もう紹介できる人がいなくなってしまったというわけです。


連載が始まったのは2013年5月号なので、まる6年間やっていたことになります。フリーになったばかりのころに始まった連載であり、初代の担当編集は、その数カ月前まで私の部下だった臺代裕夢という男でした(こやつ、つい最近、小学館ライトノベル大賞という文学賞で優秀賞を受賞しました!)。「山岳スーパースター列伝」という軽薄なタイトルは編集部がつけたものであり、私ではないのでよろしくお願いします。


連載では1回の休載をはさんで、計71人の登山史上の偉人について書き続けてきました。1回が約1700字あるので、計約12万字。おお~。われながらよく書いたな~。


書くにあたって毎回念頭においていたのは、読者に、偉人の実績よりも人物に興味をもってもらうようにすること。そのために、ダメなところを含めて人間くさいエピソードをできるだけ盛り込むようにしていました。だってすごい実績を教科書的に羅列したところで面白くないですからね。読者の記憶に残らなければ連載の価値はないと思って毎月書いていました。


そのため、71人の人選はそれなりに偏っています。人間くさい面を書こうとすると、私がなんらかの思い入れがある人しか書けないわけです。連載のテーマからすると、エベレスト初登頂者のヒラリーやテンジンなども出てきておかしくないわけですが、結局登場していません。シェルパ枠からは代わりにバブ・チリなんてマニアックな人を登場させたりしていました。


ところで、この連載のもうひとつの主役といっていい存在が、綿谷寛画伯によるイラストです。


画伯は登山をやる人ではありません。なので、連載開始当初は、人物の写真やら道具の説明やら、いろいろ資料をそろえて渡し、どんなイラストを描けば人物のイメージに合うか細かく指示していました。


が、画伯はその指示をことごとく無視して独自のイラストを仕上げてきます。ところがそれが、私がイメージしていたものよりもはるかによいのです。なので私はそのうち、人物の顔写真数枚と、どんな人なのかの簡単な説明1行くらい渡すだけになりました。あとは画伯におまかせしたほうがいいものになるという判断です。


それでも登山を知らないはずの画伯が、しかもイラストと原稿は同時進行だったので本文を読んでいるわけでもないのに、なぜこんなズバリのイメージを描くことができるのか、毎回本当に不思議でした。


最近のいちばんの傑作は、2019年3月号で岩崎元郎さんを取り上げたとき。岩崎さんの背後に「岩崎さ~ん」と呼びかけるハイカーが描かれておりました。こんな小細工、私は指示してませんよ! でも、中高年登山者に絶大な人気を誇った岩崎さんを表現するに、これ以上効果的な描き込みがあるでしょうか!? 画伯はどこでこんな絶妙なニュアンスを知ったのか……。




画伯はもともと『POPEYE』や『MEN'S CLUB』などで活躍していたファッションイラストの巨匠。そのイラストは、だれもが一度は見たことがあるんじゃないかと思います。本来、画伯、画伯となれなれしく呼べる存在ではありません。が、本人のメールアドレスからしてwatatani-gahaku@~なので、もういいんじゃないか(笑)。ということで、編集部との内輪ではつねに「画伯」と呼ばせていただいておりました。


綿谷画伯に描いていただいたおかげで、連載はぐっと格調高いものになったと思っております。画伯こそ真のプロ。そんな尊敬できるイラストレーターとコンビを組ませていただけたことは私の誇りであり、感謝のひと言であります。もう、71枚のイラストだけをまとめて画集を作りたいくらいです。


読者のみなさんもぜひ、画伯のイラストに注目して連載ページを見返してみてください。6年間ありがとうございました。




2019年3月3日日曜日

「私にも登れますか」には答えられません




昔、山と溪谷編集部にいたころに、こういう問い合わせの電話をよく受けた。


「私にも○○山は登れますか」


これは絶対に答えられない質問なんですよ。だって、登れるか登れないかというのは、人によって大きく変わってしまうから。電話をかけてきているのが登山経験豊富な人である場合と初心者とでは、答は180度変わってしまうこともあるわけです。


「140kmのスライダーは私にも打てますか」と聞かれたら、相手がプロ野球選手なら「打てるんじゃないでしょうか」と答えるだろうし、野球素人なら「無理だと思いますよ」と答えますよね。それと同じことなのです。


もちろん、だからといって「わかりません」とひと言で切って捨てるのではなく、電話をかけてきた人の登山経験を聞いたりして、可能性を探る会話はするわけですが、いずれにしろ最終的に結論を提示することはありません。そこで安易に「登れると思いますよ」とか「無理でしょうね」とか言ってしまうほうが、むしろ無責任かと思うのです。


だから七ツ石小屋のケースも、問い合わせをするなら、こう聞くべきなのであります。


× 「アイゼンないけど今週末なら登れますか」

○ 「いま登山道に積雪ありますか」


登れるか登れないかの判断はできないけれど、積雪があるかどうかは客観的事実なので答えられる。その事実をもとに行けるかどうかを判断するのはあくまで本人。というか、本人あるいは近しい人にしかその判断はできない。


がしかし、客観的事実から登れるかどうかを判断できる人は、そもそもこういう質問をしないだろうという矛盾にいま気づきました。ならば百歩譲ってこう聞いてほしい。


「雪山経験○回で、これまで××山とか△△山などに登りました。それくらいの経験で今週末七ツ石山に登ることについてどう思われますか?」


これならば、質問というより相談といった類のことになるので、もう少し実のあることを答えられる余地はあります。


とはいえ、山小屋や雑誌編集部、山岳ガイドなどは発言に責任が伴う立場なので、会ったこともない人に対して確定的なことは言わないし言えません。そこはやっぱりお忘れなくとしかいいようがないモヤモヤした結論になってしまいましたがよろしくお願いします。



2019年2月26日火曜日

統計の読み方には注意しようという話


このような記事を目にしました。登山者が山でどんなカメラを使っているのかということなどを、山と溪谷社がアンケートで調べたというもの。私は登山も写真撮影もどちらも好きなので、これは興味深い。


内容を見てみると、意外な発見がけっこうあります。


たとえば、山でいちばんよく使われているのはコンパクトデジタルカメラだという(38%)。これは意外。いまや山でもスマホで撮影する人が多いだろうと思っていたのだけど、結果は違うようだ。ちなみにスマホの割合は24%で全体の2位。3位が一眼レフで22%。スマホと一眼の差がほとんどないのもびっくり。


撮影したデータの保管について、ダントツの1位(45%)が「パソコンに保存」というのもわりと驚き。みんな意外と几帳面なんだな。


あとは動画。「撮りたいと思わない」という人が45%もいることも、個人的な体感からすると予想外な結果でした。


がしかし、こういう統計とかアンケートって、結果だけ見てパッと判断するのは危険だと常々思っています。どういうアンケートが行なわれているのか、その背景もよく見て考えないと。


そこで目に付いたのが、アンケートの回答者でした。有効回答者数は3156人。これは十分な数といえるでしょう。


問題は性別と年代。男女比は81:19。男性が圧倒的でした。年代については、76%が50歳以上。つまり、このアンケートに答えた人の8割は50歳以上の男性といえるのです(厳密にはそうはいえないのだけど、まあざっくりと)。


登山者全体のなかで、50歳以上の男性が多いことは確かですが、それにしても8割はないでしょう。女性や50歳以下の男性ももっといるよ。


つまりこのアンケート結果は、50歳以上の男性登山者の実態を表したものとはいえるけれど、登山者全体の実態からするとそれなりにズレがあるんじゃないかと。私が「意外な発見」と感じたのは、そのズレのせいじゃないかと思ったのですが、どうなんでしょうかね!?





2019年2月7日木曜日

NumberWebで連載始めました

スマホアプリは山岳遭難の救世主?老舗『山と溪谷』も"推奨"に方針転換!(森山憲一)

登山とクライミングをテーマにしたコラム連載をNumberWebで始めることになりました。


基本的に1カ月に2回のペースで、登山ネタとクライミングネタを交互にやっていく予定です。Numberなのでスポーツ寄りのテーマが多めになるとは思いますが、初回からかなり山っぽいテーマなので、どうなるかは自分でもわかりません。クライミングは純粋スポーツクライミングからときにはアルパイン系ネタまで入ってくるんじゃないかと思います。


このブログでときたま書いていたオピニオンチックな話も、それなりに一般性をもつものはNumberで書くようにするかもしれません。逆にこのブログはNumberでは書けないようなマニアックな話を中心にしたいなと思っています。やたら突っ込んだ長文の道具レビューとか角幡唯介のおちんちんがどうしたとかいう話ですね笑


「こんなテーマ読みたい」などのリクエストがありましたら、コメントなどでお寄せください。ぜひ参考にさせていただきます。


よろしくどうぞ~


2019年1月30日水曜日

クライミングコンペ撮影の勘所










ふと思いついて、ツイートの転載という手抜きエントリーやってみました。すみません。

2019年1月3日木曜日

あけましておめでとうございます2019


昨年はあまりブログを更新できなかったので、今年はもうちょっと頑張りたいと思います。

(写真は丹沢の加入道山です)

2018年11月10日土曜日

角幡唯介、ノンフィクション本大賞受賞


ノンフィクション本大賞2018 - Yahoo!ニュース

角幡唯介が、Yahoo!ニュース本屋大賞「ノンフィクション本大賞」を受賞した。本屋大賞といえば、いまやある意味、芥川賞や直木賞よりも価値がある賞。今年から新設されたノンフィクション部門の大賞第一号が角幡というわけだ。私は角幡が書く文章の大ファンであるので、受賞はとても喜ばしい。


以前、このブログで角幡の文章の魅力について書いたことがある。そちらもぜひ読んでいただきたいのだが、じつは本当に読んでほしいのは、最後に紹介している角幡自身のブログの文章である(タイトルはここには記せない)。


『外道クライマー』書評




実際に会う角幡は、どちらかというと表情の変化がないほうで、しゃべりも訥々としており、あまり切れ者という印象がない。ところが著作から受けるイメージはキレキレであり、そのギャップにとまどう。どちらが角幡の真の姿なんだ。


7年前、角幡が2作目の著作『雪男は向こうからやって来た』を出したときに、『PEAKS』にその紹介記事を書いたことがある。これも角幡の人物と文章のギャップについて書いていた。この文章はいまでも自分的に気に入っていて、埋もれさせるにはもったいないので、PEAKS編集部の許可を得ずにここに再掲します。






<以下再掲>

 もう15年くらい前になるけれど、角幡唯介とクライミングに行ったことがある。先にばらしてしまえば、角幡は大学探検部で私の後輩にあたる。私はすでにOB、角幡は入部して間もないころで、岩場で会ったのが初対面だった。

 このときの印象は「野人のような男だな」という一点につきた。とにかく目つきが鋭い。いまよりやせていて顔つきももっとシャープだったと思う。そんなハングリーむき出しのような風貌が強く印象に残っている。

 そして日本語で会話をした記憶がない。憶えているのは、「ウオッ、ウオッ」という、うなるような相槌だけだ。それだけ聞くとほとんど類人猿のようで、本人には失礼な話だが、でも、自分にとってはそういう印象しかなかったのは本当なのだからしょうがない。

 その後は会う機会はほとんどなく、たまに人伝てに噂を聞く程度だった。しかし伝わってくる話は、やっている活動の内容にしても言動にしても、猪突猛進というイメージのものばかりで、私の第一印象を裏付けるだけだった。行動力は人一倍ありそうだけれど、知的なタイプではないのだろう。だからその後、上級生になってクラブのリーダーに就任したと聞いたときはちょっと意外に感じた。

 角幡は大学を卒業して朝日新聞の記者になった。これにはもっと驚かされた。当時の朝日新聞といえば、日本一入社するのが難しい会社のひとつだ。獣を思わせた肉体派の男が、いったいどうやって入ることができたのか。私にはわからなかった。

 角幡は、朝日新聞に入社する前、破天荒な人物として知られるあるクライマーと、登山経験皆無に近い女性歌手との3人で、ニューギニアまでヨットで渡り、ジャングルを踏破し、トリコーラという標高5000m近い山の北壁を初登攀するということをやっている。後年、ひょんなことからその女性歌手と知り合った私は、壮大な冒険行でありながら、どこか珍道中ともいえるその旅の実態を聞いたことがある。私にとっての角幡像は、エリート記者よりそちらのほうがしっくりくるものがあった。

 そして昨年の『空白の五マイル』である。それを読んで申し訳なく思った。こんなにも緻密で論理的な仕事ができる男だったとは。なにより、まったく非日常なテーマながら、ふつうの読者に刺さる言葉をきちんと選び出し、決してマニアに走らない。そのバランス感覚に本当に感心した。これは野人どころか、かなり頭がキレるやつでないとできない話だ。

 それは今回の本にも共通している。雪男がテーマというと、多くの人は「大丈夫か、こいつ?」と思うにちがいない。安心してほしい。角幡は雪男の信者ではない。むしろ懐疑的なスタンスだ。そんなものにどうしてこれだけ多くの人が惹かれ、人生をかけてまで探そうとするのか。それを元新聞記者らしい多面的な取材と人物描写で説いてくれている。

 昨年、穂高に行ったときに山中で偶然、再会した。久しぶりの角幡は、とてもやさしい笑顔を見せるようになっていて、もちろん日本語もしゃべっていた。しかし体は格闘家のようになっていた。「クマみたいだな」と思った。

 野人からクマ。格が上がったのか下がったのかわからないけれど、少なくとも野人イメージはもう消えた。だから許してくれ、角幡。

<PEAKS 2011年12月号 p.97より>








この『PEAKS』12月号、たまたま別の記事で角幡のインタビューが5ページにわたって掲載されています。当時角幡が住んでいた東長崎のボロアパートで取材が行なわれ、柏倉陽介が撮影した印象的な写真が使われています。そちらも注目です。





↑一瞬混乱するかもしれませんが、私のツイートではなく、ライターの森山「伸也」のツイートです(血縁関係はありません)。穂高で角幡に会ったとき、私はこの伸也くんと一緒だったのです。ちなみに、当該の号に載っているインタビューは伸也くんが書いているものではありません。彼によるインタビューはそれより前、2011年2月号に載っています。




なお、ニューギニア冒険の話は、この本に詳しいです。著者の峠恵子さんが件の「女性歌手」です。この本、冒険界きっての奇書といわれるくらいとんでもない本で、峠さん自身も相当ぶっとんでいます。本を読んでいると、3人のなかで角幡がいちばん常識的な人間に見えるくらいです。





2018年8月23日木曜日

道迷いを防ぐ地図の使い方



8月11日の山の日、八ヶ岳の赤岳天望荘で、ちょっとしたトークショー的なことをやりました。じつは2年前にもやっていて、今回が2回目(前回のテーマは写真撮影のノウハウ)。せっかくスライドまで作ったので、ブログにも置いておこうと思います。




小屋の貼り紙には「地図読み」とありましたが、実際に話したテーマは「山での地図の使い方」。等高線を読んだりコンパスを使ったり以前の、基本中の基本みたいなことにしぼりました。ちょっと基本的すぎてつまらないと言われるかな~と心配もしたのですが、結果としては、それほど退屈することもなく聞いていただけたようでよかったです。


お客さんというか聴衆は、当日、天望荘に宿泊していた方々。トークショーは夕食をはさんで2回やったのですが、どちらも30~40人くらいで、計70人前後でしょうか。当日の宿泊客は180人くらいだったので、半分近くに出席していただけた感じかな。


夏の八ヶ岳って最近あまり行っていなかったのだけど、若い人が多くて驚きました。中心的な年齢層は30代って感じで、しかもカップルで来ているような人が多い。宿泊客も同様で、山小屋にこんなに若い人が泊まっているのは他の山域ではあまり見られない光景。一方で、身につけている道具や歩き方を見ていると初級者っぽい人が多く、「高い山エントリーは八ヶ岳」というイメージはがっちり定着しているのだなと感じました。




地図、持っていますか?

お客さんの登山レベルを測るために、まずはこんなことを聞いてみました。




持っていると答えた人には、どんな地図を持っているかも聞きました。


結果は以下のような具合:

『山と高原地図』などの登山地図……7割
観光マップ的なもの……2割
持っていない……1割


そして25000分の1地形図は、2回約70人中、なんと1人! まあ、夏の八ヶ岳だから、しかも山小屋泊まりだからだとは思いますが、それにしてもたった1人とは。地形図の存在自体を知らない人もけっこういました。少なくとも夏の一般登山においては、地形図というのは存在意義を失いつつあるのだなとあらためて感じた次第であります。


電子地図については、聞くのを忘れました。スマホで地図を見ている人もそこそこいたはずだと思うのですが、うっかりしてました。後悔。





次に聞いたのはこれ。


行動中、地図をどこに携帯しているかということ。


結果は以下のような感じ:

シャツやズボンのポケット……4割
ザックのウエストベルトポケットやショルダーポーチなど……3割
ザックの中……3割


後述するのですが、地図は見たいときにすぐに見られるようにしておくことがとても重要で、歩きながら簡単に取り出せる所に携帯するのは鉄則。ザックの中(雨蓋ポケットの中も同様)というのは論外なのであります。




ちなみに私が入れているのはもっぱらここ。


ザックのショルダーベルトに付けられるポーチの中です。ポーチを使わないときは、シャツの胸ポケットかズボンのサイドポケットに入れてます。ズボンのサイドポケットとは、カーゴポケットのように太もも部分横に設けられたポケットのこと。かさばらない地図ならば、意外と歩行のストレスにはなりません。


私の場合、ポーチはスマホ入れ(ときにはコンパクトデジカメ)がメインの用途なのですが、このミレーのポーチは2ポケット構造になっていて、片方にスマホ、もう片方に地図や行動食などと使い分けられる便利なもの。類似製品があまりなく、気に入ってます。







ザックのウエストベルトポケットももちろんいいんですが、大型ザックをのぞけば、地図を入れるにはやや容量不足で、使いにくい場合が多いかな~


余談ですが、写真に写っている地図は、国土地理院地形図をパソコンでプリントしたものを、ファイントラック・ドライレイヤーのパッケージに入れたものです。パソコンプリントの地形図は濡れや擦れに弱いので、袋に入れる必要があるのですが、ドライレイヤーのパッケージ袋が、サイズといい強度といい、ちょうどいいので愛用しています。ジップロックでもいいのですが、ドライレイヤー袋のほうが耐久性で勝るので繰り返し使えてGood。数年前に買ったものなので、ファイントラックがいまもこのパッケージを使っているか未確認ですが、オススメです。





事前に地図を見ておくことがすべて



さて、ここからが本題。


道迷いを防ぐための基本その1はこれです。「その1」というか、これさえしっかりやっておけば、道迷い対策の半分以上は終了といっていいくらい。もっとも基本であり、もっとも大切なことです。


やることは単純。地図上で、予定のコースを目で追ってみるだけです。



たとえば今回、私は、美濃戸口から入って、美濃戸→赤岳鉱泉→行者小屋→地蔵尾根→というコースで、赤岳天望荘に行きました。帰りは、赤岳→阿弥陀岳→御小屋尾根→美濃戸口というコースで下山です。


このコースを、出かける前に地図上で追ってみるのです。とはいえ、漫然と地図を眺めればよいというわけではありません。地図上を歩いているつもりで、スタートからゴールまでじっくり見ることが大切です。



たとえばこのように。


美濃戸口をスタートして、まずは美濃戸山荘や赤岳山荘のある場所(美濃戸)まで。ここをじっくり見てみると、いろいろなことがわかります。

・美濃戸口から歩き出すと、ほどなくして川を渡る
・美濃戸口から1時間歩くと、美濃戸に着く
・そこまでは車道表記があるので、車も通る道のようだ
・美濃戸には山荘が3軒あって(やまのこ村、赤岳山荘、美濃戸山荘)、駐車場もあるらしい





次の区間、美濃戸から赤岳鉱泉まで。ここでわかることは:

・美濃戸を出たら、道がヘアピンカーブ状に曲がっているところがある(ショートカットもできそうだ)
・50分ほど歩くと、「堰堤広場」という所に着く
・そこで道は二手に分かれ、自分が行くのは左手の道
・堰堤広場から1時間10分歩くと、赤岳鉱泉に着く
・地図の地色がだんだん濃くなっているので、登り傾斜の道であろう
・赤岳鉱泉の標高は2220mであるらしい
・赤岳鉱泉にはテント場もある





次は、赤岳鉱泉から行者小屋まで。

・35分ほど歩くと「中山乗越」という所に着く
・そこからは、「中山展望台」という所に行く道が分岐している
・中山乗越から10分ほどで行者小屋に着く
・行者小屋にはテント場もある
・行者小屋は、四方から登山道が交わる交差点のような場所になっている
・さらに地色が濃くなってきたので、標高もかなり上がっているのだろう





最後、行者小屋から赤岳天望荘まで。

・地蔵尾根という所を1時間25分登ると、「地蔵の頭」に着く
・そこから赤岳天望荘までは5分ほど




――帰りの道は省略しますが、こういうことを全行程にわたって行なっておくのです。予定コースの長さにもよりますが、じっくりやれば、15分くらいはかかると思います。15分かからずに見終わってしまったとしたら、それはたぶん見方が足りていない。腰を落ち着けて、再度集中して、地図に書いてあることを丹念に追ってみてください。現地の風景や登山道のようすを想像しながら行なうとさらによいです。


この作業が終わったら、地図はしまってOK。地図で見たことを無理に記憶する必要はありません。細かいことは忘れてしまっても、大まかなコースイメージが頭の中にできあがっているはずです。これが重要なのです。




行動中も地図をひんぱんに見る


基本その2はこれです。


要するに、行動中もひんぱんに地図を見るクセをつけようということです。トークショーなので、記憶に残りやすいように「30分」と記しましたが、この数字にこだわる必要はないです。地図をちゃんと利用していれば、平均的にそれくらいの頻度で地図を見ることになるはず、という目安と考えていただければ。


歩いているときに、「地図に書いてあったあの分岐はまだかな」とか「なんかへんだな」と感じたら、すぐに地図で確認。これを面倒くさがらずにやるべし。


基本1は、事前に正しいイメージを作ることで、現場でズレたときに「なんかへんだな」という違和感を察知するために必要な作業であり、基本2は、その違和感が気のせいなのか、それとも本当にコースロストしたせいなのかを確認する作業というわけです。


確認の頻度は高ければ高いほどミスの早期発見につながるので、苦にならなければ、30分といわず15分でも5分でもいいです。私は平均的に15分に1回くらい。以前、取材でいっしょに山を歩いたことのあるアドベンチャーレーサーの田中正人さんなんぞは、それこそ15秒に1回くらい見てました(道のないヤブ山でしたが)。


歩きながらでもすぐに取り出せる場所に地図を携帯すべしというのは、このために重要なのです。なにか確認したいことがあっても、地図をザックの中に入れていたら、よほどのことでないかぎり、わざわざザックを下ろして地図を取り出す気にはなりませんよね。「まあ、いいか」と確認しないまま歩き続けることがほとんどだと思います。で、いつの間にか道迷いの泥沼にはまっていく……というのが、よくあるパターンなのです。





やるべきことは以上です


私がトークショーで伝えたかったのは、この2つだけ。あまりにも単純ですが、しかし、これこそが「地図読みの極意」だと私は考えています。


事前に地図を見てコースのイメージを頭に入れておき、
行動中に違和感を感じたらすぐに地図で確認する。


これだけです。


地図読みがうまい人もやっていることは結局これなんです。事前に「ルートプラン」を立てて、行動中に「アジャスト」し続ける。等高線で微妙な傾斜を読み取ったりして、それをより精度高くやっているだけです。


ところが、こんな単純なことでも、これまで私がいっしょに山に行ったことがある人のうち、この2つをやっていた人は3分の1くらいしかいませんでした。私は職業柄、山慣れた人と行くケースが比較的多いと思うのですが、それでも3分の1です。残りの3分の2は、この基本中の基本をやっていませんでした。


仮に、世の登山者の全員がこの2つを実行したとしたら、道迷い遭難は現在の半分になるのではないかと思っています。それくらいの効果は余裕であるはず。それに対して、さまざまな地図読み技術やコンパス技術が道迷い防止に寄与する割合は、せいぜい2割くらいに過ぎません。だれでもできて5割の効果があることと、習得が難しくて2割の効果しかないことのどちらが重要か。


ーーそういうことが、トークショーで伝えたかったことです。





スマホGPSを使おう

が、これだけのことでも、やらない人、できない人はいるだろうとも思っています。


地図読みって、才能があると思います。才能というより、向き不向きというか、好き嫌いというか。地図に向いていない人、どうしても興味がもてない人っています(私の妻とか)。そしてそれは、登山の技術レベルの高低と必ずしも一致はしていなくて、登山がうまい人でも地図読みは下手という人は珍しくありません。


私は地図得意なのですが、考えてみれば、子どものころから地図が好きでした。学校の社会の時間とか、授業聞かずに地図帳をずっと眺めているような子どもでした。今でも、無味乾燥な国土地理院地形図1枚を、飽きることなく30分は余裕で見ていられます。


一方で、天気図はいまだに読めません。天気図から気圧配置を読み取って今後の天気を予想することは、地図読みと同じくらい登山に重要な技術と昔からいわれていますが、なぜか興味が持てず、そのためにいまだに気象のことはよくわからないのです。


地図読みもこういうことなのだろうなと思います。重要だとわかっていても、興味が持てないことにはどうしても取り組むことができない。仕事ならともかく、登山なんてしょせん趣味(私は仕事でもありますが汗)。楽しく感じられないことにやる気が起きない気持ちは、天気図のことを思えば私もよくわかります。




がしかし、やらないことによって生じる問題は解決したい。ならどうするか。


そういう人はGPS(スマホアプリ)に頼ればいいんだと思います。



以前は、GPSに頼るのは現実的な解決策ではなかったので、私も、どんなに地図が苦手な人でも、山に登る以上、上述の2ポイントだけはやってくれというスタンスでした。しかしここ数年、スマホの普及とアプリの発達によって考えを変えました。


これにも書きましたが、登山用のスマホアプリは、いまやカーナビ並みの性能と使いやすさになっています。「道迷い遭難を防ぐ」という観点に立てば、イヤイヤ地図の使い方をマスターしようとするくらいなら、素直にGPSに頼ったほうが、はるかに得られるものは大きいです。実際、地図の読み方がほとんどわからない人でも、スマホアプリを使うだけで、道迷い遭難のリスクは半分になると思います。それくらいの威力は絶対あります。


もはや「地図読み」は終わった技術なのかもしれない


それと、ほとんど指摘されることがないのですが、電子地図にはもうひとつ大きなメリットがあります。老眼にやさしいということです。私も2~3年前から老眼が進んできて、地形図の細かい等高線を読むのがきつくなってきました。薄暗い樹林帯などではなおさらです。その点、電子地図なら拡大が自由自在のうえ、つねにバックライトで照らされているので、暗い場所でも見やすい。これは中高年には見逃せない大きな利点となるはずです。




登山者によく使われているスマホアプリは上の4つが代表的なところでしょうか。「山と高原地図」以外は無料で使えます。それぞれ一長一短ありますが、大差はないようなので、好きなものを使えばいいと思います。

山と高原地図
YAMAP
ヤマレコMAP
ジオグラフィカ


私は「山と高原地図」を使っています。職業柄、山と高原地図は必携資料なので、定額制の「山と高原地図ホーダイ」に入っており、全国の地図が使えるので、ならこれ使うかというだけの理由。ログをとったり地図上でルートを作成したりなどの機能は一切使っておらず、現在地確認に使っているだけです。


山と高原地図アプリの画面。「コレ」と記した青いマークが現在地表示です



ただし、スマホアプリには当然、弱点もあります。最大の問題はバッテリー切れ。地図を読めない人が山中でスマホのバッテリーが切れたら、その瞬間に丸腰状態、無力になるわけですから、バッテリー切れはなんとしても避けなければなりません。



そのためにするべきことがこのふたつ。スマホアプリは、電波圏外でも機器内蔵GPSで作動してくれるので、山中では「機内モード」など、バッテリーを節約する設定にすることをおすすめします。もうひとつは、モバイルバッテリーを持ち歩くこと。見落としがちなのが接続ケーブル。バッテリーは持っているけどケーブル忘れたとか、ケーブルが断線していたなどのトラブルはあり得ます。私はそうしたトラブル防止のために、バッテリーを入れている袋に、ケーブルを常に2本入れておくようにしています。あと、もちろん、スマホやバッテリーの防水にも気を遣う必要がありますね。


以前は、軽くはないモバイルバッテリーをスマホだけのために持ち歩くことには抵抗があったのですが、最近はヘッドランプやデジカメも充電式が増えたので、それらの予備バッテリーも兼ねると考えれば、気にならなくなりました。ただしそれぞれ端子が違う場合はアダプターも忘れずに。詳しくは知らないのですが、電圧等による相性?もあるようなので、無事に充電できるか事前のテストもこれまた忘れずに。


ところで、「機械に頼ると、壊れたりバッテリーが切れたときにどうするんだ」ということが登山では昔からよくいわれます。そう聞くたびにモヤモヤしたものを感じていたのですが、以前、GPSの記事を書いたときに、ジオグラフィカの開発者とツイッターでやりとりしたことがあり、それを通じて、「どうするんだ」に対する反論が私の中では明確に整理されました。











……ここまでで、トークショーで話したことの半分。この後にオマケ的な道迷い防止の小ネタをやりました。しかしえらく長くなってしまったので、そちらは次回にまとめます。それにしてもトークの情報量ってすごいですね。ここまでで30分ほどだったのですが、文字量にするといったい何字になっているのでしょうか。


ところで、私のトークショーとはまったく関係がなく、たんなる偶然なのですが、いま発売中の『山と溪谷』で、読図入門特集をやっています。この特集、これまでになく電子地図に踏み込んだ内容で、画期的といえると思います。








【2018.8.29追記】

こんな記事を発見しました。上に紹介した4つのスマホアプリをかなり詳しく比較しています。


登山用のGPS地図アプリを徹底比較!特徴とおすすめポイントを解説!


さらに、PEAKSの2018年9月号と、山と溪谷の2017年9月号では、実際に山でスマホアプリを使い比べてみた記事が載っています。現場の使い勝手やバッテリー消費のことなど参考になります。




2018年8月2日木曜日

【登山靴レビュー】モンベル・アルパインクルーザー2000



読者還元レビュー第二弾(意味はこの記事冒頭に)。


メーカーから提供された登山用具について、忖度ぬきで正直な感想をレポートします。今回は、モンベルの新作トレッキングブーツ、アルパインクルーザー2000


提供を受けた際は、正直、まったく期待していませんでした。というのも、モンベルの靴というのは、完成度が総じて低くて、いい印象を抱いたことがほとんどなかったからです。ウエアやギアについては、あんなにスキのない製品を作れるのに、靴はどうしてこのレベルなんだろう? と疑問に思っていたくらいです。


が、このブーツは、従来のモンベル靴の印象を一変する意欲作だと感じました。モンベルの靴は明らかに変わった。開発陣の明確な意識変化が伝わってくるようです。見た目はやけに地味なのですが、中身は、今シーズンの目玉ブーツのひとつといってもいいほどの出来です。これはレポートする価値があるだろうと思い、ペンをとった(キーボードを叩く)次第です。




フィット感のよい足型の採用


従来のモンベル靴の最大の欠点は、広すぎる足型にあったと個人的には思っています。そして単に幅広なだけでなく、箱のような形というか、メリハリに欠ける足型でした。人間の足は、複雑な3D形状をしているので、それに忠実に添った足型をしている靴が「フィット感がよい」といわれるわけですが、それに対してモンベルの靴は、長靴的な雑さがありました。


幅の広さは、「幅広が多い」といわれている日本人の足に合わせた結果だとは思うのですが、それにしても広すぎた。幅広の靴は、店頭で履いたときは当たるところがなくてラクに感じるけれど、山を歩くと、足が靴の中でズレて歩きにくい。私は幅広のほうだけど、それでもモンベルの靴は広すぎると感じていました。これがぴったりくる人って、どれだけ足が広いんだろうかと。


が、アルパインクルーザー2000は足型が一変。なにより変わったのは、土踏まずからカカトにかけて。幅を絞り、左右からカカトをしっかり固定。拇指球まわりのワイズは私でも問題ない適度なゆとりを残しつつ、つま先もやや絞って指先の力を引き出す形に。要するに、スポルティバやアゾロに代表される、グラマラスで現代的なイタリアンフィットに変わったのです。


この変化は、じつは昨年から感じておりました。昨年発売されたアプローチシューズ、クラッグホッパーがこの足型でした。「あれ、モンベルにしてはやけにフィット感がいいぞ」と驚いた覚えがあります。この靴、隠れた名作でして、ガイドやクライマーなど、実際に履いた人には総じて評価が高く、私自身も際どい場所での勝負シューズとして愛用しております。モンベル靴の足型変更は、この靴あたりから始まっていたと思われます。


もっさりした鈍重なフィットから、歩行安定感の高い洗練された足型に。これが、まず指摘したいアルパインクルーザー2000の評価ポイントです。





史上最高レベルのフリクション


これがこの靴の最大評価ポイント。おそらく私は、この靴より滑りにくいソールを備えたトレッキングブーツを履いたことはありません。というくらい、この靴のソール、滑らないです。


体感的には、ファイブテンのステルスソールより滑りにくいです。ステルスソールというのは、フリクション性能に定評のあるクライミングシューズ界No.1のソール。それより滑りにくいと感じさせるのだからすごいです。


たとえば、こういう濡れた岩の上。普通のトレッキングブーツなら、ズベッと滑ってしまうところですが、アルパインクルーザーはぐぐっと粘って踏ん張ってくれるのです。実際、ここでは滑りませんでした。



ほかにも、岩やら木の根やら、登山道ではいくつもの滑りポイントに遭遇しますが、明らかに滑りにくい。もちろん限界はありますが、その限界が高いという感じ。






これがその滑らないソール、トレールグリッパー。もう何年も前からモンベルの靴に採用されているので、とくに新機能というわけではなく、知る人は知っていたのでしょうが、自分的には新鮮な驚きでした。この性能はもっと知られるべきなんじゃないの?


ソールパターンに特徴はありませんが、さわってみると、普通のビブラムソールなどよりやわらかい感じがします。粘りがあるというか。このゴム質が、滑りにくさの秘訣であることは間違いないでしょう。


しかし、やわらかいということは、減りが早いと予想されます。クライミングシューズでも、フリクションと耐久性がトレードオフということは常識。履き続けたときにどうなるかはやや疑問でもあります。が、昨年から履いている、同じトレールグリッパーソールを備えたクラッグホッパーが、まだまだ十分ということを考えれば、許容範囲の耐久性は備えていると思われます。


まあともあれ、この爆発的なフリクション性能は一度体感してみる価値はあると思います。この性能があれば、多少耐久性が劣ったとしても、個人的にはOKです。





全体のバランスはイマイチ?

いいことばかり書きましたが、もちろん完璧な靴ではありません。履いていて気になったのは、少しやわらかすぎるように感じられるところ。これはゴムのやわらかさのことではなくて、靴全体の剛性の話。





たとえば、こういう段差で、もう少しカチッと踏ん張ってほしいのですが、実際にはグニャッとヨレてしまうんですよね。とくに問題を感じるのが下りのときで、靴がやわらかすぎて足が疲れるような感覚があります。


これは、硬ければよいのかというと、そう単純な話ではありません。たとえば、私が持っているサロモンのミッドカットブーツは、アルパインクルーザーよりやわらかいですが、同じような登山道を歩いても、「やわらかすぎる」みたいな違和感を覚えることはありません。逆に、アゾロのブーツでもっと硬いものも持っていますが、これもやはり違和感はありません。


たぶん、アルパインクルーザーは、アッパーとソールの剛性バランスがよくないのだと思われます。アッパーは革製で比較的しっかりしているのに対して、シャンクを含めたソール全体が少しやわらかすぎるのでしょう。


このへんは微妙かつ感覚的な話で、私が言っていることが合っているかどうかはわかりません。しかし違和感を覚えたことは事実なので、指摘しておきました。





思うに、靴作りって、感覚的なすりあわせが重要な職人的な世界なのではないでしょうか。大資本メーカーがお金をかけて開発しても、伝統ブランドの靴の完成度になかなかおよばないのは、そこに理由があるんじゃないかと。


余談ですが、7〜8年前だったか、長年スポルティバでクライミングシューズ開発に中心的に携わっていた人がスカルパに移籍した途端、スカルパのクオリティが急上昇し、いまやファイブテン・スポルティバの2強に肩を並べるほどに成長したという事実があります。


このハイテク時代、靴作りって、まだまだこういう職人的・感覚的な部分がものをいう分野のようが気がします。モンベルも、靴メーカーとしては後発の部類。微妙な完成度を磨き上げる部分においては、まだ他メーカーにかなわないんじゃないでしょうか。ザンバランとかローバーの靴って、特別なことはなにも感じないけど、問題もなにも感じないもんね。


まあしかし、問題はあれ、トレールグリッパーソールのフリクション性能は圧倒的な魅力です。滑りにくい登山靴が欲しい人には、自信をもっておすすめできます。一度お試しあれ。




【余談】


私のアルパインクルーザーは、革の質感がちょっと違って見えるかもしれません。これは、ワックスを塗っているからです。裏出し革のブーツ(アルパインクルーザーはヌバック)にワックスを塗るべきかどうかは諸説ありますが、私は塗る派です。撥水性が高まることと、耐久性アップにも役立つような気がしています。


ただし、ワックスを塗ると見た目の印象が大きく変わって重厚な感じになるので、裏出し革の軽快な印象が好きな人は要注意です。



2018年8月1日水曜日

登山用カメラ(E-M1)のフード改造


7月26日~28日に剱岳に行っていました。登ったのは、剱沢~長次郎谷~八ツ峰Ⅵ峰Cフェース剣稜会ルート~八ツ峰~北方稜線~剱岳本峰~剱沢というラウンドコース。疲れた~。


ここのところ、山に行くときはもっぱらオリンパスのE-M1というカメラを使っています。ミラーレスカメラというやつですが、一眼レフに比べて小さく軽く、そのくせ防塵防滴性能はニコン並みに強力といわれ、山カメラとしてはかなりいい感じです。剱もこれで行きました。


メインで使っているキヤノンEOS6Dに比べると、画質面ではやはり劣りますが、重さが半分近くになるのだから文句はいえません。それに劣るといっても、スマホやコンデジよりははるかによく、印刷用途にも使えます。実際、このカメラを現場で使っているプロカメラマンもいます。




合わせるレンズはこれ一択。



ちょっと重く、高いレンズですが、写りがめちゃくちゃによく、もう手放せません。すばらしいレンズです。


が、問題がひとつ。フードの出来がよくないのです。外れやすいとか壊れやすいとか、とかく評判がよくありません。Amazonのレビューも散々です。






個人的にはもっと大きな問題を感じていて、それは、フードが浅すぎること。山で持ち歩いていると、レンズ面を岩とかにヒットさせてしまいそうで安心できない。


私は山でカメラを持ち歩くとき、下の写真のようにたすき掛けにしているのですが、傾斜の強い岩場などを登っていると、けっこう岩にカメラが当たるんですよね。以前、それでレンズ面にキズをつけてしまったこともありました。





なんとかしたいなと思っていたところ、よさそうなものを見つけました。



同じオリンパスの別のレンズ用のフード。レンズ口径が同じなので、自分のレンズにも使えるだろうと買ってみたら、見事ジャストフィット。十分に深くてレンズの保護力も問題なさそうだし、固定方法も改良されていて、これならば外れやすいとかの問題もほぼ起こらなさそう。






こうして見ると深さの違いは歴然。



が、問題はあります。このフードは17mmレンズ用なので、広角端12mmのマイズームレンズに付けると、四隅がケラレるのです。ノー加工でも使えるかな~と淡い期待で買ってみましたが、やっぱりダメでした。


で、少々手を加えました。


画角に干渉する部分をこうやってルーターで削ります。けっこう硬質なプラスチックで、非力なミニルーターだと時間がかかりましたが、ケラレ具合を確認しながら、しこしこ削りました。


ケラレがなくなったところで削りをストップ。これくらいになりました。けっこうギリで止めているので、もう少し削ったほうが安心かもしれませんが、まあ大丈夫でしょう(今のところ問題なし)。





ちょっと手間はかかりましたが、今のところ使用感・安心感ともに申し分なく、使い勝手は大きく向上しました。




剱岳もこのフード装着で行ったのですが、岩にぶつけまくってフードはこのとおり。


旧フードだったら、レンズ面にもキズがつくこともあったかもしれませんが、今回はもちろん無傷。荒っぽく使っても気にならない道具はやはりいいですね。ひと手間かかりますが、12-40mmズーム使っている方にはオススメです。