2022年7月1日金曜日

盗用とか無断転載とか著作権のもろもろ

あるYouTube動画に私が撮影した写真が無断で使われていて、クレームを入れたら動画は削除されたということがありました。こういうことたまにあって、以前もブログ相手にクレーム入れたりしたことがあったな。


私が編集仕事を始めたときに先輩から教えられたことってたくさんあるのだけど、「盗用をしない」というのは、そのなかでもトップクラスに重要なことのひとつでした。他人の文章や写真、イラストなどを無断で使ったことが発覚したら、その人の編集者人生・ライター人生はその時点でほぼ終了するーーというのが、業界の当然の認識だったのです。

しかしこれは出版や新聞、テレビなどあくまでマスコミ業界内の常識であって、一般の人にそこまで厳しい認識は求められていなかったと思います。ところがインターネットの登場によって、現在は1億(世界なら80億)総表現者時代に。すべての人に著作権の知識や認識が求められるようになってしまいました。


著作権というのは非常に難しい概念で、私も基本を理解するまでに10年くらいかかりました。新人に教えるにしても、手を変え品を変え、さまざまな事例を体験させながら、数年かけてようやっと理解してもらえるような代物なのです。

編集部に入ってきたばかりの新人が、記事中の写真すべてをネットでコピった写真で構成していることに校了間際の水際で気づき、深夜にあらゆる人に電話をかけまくって総動員状態で作り替えたりしたこともありました。当の新人にはもちろんキツイお灸をすえましたが、最初は「えっ、ネットからとってきちゃダメなんですか?」と真顔で言ってました。こいつが人一倍ダメだったという可能性もありますが、出版社に入ってくる人でも最初はこんなもんです。


こういう体験があるので、私自身はインターネット上での盗用には比較的寛容なほうだと自認しています。だって1億(もしくは80億)人に著作権のこの難しいルールを守らせるなんて無理だから。大きな問題が生じないかぎりは黙認でいいと思っているし、実際そうしてきたものもたくさんあります。

そもそも、現行の著作権法は時代に合っていないのです。基本的に紙・フィルム時代の表現を想定した内容になっており、これだけ多くの人が毎日大量の発信をし、表現の手段も多岐にわたり、しかもコピーが圧倒的に簡単になった時代にはまったく対応できていないのです。現代のインターネット表現において混乱や矛盾が生じまくってしまうのは当然のこと。


とはいえ、無法状態でいいと思っているわけではなく、個人的には以下のような基準を設け、ここに抵触するものにはクレームを入れるようにしています。

1)表現そのものよりも、明らかに金儲けが目的であるもの

2)著作者や、著作物に関係する人の尊厳を傷つけるもの

3)コピー作品が原作より影響力をもってしまう場合

今回の動画は2に抵触しました。1にも該当する可能性はありますが、そこは実情がわからないので不問。



ところで著作権について話をし始めると、どうしても理屈っぽくなってしまいがちです。「~をしてはいけない」という話ばかりで、「じゃあ、どうすればいいのよ!」という気持ちにもなります。そこで、いちばん重要なポイントをひとつだけあげておきます。


他人が作った表現物を使うときは、作者の許可をとる


これです。

これをやりさえすれば、トラブルを起こしてしまうことはほぼありません。

もちろん手間がかかりますよ。使用許可をくれない人だっているかもしれない。でもそこを怠ると、後々、思わぬトラブルに巻き込まれることがあるってことです。

個人的には、こんな面倒なことをしなくても、もっと気軽にコピー利用ができる新しい時代のルールや法律ができてほしいなと思っています。でも現状そうはなっていないので、最低限のルールは守らないといけない。ましてやプロであるなら(=金をとっているなら)、最低限では全然ダメで、最大限守らないとね。




【おまけ情報】

ここで激しくオススメの本を紹介しておきます。著作権の本を何冊読んでも一向に理解できなかった諸々の事柄が、この本を読んで私はすべて一掃されました。


改訂版 著作権とは何か 文化と創造のゆくえ


著作権の本って、「著作権とは、財産権、人格権、隣接権から構成されており~」なんて説明から始まるものが多いのですが、この本はまったく違います。「アンディ・ウォーホールのキャンベルスープの絵は権利侵害に当たるのか」とか「マッド・アマノのコラージュは著作権侵害に当たるのか」など、実際に問題になった実例をもとに、著作権なるものの勘所をじつにわかりやすく面白く解説してくれています。

なにより私が目を開かされたのは、著作権法の「真の目的」。著作権というと、著作者の権利を守ることばかりが注目されますが、法律の真の目的はそこではなく、創作行為をより活発にすることにあるのだというのです。パクられ放題の世の中だと、バカバカしくなって創作などする人がいなくなってしまうので、そうならないために著作者の権利を守る。順番が違うのです。

この根っこを理解させてくれるところが、この本の最大の価値かなと思います。ここさえわかっていれば、あらゆる裁判の判例もなぜそういう判断になるのか概ね理解できるようになるし、自分の身の回りの事例もこの根っこから延長して判断できるように私はなりました。

私はこの旧版を持っていて、編集部の新人に著作権について教えるとき、まずはこれを読めといつも推薦していたのですが、今本棚を探したら見つからない。だれかに貸したまま借りパクになっていると思われます。

とにかく、ここまで読んできて、著作権に興味をもった人には、この本を読むことを超絶オススメします!


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