2015年10月14日水曜日

佐藤裕介インタビュー


15日発売の『岳人』に、佐藤裕介のインタビュー記事を書きました。
岳人がモンベル(正確にはネイチュアエンタープライズ)の経営に移ってから初めてお話しをいただき、自分のスケジュール的にはかなりきびしいときだったのですが、テーマが佐藤裕介と聞き、これはなんとかしなくてはと少し無理をして引き受けてしまいました。


佐藤くんに初めて会ったのは10年くらい前。
『ROCK & SNOW』の企画で行なわれた座談会の席でした。
「注目の若手クライマー」という感じで、各所で少しずつ名前を聞き始めたころでした。


座談会では、そののんびりした話し方とは裏腹に、クライミングに対する意見は非常に鋭く、すでに独自のクライミング観を持っているようでした。
「これは掘り出し物だ」と思いながら帰ったものです。


その後は、かの「ギリギリボーイズ」の一員としても活躍。
あっという間に、日本のアルパインクライミングのトップになっていきました。


彼の魅力は、無尽蔵のモチベーションと抜群の安定感。
これだけクライミングに入れ込み続けて飽きない人に会ったのは山野井泰史さん以来です。
そして登りが非常に華麗。軽やかで、どんな厳しいところでも余裕がありかつ正確。
フィジカルなクライミングの才能があるだけでなく、鋭く危険を察知する動物的な嗅覚もあるように感じます。
まさに「クライミングの才能の塊」という感じです。


昨年から山岳ガイドになったので、記事ではその話を中心に書いています。
取材は、瑞牆山で実際のガイドクライミングに同行させてもらって行ないました。
「いちばんガイドになりそうにない男」と言われ、私もそう思っていたのですが、意外や合っているのかもしれないというのが感想です。


取材では、2年前の「那智の滝事件」など話しにくいこともあえて突っ込んで聞きました。
現在の佐藤裕介を語るには避けて通れない話だと思ったからです。
逃げずにちゃんと答えてくれた佐藤くんに感謝です。
昔から疑問だった家族のことも聞きました。
ここは傑作なので、記事でぜひお読みください。


私は思い入れのあるテーマほど文章が書けなくなってしまうタイプで、
この記事も書き始めてみるとどうにもノリが出ず、3分の2くらい書いた原稿を思い切って全ボツにして一から書き直したりしました。
あっさり書けるだろうと思って引き受けた話だったんですが、意外と苦労してしまいました。
そのぶん、最終的には納得のいくかたちになったと思います。


ちなみに写真も私です。
けっこう自信作だったので、大きく使ってくれた編集部に感謝。
2007年に撮影した錫杖岳の写真もついに日の目を見ることができました。
(この撮影が、私がクライミング撮影に興味をもったきっかけでした)


これまで幾度もインタビューを受けてきた佐藤くんですが、
未出(のはず)の話もたくさん入っています。
ぜひ読んでみてください。



【ボツ写真】


















行動食はいつもタッパーに入れた弁当だそうです。休憩のたびにこれをちょこちょこ食べてました。




2015年10月8日木曜日

日本のクライミングの歴史の扉が開けられる



モアイフェース開拓記①


「瑞牆ガイドブック管理人」が言うとおりのすさまじいクライミングが瑞牆で行なわれています。「モアイフェース開拓記」を読んでいただければわかるのですが、これまでの日本のクライミングの次元を2つか3つすっ飛ばしたようなトライです。


なにはともあれ、この熱すぎるブログを読んでみてください。
クライミングを知らない人はわけがわからないかもしれませんが、どうしようもない熱い思いだけは伝わってくると思います。


私の知り合いがこれを読んで、
「たのもしい若者がいるのですね」
と、まるでおばあさんのようなコメントをくれました。
でも、私もまったく同感なのです。
このような熱い若者がいるのなら日本の未来は明るいと。


幸いにも私、これのファーストレッドポイントトライを見ることができました。
たまたま近くにいて、しかも核心部がほとんど全部見える位置にいたのです。


一連の核心部は、ノープロテクションで小さな結晶のようなホールド頼りに進んでいくライン。
核心部を通過中は獣のように吠え続け、それは瑞牆の森中に響き渡るようでした。
フェイスブックには「火を噴くようなクライミング」と書きましたが、まさにそんな感じ。
最後、ミスして大墜落してしまったのですが、人のクライミングを見て心が震えたのはほんとうに久しぶりでした。


このたびめでたくルートを完登。
しかし岩峰の頂上まではまだ2ピッチあって、
そこはさらに難しくなるというのです。

「骨は折れても心は折れないよう頑張らねば。」

致命的なケガをしない範囲でギリギリの線を攻めていってほしい……と思います。



























ファーストトライのときの写真。ここですでに5〜6m?のランナウト。見ているこちらもドキドキものでした。


2015年10月4日日曜日

『Fall Line』に記事書きました


写真は私の本棚のなかで「コア・ゾーン」と呼ばれている箇所です。
要するに、クライミングを中心としたコアスポーツの本の置き場というわけです。


その一角にバックカントリーコーナーがありまして、
そこに『Fall Line』という雑誌が十数冊並んでいます。
最初に買ったのは2004年。
基本年1回刊なので、コツコツ集めて十数冊になりました。
これは必ずしも資料というわけではなく、趣味です、趣味。
とにかく美しい雑誌で、そのファンなのです。


このたび、その雑誌に記事を書かせていただきました。
雑誌に自分の文章が載ったり名前が出たりしても何も感じなくなって久しいですが、
『Fall Line』に載るというのは特別な感慨があります。
というわけで、ここで自慢するものであります。



書いたのはアウトドアメーカー「パタゴニア」の環境理念について。
なかなか重たいテーマで苦労しましたが、6000字書いております。
めちゃめちゃ凝った年表も作りました。


記事冒頭の写真は、1972年に出た伝説のシュイナード・イクイップメント第一号カタログ(の復刻)。
写真も自分で撮ったのですが、カラビナは私物のシュイナード・イクイップメント製。
カタログのページを押さえるためにふと思いついて置いてみたところ、絵的にも決まりました。


内容からするとカラビナよりスリングチョックのほうが合っているんですが、
さすがにそれは持っていないし、ページができあがってから気づいてしまったので、
持っている人を探す時間もありませんでした。
内容だけでなく、形とか色合い的にもいいアクセントになったはずなんだけどなあ。
それだけが残念。


ところで、冒頭のコア・ゾーンの写真の真ん中あたりに
「95スキーマップル東日本」という本が写っています。
スキー場のガイドブックなのですが、これはすさまじい本です。
どうすさまじいのかはひとことで説明するのが困難です。
ジャンルは違いますが、私のガイドブック作りのベンチマークとなっているのがこの本です。
とはいえ、到底このクオリティにかなうものは作れたためしがありません。
もう二度とこのレベルのガイドブックは出ないのではないかとさえ思います。
この本を作ったのは寺倉力さんという編集者兼ライター。
じつは『Fall Line』のメイン編集者でもあるのです。
雑誌にしろガイドブックにしろ、寺倉さんのクオリティに追いつくことが私の目標でもあります。


さてそのFall Lineは昨日3日発売。
ぜひ見てください!







2015年9月19日土曜日

剱岳北方稜線



先日発売されたばかりのPEAKS10月号に、高橋庄太郎さんと共同執筆のかたちで剱岳北方稜線の記事を書きました。
庄太郎さんとは北アルプスの難ルートをよくいっしょに行っていて、
2009年の西穂高~奥穂高、2010年の槍ヶ岳北鎌尾根に続いて、これで三部作完成。


記事は計10ページ。ルートガイドや装備計画なども細かくやった甲斐もあり、いまのところ周囲では評判がよく、「面白かった」とか「オレも行きたい」という声を多く聞くので、記事の補足的情報を書いておきます。



アプローチの立山雷鳥平。行ったのは去年の9月27日~29日。去年は紅葉が早めで、9月27日でほぼピークって感じでした。いまのところ今年も早そうだな。




いきなり飛んで剱岳山頂。誌面には登場しなかった亀田正人カメラマンです。こういうハード系の撮影では現在のところ彼か杉村航の独壇場。でもギャラは変わらないのでかわいそう。山の取材もコースの難易度に応じた危険手当とか特殊技術料とかあればいいのに。




剱山頂から最初のピーク、長次郎ノ頭。遠目には岩壁のように見えて登れんのかな?と思えるのだけど、赤線のようにピークを巻くルートがとれる。2mくらい垂直の箇所があるのだけど、強引に行っちゃえるし、残置のロープもあるので問題なし。




長次郎ノ頭を越えると、こんな感じのギザギザの稜線を行く。といっても稜線上を歩くところはほとんどなく(ギザギザすぎて歩くの困難)、終始基本的に写真のように長次郎谷側(東側)を巻くように歩いていく。ちなみにこのすぐ先が、2年前にカメラマン新井和也が事故死したところ。私にとっては一生忘れられない場所でもあります。




ここが悪名高い池ノ谷ガリー。ガラガラで一歩踏むごとに崩れるような感じ。上から後続者が来たらちょっとイヤな感じだ。




池ノ谷ガリー全景。こうして見るとすごい傾斜に見えるな。




池ノ谷ガリーを下りきったところが三ノ窓。こんなふうにテントスペースが数カ所あって、ビバークするならここ。ただし水はないよ。




三ノ窓から西側をのぞき込むと、これまた悪名高い池ノ谷左俣。ものすごいV字谷だ。




三ノ窓からは小窓ノ王というピークに向かって登り返していく。このピークがまた長次郎ノ頭以上に威圧的に見えるのだけど、赤線のように絶妙なルートで登っていくことができる。通称「発射台」といわれているところ。まさにルートファインディングの妙を感じることができるところで、こういうの大好き。




発射台も遠目にはすごい傾斜に見えるのだけど、取り付いてみるとこんな感じで、意外と苦労なく登れてしまうのです。



亀田撮影

小窓ノ王を越えると問題の雪渓トラバース。このコース中いちばんヤバいところだと思います。私たちが行ったときは雪渓がここまで小さくなり、しかも先行者のトレースががっちり残っていたので、ノーアイゼンでも通過できました。7月とか8月だったら雪渓の幅がもっと広く、しかも数カ所出てくるらしいので、アイゼン装着+アンザイレンは必須だと思います。ピッケルも持つべきでしょうね。

ちなみにこのときは、この雪渓用に20mロープと170gという超軽量簡易ハーネス(倒産してしまったダックス製。類似商品がなくて重宝してたのに涙)、スリングとカラビナ数個ずつを持っていきましたが、結果的に使わずじまいでした。

ヤバかったらロープを使うつもりだったんだけど、支点探しはちょっと苦労するかも。確保支点に使える岩とか木とかあまりいいものがないのです。180cmとか240cmとかの細くて長めのスリングを持っていけば、大きな岩に無理やり巻いて使うこともできるかもしれないけれど、いずれにしろ工夫が必要です。各人がピッケルを持っていれば、雪渓に刺して支点にするのがベストかと思います。




小窓まで来ればもうひと安心。ここは本当にのんびりできる平和な場所です。




小窓雪渓。ここを下ります。ご覧のとおりの傾斜なので、アイゼンはなくても大して問題はないです。



亀田撮影

小窓からはできれば池ノ平山を通って池ノ平小屋まで行きたいと目論んでおりました。通常は雪渓から行きますが、ライン的には池ノ平山経由のほうが尾根通しでルートを完結できて美しい。でも小窓から見上げる池ノ平山は思ったより傾斜が強くてヤブでも苦労しそうなのでやめました。早く池ノ平小屋に着いてビールを飲みたいという誘惑に負けたのです。




小窓雪渓自体は歩きやすいのですが、問題はここ。雪渓を離れて左岸の登山道に入るのですが、この入り口がわかりにくい! 赤ペンキで●とか「上り口」とか岩に書いてあるのですが、ガスが出ていたりしたら見つけるのは至難と思われます。ひとつの目安は写真奥に見える滝。これが見えてきたら左岸にとにかく注意だ!




雪渓から登山道に移るところ。




翌朝、池ノ平小屋付近から見た池ノ平山。池ノ平小屋からは黒部ダムに下山するだけなのですが、庄太郎さんは早朝、「ちょっと池ノ平山行ってきます」と言ってここを登っていきました。「すぐ追いつくから先行ってて」というので、私と亀田は先に下りました。「すぐ追いつくから」といっても、池ノ平山まで往復のコースタイムは約2時間。プラス2時間は通常ならなかなか追いつけない差になるのですが、本当にすぐ追いついてきました。

庄太郎さんはとにかく歩くのが速くて、年齢的には私と3つしか違わないのだけど、体力的には3倍くらいありそうです。プロフィールによく「年間山行日数100日を超える」とか書いているけど、それは本当で、とにかくちょっとでも時間があれば山に行っているという男なのです。北方稜線みたいなルートはスピードが上がらないのでいいのだけど、普通の登山道をいっしょに歩くとついていくのが大変よ!




朝はけっこう寒くて、薄く霜がおりていました。




ハシゴ谷乗越に立つと、山に囲まれたスタジアムのような内蔵助平がきれいに見えました。あとふたがんばりくらいで黒部ダムだ。





ということで山行は終了。
しかし誌面にも書いたのだけど、剱岳北方稜線というのは長大な尾根で、私たちが歩いたコースはそのほんのさわりでしかないのです。地図上で見るとこんな感じ(下のほうのちょろっとした赤線)。





一方、北方稜線全線となるとこんなに長いのです。


このほとんどの区間は登山道がなく、踏破はきわめて困難なものになります。


しかしつい最近、この全線踏破の記録がパタゴニアのブログに載りました。
だれだ、そんな酔狂なことをやったのは、と思ったら、知ってる人でした。
加藤直之、谷口けい、上田幸雄の3人。
みんなツヨツヨのクライマーなのですが、ちょっと普通じゃないこともよくやる人たちです。
1週間ヤブこぎを続けるようなこんな登山、普通の人はやりません。
40代の大人3人がこんなバカげた登山をやってくれるなんて。
こういう冒険心というか遊び心、本当に尊敬します。彼らはすごい。






2015年9月6日日曜日

登れるかどうかわからない山は面白い




『岳人』9月号を読んでいて、いたく共感したフレーズがあったのでメモ。


未知未踏のものを登ることほど最高なことはない。未知未踏というのは、それが登れるのかどうかすら、わからない。答えがあるかわからない問題を解くようなものだ。
「島に残された未知未踏を登る」小阪健一郎・文


「答えがあるかどうかわからない問題を解くようなもの」


これですよ、これ。
行く手に何が出てくるかわからない山登りというのは面白い。
それこそが山登りの最大の面白さなんだと思う(つい最近も似たようなこと書いたな……)。


とくに沢登りというのはこの面白さを最も端的に味わえる登山形態なのだけど、
それを最大限に体感するために、わざとルートの下調べをしないで行く人もいるくらい。
バカバカしいなと思いつつ、気持ちは十分わかるのです。


大昔、アフリカのジャングルで未踏の岩塔を登ったことがあります。
先行きに何が出てくるかわからず、そもそも登れるのかもわからない。
過去に人間が通ったことがないところを行くというのは、ものすごく怖いことで、胸が締め付けられるようなプレッシャーを感じながら登っていました。





しかしそれだけに、登れたときの感動は、ほかの山登りの100倍は大きかったことを憶えています。
そして、初登という行為がいかに大変か、そして第二登とは天と地ほどの差がある行為であることも身をもって理解したのでした。


私たちが登った岩塔も、岳人の記事にある離島の岩や滝も、未踏とはいえ一般的に見ればまあチンケっちゃチンケですよ。
どうでもいいような重箱の隅つつきといえなくもありません。
でも、この記事を書いた小阪さんという人は、未踏の場所を行く最高の面白さを知っているのだと思います。
山登りに求めているものが私と同じ感じで、好みが合いそうな気がします。
はたからは怪しい存在と見られているかもしれないけど、応援してますよ!


2015年8月31日月曜日

今後マッキンリーはデナリと書くように


……ということらしい。
「マッキンリー」は入植してきたヨーロッパ人が付けた名前。
「デナリ」はもともとの現地名。
登山界ではどちらも使われていてややこしかったので、この際デナリに改称というのはいいことだと思う。もともとデナリだったんだしね。


仮に日本が過去、ヨーロッパの植民地にされていた期間があったとして、
富士山が「ジョン・スミス山」という名前で勝手に呼ばれていたとして、
そちらのほうが国際社会では通りがいいことになっていたとしたら、
日本人としてはそりゃあ面白くないよね。
だからデナリに戻すというのは本来あるべき姿だと思うのです。


ちなみに東京・四谷にデナリという登山用具店があります。
店主とスタッフが異常にマニアックで、ブログは必見です。
あまり本来のデナリには関係ないんですけど。



ところで、デナリのように呼び名がいくつかある山はほかにもあります。
いちばん有名なのはエベレスト。
チョモランマともいうけれど、エベレストとの関係性を聞かれることがたまにあるので、この機会に整理しておきます。


エベレスト……イギリス人がつけた名前。マッキンリーと同じです
チョモランマ……チベット側の現地名
サガルマータ……ネパール側の現地名


エベレストはネパールとチベット(中国)の国境にあるので、双方で呼び名が違ったわけです。


エベレストに次ぐ世界第二の高峰・K2は、


K2……イギリス人がつけた名前
チョゴリ……中国側の現地名


パキスタン側の呼び名は知りません。聞いたことないけどあるんでしょうか。パキスタン側だと人里遠く離れた奥地にあたるので、もともと現地名はなかったのかもしれません。


山をはさんでこっち側と向こう側で呼び名が違うという例は日本にもあって、
有名なところでは金峰山。


きんぷさん……山梨側の呼び名
きんぽうさん……長野側の呼び名


字面は同じだけど読みが違うという例です。
全国的にどちらで知られているかというと、どっちかというと「きんぷさん」かな。



ともあれ、今後、マッキンリーのことを文中に書くときは「デナリ」と書くように注意だ!





【9月2日追記】

デナリ改称で微笑むのは誰か

こういう見方もあるらしい。そんな事情は考えてもみなかった。これが事実かどうかはわからないけど、物事は多角的に見る必要があるなとあらためて思いました。






2015年8月10日月曜日

商品紹介文はどう書くのが正解なのか

SONY α7R II | SHOOTING REPORT

NIKE AIR MAX 95 ULTRA


つらつらとインターネットを見ていて気になったふたつのページ。
どちらも商品の紹介。要は宣伝文です。
ものすごい好対照に感じたのでメモ。


どちらに魅力を感じますか?
商品自体のことじゃなくて、文章として。
より正確にいうと、これを読んで商品を買いたくなるのはどちらか。


私はいうまでもなく前者のソニー。
これを書いた人はかなりうまいな!と思いました(NBというイニシャルしか記されていないけど)。


それに対して後者のナイキは頭どうかしてるんじゃないかという文章。
これは日本語なんでしょうか。


しかし広告の現場では、こういうナイキみたいな文章が好まれるケースもある。
こんな文章読んで商品に興味を持ったり買いたくなったりするわけないと思うんだけど、
こういうのが採用されるということは、効果があるということなんでしょうか?
それともエアマックスみたいな超有名商品は文章の説明なんか不要なので、
なんとなくの単語だけ並べておけばそれでいいということなんでしょうか。
どう考えてもこれでいいとは思えないんだけどな。
うーん、わからん。


まあでも、ソニーのカメラ欲しくなってしまいましたよ。
やるじゃんNB。




2015年8月9日日曜日

アルピニズムと死





わたくしのアイドルであり大先生、山野井泰史さんの最近刊、いまごろ読了。


内容的には前著『垂直の記憶』のほうが読み応えがあったのだけど、
それ以前に、
「です・ます」調と「だ・である」調が混在していたり、
タイトルと内容がイマイチ合っていなかったり、
編集上の問題点が気になったな。
意図的なものなんだろうか。
もうちょっとていねいに編集したら読み応えは上がったような気がする。


いちばん印象に残ったフレーズはこれ。

次に展開される風景にいつも期待感を持っているクライマーでありたい。山が次々に出題するパズルを素早く解決できるクライマーでありたい。

山登りの醍醐味って私もこれだと思うんですよ。


昔、『山と溪谷』の記事で、同じような意味合いのこと書いたことがあります。
「ここから北鎌尾根はさまざまな課題を出してきた。それに正解すれば次へのルートが開かれ、間違えば行き詰まってやり直しだ」……みたいなこと。
引用したかったのだけど、当時のヤマケイは手元にほとんど残しておらず、確認ができない(残していなかったこと後悔してます)。


山登りはパズル。
そこにいちばんの面白みを自分は感じているので、
大先生も同じようなこと考えていてうれしくなったのでした。



ちなみにこの本に出てくる西上州一本岩という岩塔。
これにトライした「4人のクライマー」のうちひとりは私です。
「4人の優秀なクライマー」と書かれていますがそれは間違いで、
4人の中では私がダントツでヘボでした。




2015年7月31日金曜日

3泊5日でネパール・ランタン谷に行ってきました

カトマンズの空港から見たガネッシュ・ヒマール。左から4峰、2峰、1峰、5峰(だと思う)


日曜深夜出発・金曜早朝帰国という駆け足でネパールに行ってきました。
ネパールを訪れたのは初めて。
川名匡ガイドがランタン谷に支援物資を届けに行くのにおともしました。


ネパールに行ったこともなく、ランタン谷にもなんの縁もゆかりもない私ですが、『山と溪谷』7月号でネパール地震の記事を作ったときに、現地に行ったことがない自分が記事を作っていることに隔靴掻痒というかもどかしさを痛切に感じ、一度ネパールに行きたいと思っていたのです。地震の状況が知りたいということではなく、単純にネパールを見てみたいと。
そんなときに川名ガイドが同行者を募集していたので、衝動的に行くことにしてしまったというわけです。





通常1週間くらいかけて歩いていくランタン谷ですが、今回はヘリコプターを使ってカトマンズから往復2時間。現地滞在はわずか30分ほどという弾丸行程でした。



ランタン谷では土砂崩れで村がひとつまるごと埋まってしまい、山岳地としてはロールワリンと並んで地震の被害がもっとも大きかった場所です。被害者数は数百人におよび、外国人旅行者も100人くらい埋まってしまったようです。

左の灰色の部分が土砂崩れ。この下に村があったそうです。右の緑の部分は村の畑


ヘリから見た風景はすさまじいもので、集落がひとつ完全に消滅していました。行方不明者の捜索などとうてい不可能とひと目でわかるような規模の土砂崩れです。対岸の斜面は高さ100mくらいまで(もっと?)爆風で大木がすべてなぎ倒されていました。


この奥にもうひとつ村があるのですが、土砂崩れで道も遮断されてしまったために、現在は陸の孤島状態。支援物資はそこに持っていったというわけです。

新品のダウンジャケットやレインジャケット、テントなどを渡してきました


この2時間以外は基本的にカトマンズにいました。報道では、ビルや世界遺産の寺が崩壊したりなどインパクトある映像がよく流れていたので、カトマンズの街が半ば崩壊したようなイメージを持っていましたが、思っていたより普通でした。とくに被害のひどい一角をのぞけば、街を歩いていても気づかないほど。まあ、もともとごちゃごちゃしていて今にも壊れそうな建物が多いせいというのもありますが。



ここは地震のせいなのかもともとボロかったのか判断つかない

それよりも印象に残ったのは猛烈な渋滞とないに等しい交通マナー。信号はないかあっても停電しているので、交差点では四方から車とバイクがわれ先に突っ込んできてカオス状態。みんな車間15cmくらいですり抜けていきます。よくぞまあこれで事故が起こらないものだよなと思うんですが、見なかっただけで実際には起こっているんだろうな。





でもまあ、渋滞は地震以前からカトマンズの名物であり、この写真も通勤ラッシュだったりするのです。当たり前だけどほとんどの人々は通常生活に戻って日々を送っているようでした。







2015年7月16日木曜日

バンフ映画祭試写会に行ってきました


毎年楽しみにしているイベント、バンフ映画祭(バンフ・マウンテン・フィルム・フェスティバル)の試写会に行ってきました。


登山、クライミング、スキー、自転車、カヤックなどなど、主に山を舞台にしたショートフィルムの映画祭。本物はカナダのバンフで行なわれるのですが、ここ10年ほど、日本でも全国で上映が行なわれるようになっています。きょう行なわれたのは、秋の上映に先駆けてのメディア向け試写会というわけです。


わたくし実はムービー好きであり、高校時代には自主映画を作ったり、就活ではテレビの制作会社を受けたり、仕事キャリアの始めも動画制作だったりするのです(ヤマケイで2年間スキー・スノーボードビデオの仕事をしていました)。いまでもユーチューブ見始めたら5時間くらい見ちゃったりします。


だからバンフ試写会も毎年楽しみなわけです。で、いつも海外のアウトドアムービーのクオリティの高さにため息をつくと同時に嫉妬すら覚えます。なんでこんないいものを作れるのかなこいつらは、という感じ。


制作者は映像の専門家もいるのですが、とくに注目しているのは、アウトドアのプレーヤーとしても一流の人が作っている作品。彼らが作るものがいいのは、普通では行かれない場所での迫真の映像を見せてくれること。かといって映像が素人っぽいわけではないんですよ。やってることと映像の両面のクオリティがすばらしく高いのが、海外のアウトドア映像の魅力なのです。


とくにお気に入りは、アメリカのCamp 4 Collectiveというチーム。リーナン・オズタークというクライマーとして一流のくせにアートな才能が充満している男がおりまして、彼のセンスが作品には爆発しております。この人のセンスは大好き。もうひとつ、イギリスのアレステア・リーという人の作る映像もよいです。レオ・ホールディングというクライマーと組んでよく作品を作っていますが、よくこんな厳しい環境でカメラ回せるな!と感心させられます。で、彼もまたきびしい場所に行けるだけでなく、作品の構成力や映像センスもすばらしいです。


話がそれましたがバンフ映画祭。まあ、そんなような日本ではちょっと見られない見応えあるアウトドア映像がたくさん見られるというのが魅力です。毎年、クライミング系作品に傑作が多く(クライミング好きの私の身びいきではなく)、これまで見た歴代の私的ベストは、ピーター・モーティマーという人が作った「First Ascent」という作品。カナダにあるクライミングルートの初登競争を描いたものなのですが、これがすばらしい人間ドラマになっているのです。クライミングに興味がない人でも主役のディディエというクライマーが大好きになってしまうこと請け合いです(ユーチューブは全編ではなくて抜粋)。


ピーター・モーティマー作品、もうひとつすごい好きなのがあって、これです。これはもうほんとに箸休めみたいな小品なのですが大好き。(モーティマー以外の私的ベストもうひとつあって、それはひとりでリヤカーを引いて砂漠を横断する作品なのですがタイトルとか忘れてしまった。だれか教えてください。もう一度見たい)。


今年のグランプリもクライミングもの。ヨセミテ黎明期を支えたふたりのクライマーを、昔の写真をうまく使って動画に仕立てたというものです。制作は! またしてもピーター・モーティマー! 個人的には「First Ascent」のほうが好きですが、クオリティはさすがのモーティマーという感じでした。あのジョッシュ・ロウエルも制作にかんでいると聞けば、むむっと反応するマニアも多いことでしょう(少ないか)。


一般公開は9月から。アウトドア好きは一度は見に行くことをおすすめします。後悔はさせません。こういうアウトドアものは大画面で見るとよさが5倍くらいになるからです。ユーチューブで見たからもういいよという人も大画面で見ると印象が変わるはず。字幕もあるしね。