「ザックのストラップの余りがブラブラして邪魔くさい問題」を考える|森山憲一|山岳ライター
2026年6月24日水曜日
2023年6月12日月曜日
【スマートウォッチレビュー】Amazfit GTR4を登山で使ってみたところ…
2021年から登山でスマートウォッチを使い始めて以来、すっかり凝ってしまって、今では6本も所有するようになってしまった(導入第一号だったOPPO Watchは人に譲ってしまいました)。
そもそもは、「腕時計で地図を見たい」という動機だけで導入したのですが、使ってみると、心拍数や移動スピード、移動距離などが測れたり、睡眠の状態を計測してくれるなど、身体の状態を数値で確認できることが楽しくなり、現在では登山に限らず24時間365日身に付けている状況です。
山では比較テストのためにもっぱら両手時計スタイル。「ケイスケホンダのようだ」と同行者に言われました。
過去にも以下のような記事を書きました。
| T-REX2 | GTR 4 | |
| 定価 | 35,800円 | 33,000円 |
| サイズ | 47.1 x 47.1 x 13.65 mm | 46×46×10.6mm |
| 重量 | 66.5g | 60g |
| ケース素材 | ポリマー | アルミ合金 |
| 耐衝撃性 | MIL規格 | ー |
| 防水性 | 10気圧 | 5気圧 |
| 操作 | タッチパネル/ボタン | タッチパネル |
| ディスプレイ | AMOLED 1.39インチ | AMOLED 1.43インチ |
| GPS(GNSS) | 5 | 6 |
| センサー | 3.0 | 4.0(最新) |
| OS | 1.0 | 2.0(最新) |
| 駆動時間 | 24日 | 14日 |
| GPS駆動時間 | 最大58時間 | 最大52時間 |
薄いことは重要だ
ディスプレイが見やすい
気負わず使えるスマートウォッチ
山ではカスタムして使おう
ついにGarminウォッチを導入。Fenixは高すぎる&重すぎるので、同等機能で軽量コンパクトなForerunner955をチョイス。
— 森山憲一 (@kenichimoriyama) January 26, 2023
○地図が見られる
○各種センサーの精度が高い
○アプリ高機能
△バッテリー持ちもうひとつ
×タッチ操作もっさり
×操作性複雑 pic.twitter.com/q6o96bpmhR
GPSには厳しい都心のビル街で測定してみたところ。青線がGarmin 955、赤線がAmazfit GTR4、黒線が実際に歩いたライン。けっこう差が出ました。このへんはさすがGPSの本家。
— 森山憲一 (@kenichimoriyama) January 26, 2023
ただし山での実用精度としては大きくは変わらない印象です。 pic.twitter.com/Hezyh0ghaH
Amazfit GTR4はこれ(シリコンカバー付けてます)
— 森山憲一 (@kenichimoriyama) January 26, 2023
×地図は見られない
△センサー精度はそこそこ
△Garmin 955より機能少ない(そのぶん使い方簡単)
○バッテリー持ち良い
○タッチ操作サクサク
○画面見やすい
○価格安い pic.twitter.com/TfvJF91f0o
以上より
— 森山憲一 (@kenichimoriyama) January 26, 2023
Garmin 955 中上級者向け
Amazfit 初中級者向け
という感じかな。
普段からランニングなどもやる人は955、
日常生活でも使いたい人はAmazfit GTR4、
ともいえると思います。
2022年10月5日水曜日
【スマートウォッチレビュー】Amazfit T-REX 2は登山で使えるか
久しぶりの読者様還元レビュー(意味はこの記事冒頭に)。
先日、このような記事を書きました。
登山で使えるスマートウォッチを研究したいすると、記事を読んだAmazfit(アマズフィット)PR担当の方から連絡があり、一度アマズフィットのスマートウォッチを使ってみてもらえないかとのこと。使用にあたってとくに縛りはなく、気に入ればなんらか記事にしてもらえるとうれしい程度の条件だったので、喜んで使わせていただくことにしました。
該当機種はAmazfit T-REX 2。今年発売された新型スマートウォッチで、アウトドア使用を意識したモデルとのこと。ガーミン・インスティンクト2やスント5ピークの競合になりそうなモデルです。
機能全部盛り
ルートナビゲーションは使えるか?
【いいところ1】バッテリー持ちがよい
【いいところ2】物理ボタンでも操作可能
【いいところ3】デジタル機器としての完成度が高い
【悪いところ1】デザインがごつい
【悪いところ2】日本語化が甘い
【悪いところ3】値段が高い
総評
| Amazfit T-REX2 | Garmin Instinct2 | |
| 本体サイズ | 47.1 x 47.1 x 13.65 mm | 45.0 x 45.0 x 14.5 mm |
| 重量 | 66.5g | 52g |
| ディスプレイ | カラーAMOLED | モノクロMIP液晶 |
| ディスプレイ解像度 | 454×454pix | 176×176pix |
| 操作 | タッチパネル/ボタン | ボタン |
| 防水 | 10ATM | 10ATM |
| GPS | 5GNSS | 4GNSS(北斗非対応) |
| 心拍計 | ○ | ○ |
| 高度計 | ○ | ○ |
| 電子コンパス | ○ | ○ |
| 血中酸素 | ○ | ○ |
| Suica | × | ○ |
| ナビゲーション | ○ | ○ |
| 駆動時間 | 24日 | 28日 |
| GPS駆動時間 | 最大58時間 | 最大70時間 |
2018年8月2日木曜日
【登山靴レビュー】モンベル・アルパインクルーザー2000
読者還元レビュー第二弾(意味はこの記事冒頭に)。
メーカーから提供された登山用具について、忖度ぬきで正直な感想をレポートします。今回は、モンベルの新作トレッキングブーツ、アルパインクルーザー2000。
提供を受けた際は、正直、まったく期待していませんでした。というのも、モンベルの靴というのは、完成度が総じて低くて、いい印象を抱いたことがほとんどなかったからです。ウエアやギアについては、あんなにスキのない製品を作れるのに、靴はどうしてこのレベルなんだろう? と疑問に思っていたくらいです。
が、このブーツは、従来のモンベル靴の印象を一変する意欲作だと感じました。モンベルの靴は明らかに変わった。開発陣の明確な意識変化が伝わってくるようです。見た目はやけに地味なのですが、中身は、今シーズンの目玉ブーツのひとつといってもいいほどの出来です。これはレポートする価値があるだろうと思い、ペンをとった(キーボードを叩く)次第です。
フィット感のよい足型の採用
従来のモンベル靴の最大の欠点は、広すぎる足型にあったと個人的には思っています。そして単に幅広なだけでなく、箱のような形というか、メリハリに欠ける足型でした。人間の足は、複雑な3D形状をしているので、それに忠実に添った足型をしている靴が「フィット感がよい」といわれるわけですが、それに対してモンベルの靴は、長靴的な雑さがありました。
幅の広さは、「幅広が多い」といわれている日本人の足に合わせた結果だとは思うのですが、それにしても広すぎた。幅広の靴は、店頭で履いたときは当たるところがなくてラクに感じるけれど、山を歩くと、足が靴の中でズレて歩きにくい。私は幅広のほうだけど、それでもモンベルの靴は広すぎると感じていました。これがぴったりくる人って、どれだけ足が広いんだろうかと。
が、アルパインクルーザー2000は足型が一変。なにより変わったのは、土踏まずからカカトにかけて。幅を絞り、左右からカカトをしっかり固定。拇指球まわりのワイズは私でも問題ない適度なゆとりを残しつつ、つま先もやや絞って指先の力を引き出す形に。要するに、スポルティバやアゾロに代表される、グラマラスで現代的なイタリアンフィットに変わったのです。
この変化は、じつは昨年から感じておりました。昨年発売されたアプローチシューズ、クラッグホッパーがこの足型でした。「あれ、モンベルにしてはやけにフィット感がいいぞ」と驚いた覚えがあります。この靴、隠れた名作でして、ガイドやクライマーなど、実際に履いた人には総じて評価が高く、私自身も際どい場所での勝負シューズとして愛用しております。モンベル靴の足型変更は、この靴あたりから始まっていたと思われます。
もっさりした鈍重なフィットから、歩行安定感の高い洗練された足型に。これが、まず指摘したいアルパインクルーザー2000の評価ポイントです。
史上最高レベルのフリクション
これがこの靴の最大評価ポイント。おそらく私は、この靴より滑りにくいソールを備えたトレッキングブーツを履いたことはありません。というくらい、この靴のソール、滑らないです。
体感的には、ファイブテンのステルスソールより滑りにくいです。ステルスソールというのは、フリクション性能に定評のあるクライミングシューズ界No.1のソール。それより滑りにくいと感じさせるのだからすごいです。
たとえば、こういう濡れた岩の上。普通のトレッキングブーツなら、ズベッと滑ってしまうところですが、アルパインクルーザーはぐぐっと粘って踏ん張ってくれるのです。実際、ここでは滑りませんでした。
ほかにも、岩やら木の根やら、登山道ではいくつもの滑りポイントに遭遇しますが、明らかに滑りにくい。もちろん限界はありますが、その限界が高いという感じ。
これがその滑らないソール、トレールグリッパー。もう何年も前からモンベルの靴に採用されているので、とくに新機能というわけではなく、知る人は知っていたのでしょうが、自分的には新鮮な驚きでした。この性能はもっと知られるべきなんじゃないの?
ソールパターンに特徴はありませんが、さわってみると、普通のビブラムソールなどよりやわらかい感じがします。粘りがあるというか。このゴム質が、滑りにくさの秘訣であることは間違いないでしょう。
しかし、やわらかいということは、減りが早いと予想されます。クライミングシューズでも、フリクションと耐久性がトレードオフということは常識。履き続けたときにどうなるかはやや疑問でもあります。が、昨年から履いている、同じトレールグリッパーソールを備えたクラッグホッパーが、まだまだ十分ということを考えれば、許容範囲の耐久性は備えていると思われます。
まあともあれ、この爆発的なフリクション性能は一度体感してみる価値はあると思います。この性能があれば、多少耐久性が劣ったとしても、個人的にはOKです。
全体のバランスはイマイチ?
いいことばかり書きましたが、もちろん完璧な靴ではありません。履いていて気になったのは、少しやわらかすぎるように感じられるところ。これはゴムのやわらかさのことではなくて、靴全体の剛性の話。
たとえば、こういう段差で、もう少しカチッと踏ん張ってほしいのですが、実際にはグニャッとヨレてしまうんですよね。とくに問題を感じるのが下りのときで、靴がやわらかすぎて足が疲れるような感覚があります。
これは、硬ければよいのかというと、そう単純な話ではありません。たとえば、私が持っているサロモンのミッドカットブーツは、アルパインクルーザーよりやわらかいですが、同じような登山道を歩いても、「やわらかすぎる」みたいな違和感を覚えることはありません。逆に、アゾロのブーツでもっと硬いものも持っていますが、これもやはり違和感はありません。
たぶん、アルパインクルーザーは、アッパーとソールの剛性バランスがよくないのだと思われます。アッパーは革製で比較的しっかりしているのに対して、シャンクを含めたソール全体が少しやわらかすぎるのでしょう。
このへんは微妙かつ感覚的な話で、私が言っていることが合っているかどうかはわかりません。しかし違和感を覚えたことは事実なので、指摘しておきました。
思うに、靴作りって、感覚的なすりあわせが重要な職人的な世界なのではないでしょうか。大資本メーカーがお金をかけて開発しても、伝統ブランドの靴の完成度になかなかおよばないのは、そこに理由があるんじゃないかと。
余談ですが、7〜8年前だったか、長年スポルティバでクライミングシューズ開発に中心的に携わっていた人がスカルパに移籍した途端、スカルパのクオリティが急上昇し、いまやファイブテン・スポルティバの2強に肩を並べるほどに成長したという事実があります。
このハイテク時代、靴作りって、まだまだこういう職人的・感覚的な部分がものをいう分野のようが気がします。モンベルも、靴メーカーとしては後発の部類。微妙な完成度を磨き上げる部分においては、まだ他メーカーにかなわないんじゃないでしょうか。ザンバランとかローバーの靴って、特別なことはなにも感じないけど、問題もなにも感じないもんね。
まあしかし、問題はあれ、トレールグリッパーソールのフリクション性能は圧倒的な魅力です。滑りにくい登山靴が欲しい人には、自信をもっておすすめできます。一度お試しあれ。
【余談】
私のアルパインクルーザーは、革の質感がちょっと違って見えるかもしれません。これは、ワックスを塗っているからです。裏出し革のブーツ(アルパインクルーザーはヌバック)にワックスを塗るべきかどうかは諸説ありますが、私は塗る派です。撥水性が高まることと、耐久性アップにも役立つような気がしています。
ただし、ワックスを塗ると見た目の印象が大きく変わって重厚な感じになるので、裏出し革の軽快な印象が好きな人は要注意です。
2017年9月18日月曜日
驚異のハイフリクションシューズ
感動した!!
登山道具でこれだけ劇的な効果に感激したのは、パタゴニアのナノ・エア・フーディ以来でであろうか。モンベルの沢登りシューズ、サワートレッカーRS。もっと正確にいえば、それに使われている「アクアグリッパー」というソールの威力にである!!!
検証・フリクション
こんな感じかな。伝わりますでしょうか?
総評
ところでこのアクアグリッパー、実際に作っているのはTRAX(トラックス)というソールメーカーらしく、このメーカー、イボルブのクライミングシューズにソールを提供している会社でもあるんですよね。フリクション命のクライミングシューズ業界で生き残ってきただけに、驚異のフリクションも納得です。
2017年5月23日火曜日
スポルティバvsアゾロvsスカルパ履き比べ
ライターというのは中立であるべき存在なので、提供を受けるときにはいつも躊躇があります。提供にあたってなにか条件があることはほとんどなく、せいぜい使用感のレポートを提出するくらいなのですが、もらってしまうとそこに人情が発生してしまうのが人間というもので、わずかながらも中立性が崩れるおそれがあるからです。
その一方で、さまざまな登山道具を使った経験というのは、アウトプットのクオリティに直結するもの。2種類の靴しか履いたことがない人と、10種類を履いた経験がある人では、靴について書ける文章の深みは明らかに異なってきます。だから、中立性をいくらか失っても経験を増やすことのほうが大事だ――と心の中で折り合いをつけて提供を受けている私であります。
とはいえ後ろめたさは正直あるので、提供によって得られた成果をここで還元することによって、その心のやましさを少しでも解消したいと思います。
ライトアルパインブーツ3種履き比べ
まずはスペック比較
足型
足首のフィット感
私はくるぶしまわりの形が普通じゃないのか、ここが擦れたり痛くなったりすることが多く、足首を動かしたときに変に当たったりしないかというのは必ずチェックするポイントなのです。
そしてこれはレベルの圧勝でした。すき間なくフィットし、しかし自在に動くこの柔軟性は、あまりに気持ちよくてクセになりそう。ストレスは完全にゼロです。というか、これより足首がフィットするハイカットブーツはこれまで履いたことがないかも。トランゴもかなりいい線いっているのですが、レベルには負けます。トランゴの発売は2005年。対してレベルは2014年。9年の間の技術の進歩というものでしょうか。
逆にエルブルースは期待外れ。3足のなかでいちばん新しい靴なのに足首にはとくに工夫が見られず、作りも履いた感じも、新しさのない鈍重なもの。フィットもよくなく、最初は痛みも出ました(タンの位置を調整したりしてごまかしているうちになじんできたのか、痛みは半日で消えました)。革新性を売りにしていたアゾロだけにここはもう少しがんばってほしかったところ。ただ、レベルとトランゴの足首が素晴らしいので辛口になりましたが、一般的な水準からいえばこれが普通です。
歩行感
へんな言い方になりますが、この3つのなかではエルブルースがいちばん「まともな靴」に感じました。トランゴとレベルは良くも悪くもクセがあります。
まず、エルブルースは硬い。全体に硬めの靴です。しかしソールが硬いだけでなくアッパーも硬めなので、バランスがとれています。この結果、歩行感が自然なのです。ソールが硬くて後ろに蹴り出す歩き方はしづらいので、一歩一歩踏みしめるようないわゆる「登山靴歩き」に自然となります。歩き方が自然なせいか、靴が硬いわりには、フラットな道歩きも苦になりませんでした。ソールの形状もフラットすぎず、歩行向きにチューニングされています。正統派の登山靴という印象です。
それに対してトランゴは、ソールはエルブルース並みに硬いけれど、アッパーはかなりやわらかく、いびつなバランスの靴になっています。なまじ軽くてアッパーがやわらかいため、つい「蹴り出し歩き」をしてしまうのですが、そうするとソールの硬さがじゃまをします。結果、どうもギクシャクした歩きになってしまい、そのせいだと思うのですが、フラット路面を長く歩くといつも足の裏が痛くなります。変な力が入ってしまっている証拠だと思います。しかしトランゴのこの変なバランスは意図的なものなのです。それについては後述。
あ、ちなみに、ここで「ソールが硬い」と言っているのは、アウトソールのゴム質のことではなくて、シャンクを含めた靴底の柔軟性のことです。靴の先端と踵部分を持って思いっきり曲げてみたときにどれだけ曲がるか、みたいなこと。そして、硬いとかやわらかいとか言ってますが、普通のトレッキングブーツと比べれば、この3つどれも硬いです。「硬い」「やわらかい」は3つのなかで比較した表現なのでご注意を。
さて、話を戻して、レベルはどうかというと、この手の靴にしてはソールもアッパーもやわらかく、これは意外でした。見た目的にもスペック的にも、トランゴと同じような履き心地を想像していたのですが、それよりずっとやわらかいです。雪渓の上を歩いたことはまだないのですが、急傾斜の雪渓でどうなのかな?と疑うくらい。ただしこのやわらかさのためフラット路面の歩行感はとてもよく、林道歩きも問題ありませんでした。上高地から横尾までトランゴで歩くのは勘弁願いたいですが、レベルならいけそうです。
足裏感覚(路面の凹凸などを感知できる性能)が高いのもレベルの特徴で、ふくらんだ岩や木の根を踏んだときに瞬間的に微妙なコントロールが可能です。ソールがわずかにしなって粘る感覚もあり、エルブルースやトランゴに比べて、濡れた岩や木を踏んでも突然滑ることが少ないような気がします。ただし3つのなかでサポート性はいちばん低く、ローカットシューズのような感覚すらあります。荷物が重いと厳しいかもしれません。
急傾斜地の登攀性能
ここがこの手の靴の真骨頂というべきポイント。急傾斜地での安定性を最優先に開発し、フラットな路面での歩行性能はある程度捨てているわけなので、ここがこの種の靴の価値を決めるポイントなわけです。
トランゴを初めて履いたときのことをよく覚えています。槍ヶ岳の北鎌尾根を登りにいったときなのですが、上高地から水俣乗越を越えてアプローチ。ここまではフラットでよく整備された道が中心で、足が疲れ、「うわ、この靴、失敗したかな」と思っていたんですが、北鎌沢から北鎌尾根に取り付くと印象は一変。急傾斜地や岩場での安定性は抜群で、途中の岩でボルダリングして遊んだくらいです。
ここで生きてくるのが、靴底の硬さと軽さ。急傾斜地の登りでは、靴底全体で接地できないようなシチュエーションが増え、足裏前半分だけとか、ときにはつま先だけで小さな足場に立ち込んでいくケースが増えるわけです。このとき、やわらかい靴だとぐにゃっとなってしまって不安定なんですよね。
さてそこで、3足の靴底の硬さを比べてみました。
踵の部分を持って、思いっきり体重をかけています。それでもエルブルースはほとんど曲がりません。トランゴは少し曲がる。レベルはもうちょっと曲がる。右下の一般的なトレッキングブーツは、めちゃめちゃ曲がります。この3足と比べると、ぐにゃぐにゃというくらいです(これでも日常用の靴よりはだいぶ硬めなんですけどね)。この硬さは、雪渓を歩くときにも重要で、硬い靴ほど安定します。
ただし、硬ければ硬いほど登りやすいかというと、話はそう単純でもなく、体感としてはトランゴがいちばん急傾斜に強いです。エルブルースはがっしりした作りをしているぶん重いので、トランゴとレベルに比べると足上げの軽快性に劣るのです。急傾斜地ではこの「軽さ」はけっこう重要であります。トランゴがソールを固める一方、アッパーは軽くやわらかく仕上げているのはこのためなのでしょう。
レベルは、急傾斜地ではやや硬さが足りないように感じたんですが、やわらかいぶん、ほかのふたつより柔軟な足使いが可能です。たとえば、岩稜を歩いていて、斜めになっている場所に足をおかないといけないようなケースってよくありますよね。
レベルはこれが抜群にやりやすいのです。こういう「ごまかし」の足使いができるのが、レベルの大きな魅力です。単純な急傾斜はトランゴやエルブルースより劣りますが、あらゆる地形に対応しやすいという点では、レベルのほうが岩場での実用性は高いかもしれません。なんかクライミングシューズみたいな靴です。
グリップ性
感覚的にはレベル>トランゴ=エルブルースの順。とはいえどれも大差はないです。ラバーの質の違いはとくに感じず、パターンの違いによる性能差も感じません。レベルが靴全体がやわらかいぶんやや粘ってくれる感覚があるのと、足裏感覚がいいため、突然スパーンと滑ることが少ない感じがするくらいです。
ただしここはちょっと様子見。トランゴはソールが削れてくるとグリップ性が急激に落ち、末期は危険を感じたほどだったのです。とくに木の根が露出した路面や泥の路面に弱く、雨の日に甲斐駒ヶ岳の七丈ノ滝尾根というヤブ混じりの急な道を下ったときは非常に神経を使い、かなりヤバい思いをしました。レベルとエルブルースはこれほどではないんじゃないかとは思いますが、似たような傾向にはあると思います。
耐久性
ここについては、トランゴ以外はまだわからないのですが、おそらく、というか、ほぼ間違いなく、いちばん長持ちするのはエルブルースでしょう。なにしろこれだけがオールレザー。ソールも形状的に偏摩耗しにくそうです。
一方で、はっきりいって、トランゴの耐久性は高くありません。アッパーはとくに問題ないのですが、ソールがすぐ減ってしまうのです。軽量化とクライミング性能向上のためにパターンの浅いアウトソールを使っているため、少し減ると、前述したように急激に性能が落ちます。靴底が硬いわりにフラットな形状なので、偏摩耗しやすいのも難点です。
レベルもおそらくトランゴと同程度の耐久性でしょう。アウトソールのブロックパターンがいちばん浅いので、ソールがダメになるのも早いように思われます。
トランゴやレベルは、ある程度耐久性や汎用性を犠牲にしてもトンガッた性能を求めて作られた靴なのだと思います。「良くも悪くもクセがある」というのはそういう意味です。その点、エルブルースはエッジーな部分を抑えぎみにしてあるので、より万人向け、よりオールラウンド向けになっていると感じました。
【関連記事】
スポルティバ・トランゴS EVOのソール張り替え
用途
大きくまとめると、3つの靴の使い分けは以下のようになろうかと思います。
岩が多いルート……レベル
雪が多いルート……トランゴ
土が多いルート……エルブルース
たとえば南アルプスに行くならばエルブルースを履くでしょう。剱や穂高ならレベルかな。履いてみて初めてわかったんですが、レベルはノーマルな土の路面もそこそこいけます。以前、丹沢でレベルを履いている人を見かけて「素人はわかってないな」なんて心の中で思ったことがあるのですが、すみませんでした。
トランゴは……じつはこの靴は一般登山道ではあまりフィットするところがないのです。私は残雪期やバリエーションルート専用機として使っています。ショップやスポルティバジャパンでは「縦走をはじめとしてオールラウンドに使える靴」として売り出していますが、日本の山ではそれは当てはまらないんじゃないかと前々から思っています。普通の登山道で履いて快適な靴では決してないし、本国スポルティバの開発意図もそこにはないはずだと思うのですが……。
夏の剱岳をベースに、3つのブーツが合うコースを考えてみました。
別山尾根(剱岳ノーマルルート)
雪はなく、厳しい岩場が続く。アプローチの室堂~剱沢はマイルドな登山道。レベルで決まりでしょう。
早月尾根
ここは登ったことがないのでわからない。体力ルートなので、重荷に強く、安定感の高いエルブルースが合っているのかもしれない。下りも安心だし。
源次郎尾根・八ツ峰
難しい岩稜主体のバリエーションルート。ここはレベルの軽さとコントロール性の高さが有利かと思います。
平蔵谷・長次郎谷
いずれも急傾斜の長い雪渓を登っていって、山頂からはノーマルルートを下る。これはトランゴがいいと思います。雪渓登りの安定性と、その後の急傾斜の登山道下りのバランスにいちばん優れているんじゃないかと。
北方稜線
岩場、ガレ場、草地、雪渓など路面コンディションは盛りだくさん。迷うところだけどトランゴかな……。
剱沢~仙人~欅平
ここはエルブルースがよさそうだ。剱沢の雪渓下りも安心。その後の長い登山道歩きや水平歩道も問題なし。テント縦走などで荷物が重いときならなおのことエルブルース。
まとめ
3足履き比べて、どれがいちばん気に入ったかというと……、やっぱり愛用機のトランゴでした。なんといっても、足型が自分にバッチリ合うこと。履いていて気持ちがいいし、微妙な足場でも不安を感じにくいのは、機能差というよりも足にフィットしているからこそだと思います。クセの強いじゃじゃ馬ではありますが、こういうピンポイントな道具というのが私は好きなのです。
レベルもかなり攻めた靴で好みではあるのですが、足型の不一致が難点。ここさえ合えば、勝負靴をトランゴからこちらに乗り換えてもいいかも。雪渓上での安定性はたぶんトランゴに劣りますが、岩場での軽快性はこちらのほうが上。微妙な脚さばきを可能にするコントロール性の高さがあり、フラット路面がトランゴより歩きやすいのもいいところです。
エルブルースは個人的な好みとしてはクセが足りない。私みたいに靴を何足も持っていて、行く山によってあれこれ履き分けている人にとっては、中途半端に感じてしまうのです。ただしそれは裏を返せば、もっともオールラウンドに使える靴ということであり、他人にはいちばんおすすめできる靴ということでもあります。
ところで、トランゴは今シーズン、ついに直系の後継モデルが出ました。その名もトランゴタワーGTX。雑誌の撮影で借りたときに一度足を入れてみたことがあるだけで、詳しいことはわからないのですが、S EVOと大きな違いは感じませんでした。素材やソールは変わりましたが、基本構造に大きな変更はないようです。S EVOの完成度が高くて、改良する箇所があまりなかったんじゃないか……という気がしますが、どうなんでしょうか?
【6月3日追記】
なんとなく違和感があったのですが、いま気づきました。エルブルースの本当の競合は、スカルパでいえばシャルモ プロ GTXでしたね。スポルティバにはズバリの競合がない感じ。強いていえば、トランゴ アルプ エボ GTXですが、これはトランゴS EVOとエルブルースの中間的な性格の靴。
トランゴやレベルにズバリ競合するアゾロの靴は、本国にありました。
Climbing boot FRENEY XT GV black/silver
640gとレベルより軽量。なかなかよさそうに見えるんですが、日本国内では展開がないのです。こうして見ると、アゾロって日本には厳選されたごく一部のモデルしか入ってきていないんですね。もったいない。
















































