2021年8月6日金曜日

章子怡はチャン・ツィイーと呼ぶのに、なぜ習近平はシュウ・キンペイと呼ぶのか



オリンピックを見ていてふと気になったこと。


というより、前から気になっていたのだけど、あらためて気になるので書いてみます。


「なんで中国人の名前を日本語読みするの?」


というテーマについてです。





スポーツクライミングで、パン・ユーフェイ(潘愚非)という中国人選手がいます。以前からクライミング競技を見てきた人は、この選手のことは「パン・ユーフェイ」で認識していました。しかし予選を見ながらふと思いました。彼が決勝に進んでテレビ中継に登場したら、実況の人は「さあ、次は中国のハン・グヒです!!」と紹介することになるんじゃないか!!?  卓球でも体操でも、オリンピック中継は中国人選手の名前を日本語読みしていますからね。


でも。


「え? ハングヒ? 中国からはパン・ユーフェイが出てるはずなんだけど、別人か? いや、でも顔は同じっぽい…」


今までパン・ユーフェイという名前に親しんでいたクライマーは、このように混乱すること間違いないでしょう。アナウンサーに「このハングヒはどういう選手なんですか?」と振られた解説者も、「え!? あっ…、パn…いや、ハン選手はですね……」と、一瞬挙動不審に陥ってしまうことが想像されます(結果的にパン選手は決勝に進めなかったのでテレビには登場しませんでしたが)。


思うんですが、そろそろ中国人の名前は日本語読みではなく、現地音読みにしたほうがいいんじゃないでしょうか。確かに昔は問題なかったと思います。毛沢東は「もう・たくとう」だし、鄧小平は「とう・しょうへい」。


しかし最近は、最初から現地音読みで日本に紹介される人が増えています。チャン・ツィイーとか芸能人がその中心ですが、マスコミに登場しないようなマイナースポーツの世界でも同じです。日本でも知られる中国人が政治家や歴史上の人にかぎらず、多岐にわたってきているので、日本語読みと現地音読みが混在する状況になってしまっているのです。


ならば現地音読みに統一したほうが、今後のことを考えるといろいろ混乱が少ないんじゃないか……と思うのです。


ずっと定着していた読み方を変えるとかえって混乱してよくない。という意見もあるかと思いますが、それは経験上、きっと問題はないと私は考えます。


というのも。


私が子どものころは、中国人だけでなく、韓国人・朝鮮人の名前も日本語読みしていました。朴正煕は「ぼく・せいき」、金日成は「きん・にっせい」でした。「パク・チョンヒ」とか「キム・イルソン」と呼ぶ人は一般にはいなかったですね。『あしたのジョー』に出てくる金竜飛だって「きん・りゅうひ」でした。


それが変わったのは1980年代と記憶しています。当時の韓国大統領は「ぜん・とかん」(全斗煥)でしたが、任期後半か退任後くらいから「チョン・ドゥファン」と呼ばれる機会が増えていきました。最初は「ん?」と思ったものの、すぐにチョン・ドゥファンに慣れてしまいました。一方、北朝鮮で金正日が次期国家主席として報道され始めたのは92~93年ごろだと思いますが、彼は最初から「キム・ジョンイル」でした。「きん・せいにち」と呼ぶ人は多くないんじゃないでしょうか。


この変更の理由には、韓国からの要請があったらしいのですが、理由はどうあれ、10年もたたずに、韓国人・朝鮮人は現地音読みが日本で定着したということです。それにまつわる混乱も記憶がありません。


このことを思い返せば、中国人だって意外と大した混乱なく、現地音読みに切り替わってしまうんじゃないかと思うのです。むしろ変わらず日本語読みを続けるほうが、上に書いたパン・ユーフェイのような混乱が増えていくように思うのですが、どうなんでしょうか?? 



*冒頭の画像は大陸中国ではなく、台湾です。中国行ったことないので


9 件のコメント:

  1. いつからかわかりませんが、姓・名の順序も各地域のルールで表記されるようになってますね。YORIYAMA Kenichiみたいな感じで。

    ちなみに中国や韓国では日本名とかは日本読みになってるんでしょうかね?
    ちょっと気になりました。

    返信削除
  2. 既にご存知かもしれませんが、最近タイムリーな記事かあったので共有させて頂きます。
    どうやら中国の方にとっては、日本人の下手な発音に基づくカタカナ表現はかえって迷惑なようです。

    https://www.google.com/amp/s/news.yahoo.co.jp/amp/articles/8f74288051fd99c974597f5ec416d6285bf04a07

    返信削除
    返信
    1. ありがとうございます。この記事、知っていました。在日中国人の意見ということで貴重な視点ではあると思うのですが、理屈はよくわかりませんでした。「ファン・ビンビン」だと中国語話者には伝わりにくいから「はん・ひょうひょう」にしたほうがいい……という論旨だと思うのですが、それじゃもっと伝わりにくくない?と私は思ってしまいます。

      削除
  3. ツイッターで教えてもらったNHKの資料

    https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/yougo/pdf/037.pdf

    返信削除
  4. 以前海外で暮らしていたのですが、その間に全く同じことを思っていました。
    外国人と中国の著名人について話す機会で、日本語読みは邪魔なだけでした。
    下手するとマオ・ツァートンすら誰のことか分からない、というのは問題ではあると思います。
    個人的には今すぐにでも現地読みをもとにした表記に統一してほしいところですね。

    返信削除
    返信
    1. ですよね。おっしゃるように海外の人とのコミュニケーションに問題が生じるというのも、変えたほうがいいと思う理由のひとつです。私もマオ・ツァートンといきなり言われるとわかりません。。

      削除
  5. はじめまして。
    興味深く拝見しました。

    私は妻が中華系なので、少し北京語を話します。
    もちろん私は中華系の人の名前は北京語読み方が違和感がありません。
    たとえカタカナ発音でもそうしてほしいです。


    ただ、逆の立場で考えると、中国や台湾の人たちは日本人の名前をほぼ100%北京語読みしていますね。
    一部の日本通の人が日本人と話す時に日本語読みを使う程度です。
    彼らは、カタカナという便利な表音文字がないからだと思います。
    「森山」を無理やり彼らが日本語読みをしようとすると、例えば「茉莉牙馬(モーリーヤーマー)」という漢字に変換しないと覚えられないですから。

    夜露死苦とか把瑠都みたいな感じですね。

    返信削除
    返信
    1. 中国はそうみたいですね。まあ、中国は中国、日本は日本で、より混乱が少なく問題が少ない方法を選べばいいのかなと思います。ところで、中国では欧米人の名前はどう表記しているんでしょうか。たとえばマイケル・ジャクソンは舞蹴龍邪苦損とか? そんなわけないか(笑)

      削除
    2. >中国では欧米人の名前はどう表記しているんでしょうか。
      >たとえばマイケル・ジャクソンは舞蹴龍邪苦損とか? そんなわけないか(笑)


      それに近い感じですよ(笑)
      中国では「迈克尔・杰克逊」、台湾では「麥可・傑克森 」。簡体字と繁体字の違いだけじゃなく、漢字自体が違っています。

      中国はどうやら外国人人名辞典みたいなのが決められていて、ある程度の名前はもともと決められているようです。もちろん英語圏でも移民系の名前なんかはその都度決めないといけないんでしょうけどね。

      削除