2015年5月26日火曜日

すごいクライミングガイドブックができたぞ


4月20日に瑞牆山のクライミングガイドブックが発売されました。刊行元はPUMPというクライミングジム。


一読衝撃。よくぞまあここまで調べたものだと。瑞牆山にあるクライミングルートは全部で600本以上。2年間かけてそのほとんどを登り直して情報をまとめあげたそうです。上下巻に分かれていて、合わせると500ページ以上。すさまじいボリュームです。


ふたつめの衝撃は、これを作ったのが本の製作未経験の人であること(経験者の助力は受けていますが)。しかし見てもらえばわかりますが、本の構成やデザインに素人くささはなく、内容の詳しさと正確性は出版社製の本をはるかに上回っています。


その首謀者&著者であるPUMPの代表・内藤直也さんに製作の裏側を聞く機会を得ました。詳しくは6月4日発売の『ROCK & SNOW』を読んでほしいのですが、そりゃあもう刺激を受けました。


・ボリューム(体裁やページ数)は最初に決めない
・聞き書きではなく、現地に自ら足を運んで調査
・それに100日以上かける
・500ページを3カ月で書き上げた
・ルート図も自分で描く
・オンデマンドで現物を一回作ってから広告営業する


どれも出版社にはなかなかできない話です。でも全部まっとうな本作りの方法と思えました(執筆のスピードは異常ですが)。


考えてみると、私がここ一、二年、中身も価格もろくに見ずに即決で買った本は、出版社ではないところが出しているものが多いです。
これとか
これとか
これとか
これ
どれも5000円前後とかの高額な本です。でも値段は関係ないんです。「これは絶対に手元に置いておきたい」という圧倒的なパワーと熱があるのです。


瑞牆のガイドブックにも、内藤さんの常軌を逸した(という表現がふさわしい)情熱が注がれています。そんな本がつまらないわけがないのです。


本作りに携わるものとして、内藤さんの話は刺激に満ちていました。出版社出身者としてがんばらなきゃなと思うと同時に、襟を正さねばとも。


インタビューは↓に載る予定です。ぜひ読んでみてください!


2015年5月7日木曜日

ゴールデンウイークの小川山

5日・6日はクライミングのメッカ・小川山に行っていました。
どちらも快晴で、この時期の小川山は最高です。

美しい森。



最高のキャンプ場。


星空のキャンプ場。


”蜘蛛の糸”
このアングルの写真はめずらしいはず。

2015年5月4日月曜日

登山雑誌の「タイアップ」(1)

近ごろ「ネイティブアド」という言葉をよく聞きます。
要は、広告っぽく見えず、前後の記事や流れに「自然になじんだ」広告ということらしい。
これがインターネット上で熱い議論になっています。


まずはこんな意見。
ネイティブアドよ、死語になれ。

これに対する反論的なもの。
男・徳力基彦、ネイティブ広告の時代の勘違い野郎共に物申す

「インターネット広告推進協議会」というところがあって、そこが一定のガイドラインを作ろうという動きがあるそうですが、なかなか利害は一致しないようです。
「ネイティブ広告」の推奨規定、JIAAが新たに策定


僕は主に紙媒体で仕事をしているのだけど、「他人事ではないな」と注目しています。
雑誌でもよくある「タイアップ記事」というのは、要はネイティブアドだからです。


ここ10年くらい、登山雑誌でもメーカーなどがお金を出して特定の商品のPRを目的とした記事が増えました。
それを「タイアップ記事」と呼んでいます。
15年前は登山雑誌にはほとんどなかったのだけど、10年くらい前からどんどん増えています。
そして一般記事との「なじみ具合」もどんどん進んでいるような気がします。


で、上のリンクなどで議論されているのは、そういう記事には「PR」とか「広告」というクレジットを明示すべきか否かということなのですが、こと登山雑誌ではそうしたクレジットが入っているものは見た記憶がありません。
僕のようなプロ(という言い方もなんですが)が見るとだいたい「ああ、これはタイアップだな」とわかるのですが、なかには「ちょっとわからない」というものもあります。
内容や文体から「タイアップくさい」と思えるのだけど、「ちがうかもしれない」という微妙なものもあるわけです。
今の時代、一般読者もそこはけっこう見破っているんじゃないかとは思うのですが。


この問題に関しては僕も意見はあるのですが、それ以前に、ネット上の議論を見ていて思ったのは、「うらやましい」ということでした。


なにがうらやましいかというと、ネットがです。
雑誌でも週刊誌や経済誌は「PR」クレジットを入れることが定着しているけれど、趣味系の雑誌にはそんなガイドラインはほとんどありません。女性誌なんてタイアップの総本山みたいな存在だけどなにかあるんでしょうか。
雑誌はそんな感じで、業界的・統一的な議論が巻き起こる機運がほとんどありません。
出版業界や登山界ってのは良くも悪くも個人主義が強くて、横断的な議論をしようとか知識やノウハウの共有をしようというムードがすごく薄い世界なんですよね。
それはつまらないと個人的には思っていて、だから、業界あげて熱く議論を戦わせるネットがうらやましいと感じたわけです。


この流れはそのうち雑誌にもおよんでくるはずだし、無関係ではいられないという危機感に近い思いもあって、出版界も考えておく必要があると思っているのです。


ついては自分の意見についても書いておこうと思ったんですが、長くなりそうなので次回に。