2017年1月8日日曜日
2016年12月25日日曜日
アウトドアメーカーが食品?
アウトドアメーカーのパタゴニアが食品事業を始めたことが話題となっております。
アウトドアメーカーが食品事業というと聞いたことがなく、さすがユニークなことをやるなと思っていたんですが、現物を手に取っていろいろ眺めていたら、あっ! と気づきました。これまでもあったじゃん。しかもオレ、よく買ってたじゃんと。
同じくアウトドアメーカーのモンベルが出しているアルファ化米です。自宅からいちばん近い山道具店がモンベルショップということもあって、山に行くときはよくこれを買っていたのです。山道具置き場を見たらストックも2袋ありました。
確かこれ、もう数年前から売られていると思います。モンベルは自社でレストラン(スパイスマジック)もやってるし、食品事業に乗り出したのはモンベルのほうが早かったのである! さすがモンベル!
2016年12月13日火曜日
人名はフルネームが基本だ
カメラマン 中西氏が語るαシリーズの魅力と解説
こんな告知を見ました。
「中西氏」ってだれ? カメラで中西というと、中西俊明さん?(山岳写真家です)と思ってしまったけど、中を見たら中西学という、私が知らない人でした。
雑誌編集部にいたときに、ライターや部下の原稿によく指摘をしていたのが、「人名はフルネームで書け」ということ。2回目以降は下の名前を省略して「中西氏」でもいいけれど、初出はフルネームが基本。これは不特定多数の人に読ませる文章の基本原則なのです。
でもなぜか下の名前を省略してしまう人が多い。本当に多い。なぜそうしてしまうかというと、書いている自分がよく知っている人だから。わざわざ下の名前まで書かなくてもわかるだろと、無意識のうちに略してしまうのです。だけど、それを読んでいる人が(たとえば)中西学さんを知っているとはかぎらないわけです。つまり、これをやってしまうということは読者のことに意識がおよんでいない証なのです。
なんか説教くさくなってしまったけど、職業柄、このことはものすごく気になります。人名はフルネームで書こうぜ!
こんな告知を見ました。
「中西氏」ってだれ? カメラで中西というと、中西俊明さん?(山岳写真家です)と思ってしまったけど、中を見たら中西学という、私が知らない人でした。
雑誌編集部にいたときに、ライターや部下の原稿によく指摘をしていたのが、「人名はフルネームで書け」ということ。2回目以降は下の名前を省略して「中西氏」でもいいけれど、初出はフルネームが基本。これは不特定多数の人に読ませる文章の基本原則なのです。
でもなぜか下の名前を省略してしまう人が多い。本当に多い。なぜそうしてしまうかというと、書いている自分がよく知っている人だから。わざわざ下の名前まで書かなくてもわかるだろと、無意識のうちに略してしまうのです。だけど、それを読んでいる人が(たとえば)中西学さんを知っているとはかぎらないわけです。つまり、これをやってしまうということは読者のことに意識がおよんでいない証なのです。
なんか説教くさくなってしまったけど、職業柄、このことはものすごく気になります。人名はフルネームで書こうぜ!
2016年10月22日土曜日
デトノアイソメに行きたい
仕事の筆が進まないので、珍しくブログ記事の連投を。
昨日登った八海山の西側には、気になる地名がたくさんあります。
まずはこれ。
なんだこりゃ? 地名なのか? それともなんかの記号みたいなものなのか? でも国土地理院の地形図に表記されているので、れっきとした地名と判断するしかない。
いったい「デトノアイソメ」とは何なのだろうか。漢字で書くとたとえば「出戸乃愛染」? いや、切る場所が違うのかもしれない。デ・トノ・ア・イソメでさしずめ「出殿阿磯目」あたりか。山の中だから磯目はないか……。
とにかくわけがわからない。山の地名には変なものがときおりあるが、これはかなりレベルが高い。同じ新潟の早出川にあるガンガラシバナに匹敵する。「わけがわからない」というだけで、私はそれに対する興味が抑えられなくなってしまう。なぜ「デトノアイソメ」なのか知りたい。そしてデトノアイソメをこの目で見てみたい。
以前、越後駒ヶ岳と中ノ岳を登ったときにもめちゃくちゃ気になっていたけれど、今回、地図を見ていて久しぶりに思い出した。思い出して稜線上から撮った写真がこれ。
画面中央、沢の合流点となっているところがおそらくデトノアイソメ。うーん、行ってみたいぞ! 気になりすぎてネット検索したところ、行っている人はやっぱりいて、現場には別に何もないらしいけれど。
次に、八海山と中ノ岳を結ぶ稜線上にあるこれ。
稜線上にV字に切れ込んだコルになっている。こういう地形に「ノゾキ」と名付けられるケースは他にもあるので、ここは「オカメ・ノ・ゾキ」ではなく、間違いなく「オカメ・ノゾキ」だろう。それにしてもなぜオカメなのだ。オカメがコルから崖下を覗き込んでいる姿が頭に浮かんでしまう(ところでオカメってなんだ)。
ここは名前だけでなく、地形的にもかなり強烈で、ものすごいV字コルになっている。北アルプスにあったら絶対にオカメキレットと呼ばれていただろう。
越後三山縦走のコースでもあるけれど、このオカメノゾキの区間はハードなことで有名。なにしろオカメノゾキの標高は1240mくらい。1778mの八海山入道岳から500m以上下って、その後、中ノ岳までは一転して怒涛の800mアップ。こんなハードなアップダウン、南アルプスにもありません。
ここは地形的にもかなり特異です。フキギから西(左)に延びる稜線と、そのすぐ下の沢(オツルミズ沢)の関係性をよく見てください。こんなへんな地形見たことない。名前だけじゃなくて、この地形を自分の目で見てみたい。
さて、越後三山周辺ではないし、国土地理院図にも表記がないのだけど、いまのところ私が知っている「変地名」のなかで最強と目されるのが、奥秩父金峰山近くにある「チョキ」です。標高1883mのピークなんですが、なぜチョキなんだ。山名でチョキなんてありなのか。そもそもどういう字を書くんだ。猪木? これじゃイノキか。いや、チョキと読むこともできるぞ。まさかパーはあるのか。それならばグーも絶対に欲しい……。
変地名は、それだけでさまざまな想像(妄想)を広げてくれる素晴らしいものでもあるのです。
昨日登った八海山の西側には、気になる地名がたくさんあります。
まずはこれ。
なんだこりゃ? 地名なのか? それともなんかの記号みたいなものなのか? でも国土地理院の地形図に表記されているので、れっきとした地名と判断するしかない。
いったい「デトノアイソメ」とは何なのだろうか。漢字で書くとたとえば「出戸乃愛染」? いや、切る場所が違うのかもしれない。デ・トノ・ア・イソメでさしずめ「出殿阿磯目」あたりか。山の中だから磯目はないか……。
とにかくわけがわからない。山の地名には変なものがときおりあるが、これはかなりレベルが高い。同じ新潟の早出川にあるガンガラシバナに匹敵する。「わけがわからない」というだけで、私はそれに対する興味が抑えられなくなってしまう。なぜ「デトノアイソメ」なのか知りたい。そしてデトノアイソメをこの目で見てみたい。
以前、越後駒ヶ岳と中ノ岳を登ったときにもめちゃくちゃ気になっていたけれど、今回、地図を見ていて久しぶりに思い出した。思い出して稜線上から撮った写真がこれ。
画面中央、沢の合流点となっているところがおそらくデトノアイソメ。うーん、行ってみたいぞ! 気になりすぎてネット検索したところ、行っている人はやっぱりいて、現場には別に何もないらしいけれど。
次に、八海山と中ノ岳を結ぶ稜線上にあるこれ。
稜線上にV字に切れ込んだコルになっている。こういう地形に「ノゾキ」と名付けられるケースは他にもあるので、ここは「オカメ・ノ・ゾキ」ではなく、間違いなく「オカメ・ノゾキ」だろう。それにしてもなぜオカメなのだ。オカメがコルから崖下を覗き込んでいる姿が頭に浮かんでしまう(ところでオカメってなんだ)。
ここは名前だけでなく、地形的にもかなり強烈で、ものすごいV字コルになっている。北アルプスにあったら絶対にオカメキレットと呼ばれていただろう。
このアングルからだとわかりにくいけれど、稜線のいちばん低い場所がオカメノゾキ
越後三山縦走のコースでもあるけれど、このオカメノゾキの区間はハードなことで有名。なにしろオカメノゾキの標高は1240mくらい。1778mの八海山入道岳から500m以上下って、その後、中ノ岳までは一転して怒涛の800mアップ。こんなハードなアップダウン、南アルプスにもありません。
オカメノゾキから中ノ岳への800m超アップ。もはや壁のよう。見ただけで吐きそうです
この区間、私はまだ歩いておりません。一度は行ってみたいのだけど、覚悟がいりそうだな〜。
ほかに、越後駒ヶ岳のすぐ近くにも「フキギ」なんていうピークがあります。
さて、越後三山周辺ではないし、国土地理院図にも表記がないのだけど、いまのところ私が知っている「変地名」のなかで最強と目されるのが、奥秩父金峰山近くにある「チョキ」です。標高1883mのピークなんですが、なぜチョキなんだ。山名でチョキなんてありなのか。そもそもどういう字を書くんだ。猪木? これじゃイノキか。いや、チョキと読むこともできるぞ。まさかパーはあるのか。それならばグーも絶対に欲しい……。
変地名は、それだけでさまざまな想像(妄想)を広げてくれる素晴らしいものでもあるのです。
山岳写真のウソ
昨日(21日)は八海山に登ってきました。デスクワークが続いてストレスがたまってきたので、突然の思いつきで単独行。本当は木曜日に行くつもりだったのだけど、天気がイマイチっぽかったので翌日に。平日でもこんなふうに思いつきひとつで動けるのがフリーランス最大の醍醐味だと思っています。そのかわり土曜日のきょうは仕事しているのだけど。
コースは、ロープウェー〜八海山〜阿寺山というもの。八海山はさすがに人気の山だけあって、平日だというのにけっこうな数の登山者が来ていました。ただ、私をのぞいてほぼ全員がロープウェーからの往復だったようで、阿寺山方面はひとりの登山者にも会わず。こちらは登山道も荒れ気味で、静かなもんでした。
個人的お目当てのひとつだったのが、八海山の紅葉。昔、この隣の中ノ岳で人生最高の紅葉を見たことがあるので、このへんの紅葉の美しさには期待していたのです。
……というのはウソで、実際はこんな感じでした。
最初の写真は「風景モード」という、彩度とコントラストを上げた設定にしているので、ビビッドで派手な発色になっています。実際の見た目に近いのは2枚目の写真のほうです。
山の風景ってのは、こういうふうに彩度とコントラストを上げると簡単に見栄えのいい写真になるのです。やり方は簡単。カメラの設定を「風景」とか「ビビッド」とかにしておくだけ。インスタグラムアプリとかは、イイ感じのプリセットがいっぱいあって撮影後に選べるようになっていますが、要はこういうことをやっているわけです。
こういう色調整というのは、プロのカメラマンも多かれ少なかれみんなやっています。紅葉の取材に行って「紅葉イマイチだったな」というときでも、カメラマンから写真をもらったら素晴らしい紅葉が写っていた、なんて経験も一度や二度ではありません。もはやデジタルはなんでもできるのです。
で、デジタルだけではありません。フィルム時代、山の撮影ではフジの「ベルビア」というフィルムが圧倒的な人気を誇っていました。風景写真家や山岳写真家の8割から9割はベルビアを使用していたと記憶しています。このベルビアというフィルムはどぎつい発色が特徴で、それこそ冒頭の八海山の写真のような色が出ました。空は完璧に青く、樹々はすばらしく緑で、紅葉を撮れば、どうってことのない紅葉が錦の海になったものです。
さて、紅葉についての山岳写真のウソ、もうひとつあります。それは、紅葉がパッとしないとき、「紅葉がきれいな木をひとつだけ見つけ、それを手前に配置する」というものです。
具体的な例で説明しましょう。
これは2014年の9月末に裏剱の仙人池という、紅葉撮影の名所で撮ったものです。山旅ツアーのチラシに使えそうな素晴らしい紅葉だと思いませんか。
しかし、この写真を撮った場所から3m左に移動して撮ったものがこちら。
俄然、冴えない風景になってしまいました。しかし、当日の現場の印象としてはこちらのほうが実を表しています。
もうひとつ、こういうのもあります。
これは2013年の9月20日ごろに剱沢で撮ったものですが、これだけ見ると、周囲一帯が紅葉に包まれているように思えます。
しかしここからぐーっと引いて周囲一帯を写すとこんな具合でした。
「コレ」と記したのが、1枚目に写っているオレンジに紅葉した木。豆粒のごとくで、他はまだ青々としており、紅葉というにはまだ早すぎる感じであることがわかると思います。
雑誌に載っているような紅葉の山岳写真は、上に書いた2点のどちらか、あるいは両方をやっているものがほとんどといっても過言ではありません。逆に言えば、これらをやるだけで、あなたの紅葉写真のインパクトは倍増するはずであります。さらに言えば、インスタグラムやフェイスブックのタイムラインに流れてくる写真に「お! すごい!」と早合点して出かけたところ、大したことなかったという悲喜劇を防ぐためにも。。。
コースは、ロープウェー〜八海山〜阿寺山というもの。八海山はさすがに人気の山だけあって、平日だというのにけっこうな数の登山者が来ていました。ただ、私をのぞいてほぼ全員がロープウェーからの往復だったようで、阿寺山方面はひとりの登山者にも会わず。こちらは登山道も荒れ気味で、静かなもんでした。
個人的お目当てのひとつだったのが、八海山の紅葉。昔、この隣の中ノ岳で人生最高の紅葉を見たことがあるので、このへんの紅葉の美しさには期待していたのです。
……というのはウソで、実際はこんな感じでした。
最初の写真は「風景モード」という、彩度とコントラストを上げた設定にしているので、ビビッドで派手な発色になっています。実際の見た目に近いのは2枚目の写真のほうです。
山の風景ってのは、こういうふうに彩度とコントラストを上げると簡単に見栄えのいい写真になるのです。やり方は簡単。カメラの設定を「風景」とか「ビビッド」とかにしておくだけ。インスタグラムアプリとかは、イイ感じのプリセットがいっぱいあって撮影後に選べるようになっていますが、要はこういうことをやっているわけです。
こういう色調整というのは、プロのカメラマンも多かれ少なかれみんなやっています。紅葉の取材に行って「紅葉イマイチだったな」というときでも、カメラマンから写真をもらったら素晴らしい紅葉が写っていた、なんて経験も一度や二度ではありません。もはやデジタルはなんでもできるのです。
で、デジタルだけではありません。フィルム時代、山の撮影ではフジの「ベルビア」というフィルムが圧倒的な人気を誇っていました。風景写真家や山岳写真家の8割から9割はベルビアを使用していたと記憶しています。このベルビアというフィルムはどぎつい発色が特徴で、それこそ冒頭の八海山の写真のような色が出ました。空は完璧に青く、樹々はすばらしく緑で、紅葉を撮れば、どうってことのない紅葉が錦の海になったものです。
さて、紅葉についての山岳写真のウソ、もうひとつあります。それは、紅葉がパッとしないとき、「紅葉がきれいな木をひとつだけ見つけ、それを手前に配置する」というものです。
具体的な例で説明しましょう。
これは2014年の9月末に裏剱の仙人池という、紅葉撮影の名所で撮ったものです。山旅ツアーのチラシに使えそうな素晴らしい紅葉だと思いませんか。
しかし、この写真を撮った場所から3m左に移動して撮ったものがこちら。
俄然、冴えない風景になってしまいました。しかし、当日の現場の印象としてはこちらのほうが実を表しています。
もうひとつ、こういうのもあります。
これは2013年の9月20日ごろに剱沢で撮ったものですが、これだけ見ると、周囲一帯が紅葉に包まれているように思えます。
しかしここからぐーっと引いて周囲一帯を写すとこんな具合でした。
「コレ」と記したのが、1枚目に写っているオレンジに紅葉した木。豆粒のごとくで、他はまだ青々としており、紅葉というにはまだ早すぎる感じであることがわかると思います。
雑誌に載っているような紅葉の山岳写真は、上に書いた2点のどちらか、あるいは両方をやっているものがほとんどといっても過言ではありません。逆に言えば、これらをやるだけで、あなたの紅葉写真のインパクトは倍増するはずであります。さらに言えば、インスタグラムやフェイスブックのタイムラインに流れてくる写真に「お! すごい!」と早合点して出かけたところ、大したことなかったという悲喜劇を防ぐためにも。。。
2016年10月19日水曜日
白馬岳に新しい登山道ができる!?
白馬岳新ルート検討 雪不足の大雪渓 影響見通せず
不安定な状態が続いている白馬大雪渓についに見切りをつけ(?)、新しい登山道を作ることが検討されているらしい。
これが実現されれば、北アルプス久々の新登山道ということになる(栂海新道以来ということになるんじゃないかな)。ちょっとワクワクするニュースだ。
と同時に、歴史ある大雪渓ルートが廃道ということにもなってしまうのか。それはそれで寂しい。
ところで記事の図によれば、新登山道はこんな感じになるのかな。
地形図を眺めていたら、その左にもっときれいな尾根があることに気づいた(緑線)。
こっちのほうがラインとしてはすっきりしているんじゃないかと思うのだけど、どうなんだろう。ほぼ休みなしの1000m一気登りになるからきつすぎるのかな。それとも、尾根最上部に崖記号が認められるので、通行困難な道になってしまうのか。
地図を眺めながら、こうしてルートプランをあれこれ妄想しているときがいちばん楽しいね。
不安定な状態が続いている白馬大雪渓についに見切りをつけ(?)、新しい登山道を作ることが検討されているらしい。
これが実現されれば、北アルプス久々の新登山道ということになる(栂海新道以来ということになるんじゃないかな)。ちょっとワクワクするニュースだ。
と同時に、歴史ある大雪渓ルートが廃道ということにもなってしまうのか。それはそれで寂しい。
ところで記事の図によれば、新登山道はこんな感じになるのかな。
地形図を眺めていたら、その左にもっときれいな尾根があることに気づいた(緑線)。
こっちのほうがラインとしてはすっきりしているんじゃないかと思うのだけど、どうなんだろう。ほぼ休みなしの1000m一気登りになるからきつすぎるのかな。それとも、尾根最上部に崖記号が認められるので、通行困難な道になってしまうのか。
地図を眺めながら、こうしてルートプランをあれこれ妄想しているときがいちばん楽しいね。
2016年10月13日木曜日
山岳ガイドが憧れの職業
伊藤 伴。日本最年少にしてエベレスト、ローツェの連続登頂を成し遂げた男---その2
今年5月、エベレスト日本人最年少登頂記録を作った大学生、伊藤伴さんのインタビュー記事です(最年少記録はその直後に南谷真鈴さんに塗り替えられてしまいましたが)。
いちばん印象的だったのは、将来の夢を聞かれて「山岳ガイドになりたい」と答えているところ。
時代は変わったなあと思うのです。
昔は、「植村直己さんのような冒険家になりたい」とか「世界的なクライマーになりたい」という夢を語る若者はいても、「ガイドになりたい」という人はまずいなかった。そのころ(私が若い頃だから25年くらい前)は、山岳ガイドというと、登山にのめり込みすぎてまともな社会生活を送れなくなった人が生活のために仕方なくやる職業、というイメージが強かったんです。プロ意識も低そうで、とても憧れるようなものではありませんでした。
でも今では、19歳の若者が将来の夢として山岳ガイドをあげるのも十分ありえる話だ。伊藤さんの師である近藤謙司さんとかかっこいいもんね。私の知っているところでは、長岡健一さんとか花谷泰広さんとかも同じ。彼らは「仕方なく」ガイドをやっているのではなく、プロとして意欲的に取り組んでいる。そして大きいのは、経済的にきちんと成り立たせているところ。昔のガイドのようにその日暮らしでは憧れようもないですからね。
10代のときにフランスでガイド修行をして資格も取った江本悠滋さんが言うには、フランスでは山岳ガイドが少年の憧れ職業のひとつだそうです。自分もそうなりたくてガイドの道に進むことにしたと。日本もそういう社会にしたいと昔から言ってました。
そういう過去を思い返すと、時代はずいぶん変わった。伊藤さんの言葉はその象徴のように聞こえたのでした。
今年5月、エベレスト日本人最年少登頂記録を作った大学生、伊藤伴さんのインタビュー記事です(最年少記録はその直後に南谷真鈴さんに塗り替えられてしまいましたが)。
いちばん印象的だったのは、将来の夢を聞かれて「山岳ガイドになりたい」と答えているところ。
時代は変わったなあと思うのです。
昔は、「植村直己さんのような冒険家になりたい」とか「世界的なクライマーになりたい」という夢を語る若者はいても、「ガイドになりたい」という人はまずいなかった。そのころ(私が若い頃だから25年くらい前)は、山岳ガイドというと、登山にのめり込みすぎてまともな社会生活を送れなくなった人が生活のために仕方なくやる職業、というイメージが強かったんです。プロ意識も低そうで、とても憧れるようなものではありませんでした。
でも今では、19歳の若者が将来の夢として山岳ガイドをあげるのも十分ありえる話だ。伊藤さんの師である近藤謙司さんとかかっこいいもんね。私の知っているところでは、長岡健一さんとか花谷泰広さんとかも同じ。彼らは「仕方なく」ガイドをやっているのではなく、プロとして意欲的に取り組んでいる。そして大きいのは、経済的にきちんと成り立たせているところ。昔のガイドのようにその日暮らしでは憧れようもないですからね。
10代のときにフランスでガイド修行をして資格も取った江本悠滋さんが言うには、フランスでは山岳ガイドが少年の憧れ職業のひとつだそうです。自分もそうなりたくてガイドの道に進むことにしたと。日本もそういう社会にしたいと昔から言ってました。
そういう過去を思い返すと、時代はずいぶん変わった。伊藤さんの言葉はその象徴のように聞こえたのでした。
2016年9月21日水曜日
わかりやすい文章は武器だ
本日話題になった衝撃的な記事。サッカー専門誌で、当事者に取材せずに創作でインタビュー記事が作られていたという告発だ。
サッカー専門誌「エア取材」横行か――作家の検証と告発
それに対して、告発された側の雑誌編集長がすぐさま反論。取材経緯を細かく説明することで、事実無根であることを主張している。
『エアインタビュー疑惑』という捏造記事について
主張は真っ向対立。いったいどちらが真実を語っているのかさっぱりわからない。雑誌作りにおける不祥事というのは、職業柄ある程度見当がつくことが多いけれど、この件に関してはまるでわかりません。
ただ、ふたつの記事を読んで感じたことがひとつ。
前者の記事が論旨が明快でわかりやすいのに比べて、後者の反論記事はいまひとつ内容がすっと頭に入ってこない。話をごまかそうとして不誠実に書いている印象はないのだけど、ちょっとわかりにくくもどかしい。そのもどかしさはかすかなイラつきにつながり、わずかでも自分をイラつかせたことによって、話の真偽とは関係なく、感情的にそちらに味方したくなくなってしまう。
今回のふたつの記事は、いまのところ論証している事実の強さに差はないように思えるのだけど、このわかりやすさの差によって、前者に肩入れする読者のほうが多いような気がする。
前者は入念に準備した乾坤一擲の告発。それ対して後者は、急遽一日で書かざるを得なかった反論なので、文章の完成度的に不利な立場であるのは同情すべきところ。しかしそれにしても、もう少しわかりやすく書けなかったかな……。
わかりやすい文章を書けるというのは、大きな力であるのだなあと思った一件でした。
サッカー専門誌「エア取材」横行か――作家の検証と告発
それに対して、告発された側の雑誌編集長がすぐさま反論。取材経緯を細かく説明することで、事実無根であることを主張している。
『エアインタビュー疑惑』という捏造記事について
主張は真っ向対立。いったいどちらが真実を語っているのかさっぱりわからない。雑誌作りにおける不祥事というのは、職業柄ある程度見当がつくことが多いけれど、この件に関してはまるでわかりません。
ただ、ふたつの記事を読んで感じたことがひとつ。
前者の記事が論旨が明快でわかりやすいのに比べて、後者の反論記事はいまひとつ内容がすっと頭に入ってこない。話をごまかそうとして不誠実に書いている印象はないのだけど、ちょっとわかりにくくもどかしい。そのもどかしさはかすかなイラつきにつながり、わずかでも自分をイラつかせたことによって、話の真偽とは関係なく、感情的にそちらに味方したくなくなってしまう。
今回のふたつの記事は、いまのところ論証している事実の強さに差はないように思えるのだけど、このわかりやすさの差によって、前者に肩入れする読者のほうが多いような気がする。
前者は入念に準備した乾坤一擲の告発。それ対して後者は、急遽一日で書かざるを得なかった反論なので、文章の完成度的に不利な立場であるのは同情すべきところ。しかしそれにしても、もう少しわかりやすく書けなかったかな……。
わかりやすい文章を書けるというのは、大きな力であるのだなあと思った一件でした。
2016年9月12日月曜日
出版編集の共通ルールが欲しい
今回はライターとしての業界ネタを。
ウエノミツアキ氏「出版編集の共通ルール作ってみようよ?」
たまたまこんなページを読みました。5年近く前の投稿のようで今さら遅いかもしれないけど、もう全力で同意です。このウエノミツアキさんって知らない人ですが、問題意識が同じで親近感わいちゃったな。
これ、そもそも、「編集」という仕事の曖昧さに由来していると思うんですよ。「編集」って仕事はなんなのか、とてもわかりにくい。ライティング(=執筆)についてはほとんどの人が同じようなイメージをもっていて、そしてそれはほぼ正しいのだけど、編集という仕事の具体像は、業界人以外はまず知らないと思います。業界人ですら明確にわかっていないのです。だからこういう問題が起こります。
たとえば、雑誌をはじめとした印刷媒体を作るときには以下のような作業が必要になります。
1)企画立案・・・どういうテーマをどれくらいの分量でやるか決める
2)キャスティング・・・企画に必要な人員を確保
3)構成案作成・・・具体的な構成要素を考える
4)取材・・・インタビュー、資料収集など
5)ビジュアル取材・・・写真撮影、イラスト作成など
6)ライティング・・・原稿執筆
7)デザイン発注・・・デザイナーにページレイアウトをしてもらうための整理
8)校正・校閲・・・間違いがないか確認。写真の色を確認する色校正も
9)校了・・・最終確認
10)印刷・・・印刷会社で印刷
11)発送・・・完成物を協力者や配送先に発送
12)宣伝・・・成果物のPR
このうち、編集者の役割は、通常1〜3、5、7〜9です。会社やモノによっては11と12も担当します。それ以外の4と6はライターが担当し、5は編集者のディレクションにしたがってカメラマンやイラストレーター、7はデザイナーが作業。10は印刷会社が行ないます。
こうしてみると、編集者の仕事ってめちゃくちゃたくさんありますね。編集者ってデスクにふんぞり返って電話ばっかりしているイメージしかないかもしれないけど、真面目にやるとめちゃくちゃ忙しいんですよ。雑誌のクオリティの7割は編集者によって決まると思っています。いちばん近いイメージは映画監督なのかなとよく思ったりもします。
ところが、この役割分担が場によって違っていて、会社や編集部によっては、上の3〜8までライターの仕事となっている場合もあります。それはそれで悪いことではないのだけど、分担が外部の人には明確でないことが多いんですよ。そこですれ違いやトラブルが起こる。
編集者や編集部って「自分のやり方」を囲い込む傾向が強く、ノウハウを共有しようという気風が異常に少ない世界なので、ウエノさんが書いているとおり、そのすれ違いは内輪の人は気付かない。僕も社員編集者時代はよくわかっていませんでした。フリーになって、いろいろな会社と仕事をするようになってから初めて強く感じていることです。さらに、この問題は広告制作やネット業界でもある程度同じということもわかりました。
「役割分担がうまくできるというだけで、その人はかなり仕事ができるといえる」ということを以前なにかで読んだことがあるんですが、まったくそのとおりだなと思います。僕はライターの立場で仕事を請けることもあれば、編集者として仕事を依頼することもあるので、このへんの問題はすげー気になります。
なので、そういうルールブック欲しい!
ウエノさん、本作りましょう!
ウエノミツアキ氏「出版編集の共通ルール作ってみようよ?」
たまたまこんなページを読みました。5年近く前の投稿のようで今さら遅いかもしれないけど、もう全力で同意です。このウエノミツアキさんって知らない人ですが、問題意識が同じで親近感わいちゃったな。
これ、そもそも、「編集」という仕事の曖昧さに由来していると思うんですよ。「編集」って仕事はなんなのか、とてもわかりにくい。ライティング(=執筆)についてはほとんどの人が同じようなイメージをもっていて、そしてそれはほぼ正しいのだけど、編集という仕事の具体像は、業界人以外はまず知らないと思います。業界人ですら明確にわかっていないのです。だからこういう問題が起こります。
たとえば、雑誌をはじめとした印刷媒体を作るときには以下のような作業が必要になります。
1)企画立案・・・どういうテーマをどれくらいの分量でやるか決める
2)キャスティング・・・企画に必要な人員を確保
3)構成案作成・・・具体的な構成要素を考える
4)取材・・・インタビュー、資料収集など
5)ビジュアル取材・・・写真撮影、イラスト作成など
6)ライティング・・・原稿執筆
7)デザイン発注・・・デザイナーにページレイアウトをしてもらうための整理
8)校正・校閲・・・間違いがないか確認。写真の色を確認する色校正も
9)校了・・・最終確認
10)印刷・・・印刷会社で印刷
11)発送・・・完成物を協力者や配送先に発送
12)宣伝・・・成果物のPR
このうち、編集者の役割は、通常1〜3、5、7〜9です。会社やモノによっては11と12も担当します。それ以外の4と6はライターが担当し、5は編集者のディレクションにしたがってカメラマンやイラストレーター、7はデザイナーが作業。10は印刷会社が行ないます。
こうしてみると、編集者の仕事ってめちゃくちゃたくさんありますね。編集者ってデスクにふんぞり返って電話ばっかりしているイメージしかないかもしれないけど、真面目にやるとめちゃくちゃ忙しいんですよ。雑誌のクオリティの7割は編集者によって決まると思っています。いちばん近いイメージは映画監督なのかなとよく思ったりもします。
ところが、この役割分担が場によって違っていて、会社や編集部によっては、上の3〜8までライターの仕事となっている場合もあります。それはそれで悪いことではないのだけど、分担が外部の人には明確でないことが多いんですよ。そこですれ違いやトラブルが起こる。
編集者や編集部って「自分のやり方」を囲い込む傾向が強く、ノウハウを共有しようという気風が異常に少ない世界なので、ウエノさんが書いているとおり、そのすれ違いは内輪の人は気付かない。僕も社員編集者時代はよくわかっていませんでした。フリーになって、いろいろな会社と仕事をするようになってから初めて強く感じていることです。さらに、この問題は広告制作やネット業界でもある程度同じということもわかりました。
「役割分担がうまくできるというだけで、その人はかなり仕事ができるといえる」ということを以前なにかで読んだことがあるんですが、まったくそのとおりだなと思います。僕はライターの立場で仕事を請けることもあれば、編集者として仕事を依頼することもあるので、このへんの問題はすげー気になります。
なので、そういうルールブック欲しい!
ウエノさん、本作りましょう!
2016年8月1日月曜日
スポルティバ・トランゴS EVOのソール張り替え
超愛用しているお気に入りのブーツスポルティバ・トランゴS EVO GORE-TEXのソールを張り替えました。なんとなくだましだまし使っていたのだけれど、つま先がすり減りすぎてアッパーにもダメージを与えそうになってきたことと、滑りやすくてさすがに危険を感じてきたので、ついに思い切ってリソールをすることに。
ソールを張り替えて使うべきか、新しいブーツに買い換えるかは少し迷いました。が、このブーツが非常に気に入っていたので変えたくなかったことと、ソールの張り替えをしたことがなかったので、話のタネに一度やってみようという思いから張り替えを決断。
張り替えを依頼したのは、このブーツを買ったICI石井スポーツ登山本店。張り替えの依頼はそれなりにあるようで、スムーズに受け付けてくれました。費用は1万5000円から2万円くらいということで、状態によって変わるそうです。見積もりを出しましょうか?と言われたのですが、この際、多少高くなってもいいやと思って、「3万円以下なら見積もり不要です」と答えて、価格交渉は省略しました。
日数は1カ月くらいかかるということだったのですが、25日くらいで仕上がりの連絡がありました。最終的な値段は税込み2万391円。安めの靴なら1足買えてしまう値段で、高いといえば高いですよね。
しかし高いだけあって仕上がりには満足。これが張り替えアフター状態。冒頭のビフォー状態と比べてみてください。見た目の印象もかなりシャキッとしました。
ソールのエッジはびしっと立って、破れかけていたつま先のランドラバーもまるっと新品になっていました。
アウトソールだけでなく、ミッドソールごと交換。コバのパーツも新品になっていました。スポルティバ純正のマーク付きです。もともとミッドソールは黄色、コバはグレーだったのだけど、ミッドソールがグレー、コバが黄色の逆に変わっていました。しかしデザイン的にはこのほうが締まった感じがして、むしろよかったです。
純正仕様でない独自の張り替え業者もあるようなのですが、純正ルートで頼んでよかった。だって、いくら安いといっても、あのスマートなトランゴがこんな鈍重な姿になって戻ってきたら泣くに泣けませんぜ。
では以下に新旧の比較を。すべて左が張り替えビフォー、右がアフターです。
すっかりくたびれていたトランゴが見事復活! 使い込んだいい感じのヤレ具合と新品ソールの切れ味が同居して、見た目の雰囲気もさらに上がりました。たんなるピカピカの新品よりこちらのほうがカッコよく、思い入れもひとしおに。大満足でございます!
ところでこれ、私は登山ライターという職業上、メーカーにダイレクトで安く頼むこともやろうと思えばできるのですが、一般ユーザー同様に普通にお店に頼みました。メーカーダイレクトでやるとやりとりが少し面倒なのと、特殊な依頼方法をしてしまうと、一般的な張り替え体験にならず、今後、ソール張り替えの記事を書く機会があったときに正確なことが書けないなと思ったことが理由です。
じつは現在発売中のPEAKSにこの張り替えのことをちらっと書いているのですが、これは、PEAKS編集部員に「張り替えしたよ」と何の気なしに話したところ、「そのネタ使わせてください!」と頼まれてしかたなく書いただけなのであります。
なので、この張り替えには仕事モードは一切含まれておりません。ICIの人には私の正体はバレていなかった(はず)なので、私の靴をとくに念入りに仕上げてくれたわけでもありません。一般ユーザーの方が張り替えをしても同じ仕上がりになるはずですよ。
【追記】
スカルパ・レベルと、アゾロ・エルブルースと比較レビューしました。
スポルティバvsアゾロvsスカルパ履き比べ
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