2022年6月9日木曜日

山のテント指定地はだれが指定しているのか


山に行くと、多くの人気山域ではテントを張る場所が決められていて、そこは「テント指定地」などと呼ばれています。


それはだれが「指定」しているのか?

山小屋でしょうと考える人が多いかもしれないが、違います。山小屋は指定地の管理・運営を委託されているだけで、指定の主体ではないのです。


ではだれが?

これがよくわからないのです。25年も山岳メディアに携わっていながら、ここについては私も詳しいことをほとんど知らない。それは私だけではなくて、山と溪谷にしろ岳人にしろPEAKSにしろ日本山岳・スポーツクライミング協会にしろ日本山岳ガイド協会にしろ、テント指定地の全貌を把握している人っていないんじゃないだろうか。

なぜ知らないのかというと、知る必要がなかったから。テント指定地というのは、多くの場合、山小屋の付随業務的にゆるやかに管理されてきたし、利用料も1人500円程度と安いもの。そこに義務や権利を意識させるようなものではなかったからです。


ところが最近はそれも変わってきました。コロナのせいで利用料は急騰。1人2000円なんてところも現れています。さらにはSNSの影響。「闇テン」なんて言葉が登場したように、指定地に張らないヤツは登山者失格という空気も醸成されてきました。

となると、そもそもの指定を行なっている責任主体はだれなんだ、という疑問が生じてくるのも必然。私は生じました。


そこで調べてみましたが、仕事の片手間にちょっと調べてみただけではまったくわからん! 全国の指定地一覧表などがあるわけではなく、指定の主体も事業執行の主体もわからない。断片的な情報が集まってくるだけで、全貌がわからないのだ。

どうもこれは登山道と同じで、慣習と縦割り行政と無関心が複雑にからみ合った世界で、そんな簡単にわかるものではなさそうだ。

ということで、断片的な情報をここに溜めていくことで、気長に調べていくことにしました。新たなことがわかり次第ここに載せていく更新型の記事にするので、なにかご存知の方はぜひお知らせください。下のコメント欄でもいいですし、ここでもかまいません。



【6月11日追記】

どうも以下のようなことなのではないか……というところまで考察が進んできました。合ってるかどうかはまだわかりません。

1)テント場ができる(戦前)

2)林野庁が事後承認(戦前~戦後)

3)環境庁ができてそちらに指定権限移管(1970年代以降)

4)以降も実質的業務は土地所有者の林野庁が所管

5)国有林外に作られたテント場の管理状況は場所によってまちまち



日本の国立公園(環境省)

各公園のページに「公園計画書」という資料があり、野営場についての記載があることが多い


中部山岳国立公園(北アルプス)の公園計画書(PDF/環境省)

4ページと6ページ、および104ページ以降に野営場の一覧あり


中央アルプス国定公園の公園計画書案(PDF/環境省)

50ページ以降に野営場の一覧あり


■林野庁のコメント

森山が公式ホームページの問合せコーナーから質問したところ、以下のような回答でした。

「南アルプス、北アルプスなどの国立公園、国定公園に指定されている場所では、自然公園法を所管する環境省の所管となります。その他の場所でのキャンプ場につきましては、所有者(地方自治体、個人など)あるいは管理者が設置しているものと思われます。国有林では林野庁がキャンプ場を設置し、管理、整備を行っています。」


全国国有林地図

膨大な数のPDFがリンクされており、見るのはめちゃくちゃ大変


■北アルプスのある山小屋

テント場についての窓口は林野庁であると(森山が)聞いたことがあります


■関東近郊のある山小屋

自然公園法にはこれまでテント場の指定という条項がなく、テント場は慣例によって運営管理されていたが、近々、なんらかのかたちで明文化する等の議論が予定されているとのこと。



3 件のコメント:

  1. 登山に興味はあるが、登山をする人だけが知っているルールがあり、それを破ると袋叩きにされそうな風潮があります(個人の感想)。適当な場所にテントを張ってはいけないとか、一般の人はだれも知らないと思う。キャンプも同様。なので、このあたりのローカルルールとその正否をまとめた書籍を出せば売れると思う。

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  2. 指定地以外でテントを貼ってはいけない、ロープ内に入ってはいけない等はマイナールールではなく自然保護の為に法律に基づいて定められたものです。 近年なぜか自然保護という基本的な事を理解できず自己の欲求と自由を最優先とする登山者が一部ですが増えたように思います。国も国立公園や国定公園の管理を曖昧にしている事も一因かと感じます。アメリカ等のようにレンジャーによる管理や取り締まりの強化をしないと日本のキャパシティの小さな自然はアッという間に消えてしまう事でしょう。

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  3. 北アルプスの朝日岳から雪倉を縦走しようとすると朝日小屋か朝日小屋が管理するテント場を利用せざるを得ないのですが、コロナ下で朝日小屋が営業停止しました。
    白馬の稜線などに張り紙が有り、テント場も閉鎖なので立ち入るな(朝日岳方面に)と書かれていました。
    営業停止は自由ですが、なぜその山域に立ち入るななどと山小屋の主人が言えるのか?バカバカしい限りです。
    そもそも朝日小屋は冬季休業する小屋です。どこのテント場でも冬季休業中はフリーではれます。
    朝日小屋の主人の様な(俺様の山)的な勘違い野郎(朝日小屋は女性主人)への対応の為にも、幕営指定地について明確にして欲しいですね。

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