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2016年9月21日水曜日

わかりやすい文章は武器だ

本日話題になった衝撃的な記事。サッカー専門誌で、当事者に取材せずに創作でインタビュー記事が作られていたという告発だ。

サッカー専門誌「エア取材」横行か――作家の検証と告発


それに対して、告発された側の雑誌編集長がすぐさま反論。取材経緯を細かく説明することで、事実無根であることを主張している。

『エアインタビュー疑惑』という捏造記事について


主張は真っ向対立。いったいどちらが真実を語っているのかさっぱりわからない。雑誌作りにおける不祥事というのは、職業柄ある程度見当がつくことが多いけれど、この件に関してはまるでわかりません。


ただ、ふたつの記事を読んで感じたことがひとつ。


前者の記事が論旨が明快でわかりやすいのに比べて、後者の反論記事はいまひとつ内容がすっと頭に入ってこない。話をごまかそうとして不誠実に書いている印象はないのだけど、ちょっとわかりにくくもどかしい。そのもどかしさはかすかなイラつきにつながり、わずかでも自分をイラつかせたことによって、話の真偽とは関係なく、感情的にそちらに味方したくなくなってしまう。


今回のふたつの記事は、いまのところ論証している事実の強さに差はないように思えるのだけど、このわかりやすさの差によって、前者に肩入れする読者のほうが多いような気がする。


前者は入念に準備した乾坤一擲の告発。それ対して後者は、急遽一日で書かざるを得なかった反論なので、文章の完成度的に不利な立場であるのは同情すべきところ。しかしそれにしても、もう少しわかりやすく書けなかったかな……。


わかりやすい文章を書けるというのは、大きな力であるのだなあと思った一件でした。

2016年9月12日月曜日

出版編集の共通ルールが欲しい

今回はライターとしての業界ネタを。


ウエノミツアキ氏「出版編集の共通ルール作ってみようよ?」


たまたまこんなページを読みました。5年近く前の投稿のようで今さら遅いかもしれないけど、もう全力で同意です。このウエノミツアキさんって知らない人ですが、問題意識が同じで親近感わいちゃったな。


これ、そもそも、「編集」という仕事の曖昧さに由来していると思うんですよ。「編集」って仕事はなんなのか、とてもわかりにくい。ライティング(=執筆)についてはほとんどの人が同じようなイメージをもっていて、そしてそれはほぼ正しいのだけど、編集という仕事の具体像は、業界人以外はまず知らないと思います。業界人ですら明確にわかっていないのです。だからこういう問題が起こります。


たとえば、雑誌をはじめとした印刷媒体を作るときには以下のような作業が必要になります。

1)企画立案・・・どういうテーマをどれくらいの分量でやるか決める
2)キャスティング・・・企画に必要な人員を確保
3)構成案作成・・・具体的な構成要素を考える
4)取材・・・インタビュー、資料収集など
5)ビジュアル取材・・・写真撮影、イラスト作成など
6)ライティング・・・原稿執筆
7)デザイン発注・・・デザイナーにページレイアウトをしてもらうための整理
8)校正・校閲・・・間違いがないか確認。写真の色を確認する色校正も
9)校了・・・最終確認
10)印刷・・・印刷会社で印刷
11)発送・・・完成物を協力者や配送先に発送
12)宣伝・・・成果物のPR

このうち、編集者の役割は、通常1〜3、5、7〜9です。会社やモノによっては11と12も担当します。それ以外の4と6はライターが担当し、5は編集者のディレクションにしたがってカメラマンやイラストレーター、7はデザイナーが作業。10は印刷会社が行ないます。


こうしてみると、編集者の仕事ってめちゃくちゃたくさんありますね。編集者ってデスクにふんぞり返って電話ばっかりしているイメージしかないかもしれないけど、真面目にやるとめちゃくちゃ忙しいんですよ。雑誌のクオリティの7割は編集者によって決まると思っています。いちばん近いイメージは映画監督なのかなとよく思ったりもします。


ところが、この役割分担が場によって違っていて、会社や編集部によっては、上の3〜8までライターの仕事となっている場合もあります。それはそれで悪いことではないのだけど、分担が外部の人には明確でないことが多いんですよ。そこですれ違いやトラブルが起こる。


編集者や編集部って「自分のやり方」を囲い込む傾向が強く、ノウハウを共有しようという気風が異常に少ない世界なので、ウエノさんが書いているとおり、そのすれ違いは内輪の人は気付かない。僕も社員編集者時代はよくわかっていませんでした。フリーになって、いろいろな会社と仕事をするようになってから初めて強く感じていることです。さらに、この問題は広告制作やネット業界でもある程度同じということもわかりました。


「役割分担がうまくできるというだけで、その人はかなり仕事ができるといえる」ということを以前なにかで読んだことがあるんですが、まったくそのとおりだなと思います。僕はライターの立場で仕事を請けることもあれば、編集者として仕事を依頼することもあるので、このへんの問題はすげー気になります。


なので、そういうルールブック欲しい!
ウエノさん、本作りましょう!