2016年2月18日木曜日

映画『エヴェレスト 神々の山嶺』マニアックメモ



ただいま発売の『岳人』で、映画『エヴェレスト 神々の山嶺』に主演している岡田准一さんのインタビュー記事を書いたのですが、映画についての小ネタをいくつか聞いたのでメモ。


『岳人』を発行しているのはモンベル(正確には子会社のネイチュアエンタープライズ)。そしてこの映画、山岳装備をモンベルが提供しているのです。そういうわけで知ることができた裏話。映画の本筋には関係しない道具のネタですが、山好きの人だったらちょっとニヤッとできる話かと思います。映画公開は3月12日でまだ先ですけど、見る機会があったら、こんなところにも注目してみると面白いんじゃないでしょうか。


岡田准一さんが背負っているザックは世界に1個

映画の中で、岡田さん演じる深町誠は黄土色のザックを愛用しています。これ、モンベルのアルパインパック50というザックです。ただし、ここですぐさま「アルパインパック50」で検索をかけた方はお気づきかと思いますが、この色はいまは売られていません。昨年モデルの旧カラー(HONEYという色)なのです。


そしてさらに、前面に入っている「ZEROPOINT」というロゴが、映画使用品と商品では異なっています。映画の舞台設定は1993年なので、ZEROPOINTのロゴは古い昔のものに替えているそうなのです。だから映画使用品と同じザックはほかに存在しないというわけです。


そういうわけで、まったく同じザックを入手はできないんですが、カラーに関しては、登山用具店の店頭在庫としてまだ残っているものがあるかもしれない。欲しい人は急いで探してみよう。


あ、ロゴもあれか。ヤフオクとかで旧ロゴのザックを根気強く探せば完全レプリカを作ることも可能か。さすがにそこまでやる人いないか。


エベレスト登攀シーンで使われているアックスはKAJITAX



これが出てきたときは「やるな!」と思いました。このアイスアックス、80年代から90年代にかけて大ヒットしたモデルで、みんなこれ使ってたのです。映画の時代設定を考えればこれしかないでしょう。わかってる人が小道具を選んだなと感心しました。


正式名称は「カジタックス・スペシャリスト Mark 2」。映画で使われているのは、90年代にヒットしたMark 2のほうです(初代スペシャリストは80年代)。私もこれ持ってます。


ちなみに、これまだ現役で販売されてます。いまメーカーのサイトを見たら、映画で使われているストレートシャフトはもうないみたいですが、ベントシャフトのタイプはまだ買えます。まあ、いまとなってはもっと高性能のアックスがいくらもあるので、これをアイスクライミングなどに使う人はいないですが、バリエーション的なルートではけっこう使えます。私もごくたまに出動させることがあります。コンパクトで取り回しやすいんですよね。


そのほか

1990年代前半の山道具をそろえるのは意外と苦労したそうです。もっと古いものであれば、整理して保存している人もいるけど、1990年代前半のものというのはクラシックな価値があるわけではなく、かといって現役で使われているほど新しくもない。いちばん中途半端な時代だというのです。


そう言われれば確かにそうかも。アックスやカラビナなどの金属製品は劣化しにくいのでまだ持ってる人も多いけど、ウエアやザックなどはだいたい捨てちゃってますからね。そのわりには、映画に出てくる山道具の考証に違和感はなかったので、小道具スタッフはいい仕事をしているのだと思います。


あと、岡田さんが身につけているウエアは本人が選んだそうです。一度モンベルが一式そろえたのですが、映画の設定や時代的に違和感を持ったらしく、岡田さん自らモンベルショップに出向いて選び直したとのこと。このへんは山登りやってる人ならではですね。






【2月19日追記】

なんと! まさに映画で使った小道具なども展示したイベントが開催されるそうですぞ! 

撮影で実際に使用した衣装や小道具、映画の内容を紹介し、高度5200M級の世界が広がる写真パネルや映画メイキング映像などの展示・放映に加え、ここでしか見ることが出来ない、岡田准一さん自身がエヴェレストロケ中に撮影した写真のパネル展示など、映画『エヴェレスト 神々の山嶺』の世界を余すことなく、感じていただける展示イベントです。 

詳細はこちら


あまりのタイミングに、「イベントの宣伝エントリーだったんじゃないの~」と言われそうだけど、まったく関係ない偶然ですから! むしろ、「オレのエントリー読んで急遽企画したんじゃないの?」と言いたい。これほんと!


2 件のコメント:

  1. 興味深い話をありがとうございました。
    先日、映画を完成披露試写会で鑑賞し、その後に石川直樹さんの「ぼくの道具」を読んでいたので、映画内でのウェアや小道具類の年代の考証はどうなっているのかなと気になっていたので、その回答が見つかった気分で嬉しかったです!

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    1. 考証は基本的に違和感なかったと思います。この映画の舞台になっているエベレスト南西壁に昔実際にトライしていた八木原圀明さんという方が山岳アドバイザーを務めているので、装備についてもこの方のアドバイスを絶対取り入れていると思います。八木原さん、いまは谷川岳で山岳博物館の館長をしているので、道具についても詳しいはずですしね。

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