2016年12月25日日曜日

アウトドアメーカーが食品?


アウトドアメーカーのパタゴニアが食品事業を始めたことが話題となっております。




添加物や遺伝子組み換え原料を排し、人体や環境によい食品を追求したとしています。環境問題に関心が高く、これまでにもさまざまな試みを行なってきたパタゴニアならではの取り組みといえるかもしれません。


アウトドアメーカーが食品事業というと聞いたことがなく、さすがユニークなことをやるなと思っていたんですが、現物を手に取っていろいろ眺めていたら、あっ! と気づきました。これまでもあったじゃん。しかもオレ、よく買ってたじゃんと。








同じくアウトドアメーカーのモンベルが出しているアルファ化米です。自宅からいちばん近い山道具店がモンベルショップということもあって、山に行くときはよくこれを買っていたのです。山道具置き場を見たらストックも2袋ありました。


確かこれ、もう数年前から売られていると思います。モンベルは自社でレストラン(スパイスマジック)もやってるし、食品事業に乗り出したのはモンベルのほうが早かったのである! さすがモンベル!


2016年12月13日火曜日

人名はフルネームが基本だ

カメラマン 中西氏が語るαシリーズの魅力と解説

こんな告知を見ました。


「中西氏」ってだれ? カメラで中西というと、中西俊明さん?(山岳写真家です)と思ってしまったけど、中を見たら中西学という、私が知らない人でした。


雑誌編集部にいたときに、ライターや部下の原稿によく指摘をしていたのが、「人名はフルネームで書け」ということ。2回目以降は下の名前を省略して「中西氏」でもいいけれど、初出はフルネームが基本。これは不特定多数の人に読ませる文章の基本原則なのです。


でもなぜか下の名前を省略してしまう人が多い。本当に多い。なぜそうしてしまうかというと、書いている自分がよく知っている人だから。わざわざ下の名前まで書かなくてもわかるだろと、無意識のうちに略してしまうのです。だけど、それを読んでいる人が(たとえば)中西学さんを知っているとはかぎらないわけです。つまり、これをやってしまうということは読者のことに意識がおよんでいない証なのです。


なんか説教くさくなってしまったけど、職業柄、このことはものすごく気になります。人名はフルネームで書こうぜ!

2016年10月22日土曜日

デトノアイソメに行きたい

仕事の筆が進まないので、珍しくブログ記事の連投を。


昨日登った八海山の西側には、気になる地名がたくさんあります。


まずはこれ。


なんだこりゃ? 地名なのか? それともなんかの記号みたいなものなのか? でも国土地理院の地形図に表記されているので、れっきとした地名と判断するしかない。


いったい「デトノアイソメ」とは何なのだろうか。漢字で書くとたとえば「出戸乃愛染」? いや、切る場所が違うのかもしれない。デ・トノ・ア・イソメでさしずめ「出殿阿磯目」あたりか。山の中だから磯目はないか……。


とにかくわけがわからない。山の地名には変なものがときおりあるが、これはかなりレベルが高い。同じ新潟の早出川にあるガンガラシバナに匹敵する。「わけがわからない」というだけで、私はそれに対する興味が抑えられなくなってしまう。なぜ「デトノアイソメ」なのか知りたい。そしてデトノアイソメをこの目で見てみたい。


以前、越後駒ヶ岳と中ノ岳を登ったときにもめちゃくちゃ気になっていたけれど、今回、地図を見ていて久しぶりに思い出した。思い出して稜線上から撮った写真がこれ。


画面中央、沢の合流点となっているところがおそらくデトノアイソメ。うーん、行ってみたいぞ! 気になりすぎてネット検索したところ、行っている人はやっぱりいて、現場には別に何もないらしいけれど。





次に、八海山と中ノ岳を結ぶ稜線上にあるこれ。


稜線上にV字に切れ込んだコルになっている。こういう地形に「ノゾキ」と名付けられるケースは他にもあるので、ここは「オカメ・ノ・ゾキ」ではなく、間違いなく「オカメ・ノゾキ」だろう。それにしてもなぜオカメなのだ。オカメがコルから崖下を覗き込んでいる姿が頭に浮かんでしまう(ところでオカメってなんだ)。


ここは名前だけでなく、地形的にもかなり強烈で、ものすごいV字コルになっている。北アルプスにあったら絶対にオカメキレットと呼ばれていただろう。

このアングルからだとわかりにくいけれど、稜線のいちばん低い場所がオカメノゾキ


越後三山縦走のコースでもあるけれど、このオカメノゾキの区間はハードなことで有名。なにしろオカメノゾキの標高は1240mくらい。1778mの八海山入道岳から500m以上下って、その後、中ノ岳までは一転して怒涛の800mアップ。こんなハードなアップダウン、南アルプスにもありません。

オカメノゾキから中ノ岳への800m超アップ。もはや壁のよう。見ただけで吐きそうです


この区間、私はまだ歩いておりません。一度は行ってみたいのだけど、覚悟がいりそうだな〜。





ほかに、越後駒ヶ岳のすぐ近くにも「フキギ」なんていうピークがあります。


ここは地形的にもかなり特異です。フキギから西(左)に延びる稜線と、そのすぐ下の沢(オツルミズ沢)の関係性をよく見てください。こんなへんな地形見たことない。名前だけじゃなくて、この地形を自分の目で見てみたい。





さて、越後三山周辺ではないし、国土地理院図にも表記がないのだけど、いまのところ私が知っている「変地名」のなかで最強と目されるのが、奥秩父金峰山近くにある「チョキ」です。標高1883mのピークなんですが、なぜチョキなんだ。山名でチョキなんてありなのか。そもそもどういう字を書くんだ。猪木? これじゃイノキか。いや、チョキと読むこともできるぞ。まさかパーはあるのか。それならばグーも絶対に欲しい……。


変地名は、それだけでさまざまな想像(妄想)を広げてくれる素晴らしいものでもあるのです。



山岳写真のウソ

昨日(21日)は八海山に登ってきました。デスクワークが続いてストレスがたまってきたので、突然の思いつきで単独行。本当は木曜日に行くつもりだったのだけど、天気がイマイチっぽかったので翌日に。平日でもこんなふうに思いつきひとつで動けるのがフリーランス最大の醍醐味だと思っています。そのかわり土曜日のきょうは仕事しているのだけど。


コースは、ロープウェー〜八海山〜阿寺山というもの。八海山はさすがに人気の山だけあって、平日だというのにけっこうな数の登山者が来ていました。ただ、私をのぞいてほぼ全員がロープウェーからの往復だったようで、阿寺山方面はひとりの登山者にも会わず。こちらは登山道も荒れ気味で、静かなもんでした。


個人的お目当てのひとつだったのが、八海山の紅葉。昔、この隣の中ノ岳で人生最高の紅葉を見たことがあるので、このへんの紅葉の美しさには期待していたのです。


その期待に違わぬ美しさ! 八海山頂上稜線から見下ろした山肌ですが、どうですか! 見事でしょう!




……というのはウソで、実際はこんな感じでした。



最初の写真は「風景モード」という、彩度とコントラストを上げた設定にしているので、ビビッドで派手な発色になっています。実際の見た目に近いのは2枚目の写真のほうです。


山の風景ってのは、こういうふうに彩度とコントラストを上げると簡単に見栄えのいい写真になるのです。やり方は簡単。カメラの設定を「風景」とか「ビビッド」とかにしておくだけ。インスタグラムアプリとかは、イイ感じのプリセットがいっぱいあって撮影後に選べるようになっていますが、要はこういうことをやっているわけです。


これはプロのカメラマンも多かれ少なかれみんなやっています。紅葉の取材に行って「紅葉イマイチだったな」というときでも、カメラマンから写真をもらったら素晴らしい紅葉が写っていた、なんて経験も一度や二度ではありません。もはやデジタルはなんでもできるのです。


で、デジタルだけではありません。フィルム時代、山の撮影ではフジの「ベルビア」というフィルムが圧倒的な人気を誇っていました。風景写真家や山岳写真家の8割から9割はベルビアを使用していたと記憶しています。このベルビアというフィルムはどぎつい発色が特徴で、それこそ冒頭の八海山の写真のような色が出ました。空は完璧に青く、樹々はすばらしく緑で、紅葉を撮れば、どうってことのない紅葉が錦の海になったものです。




さて、紅葉についての山岳写真のウソ、もうひとつあります。それは、紅葉がパッとしないとき、「紅葉がきれいな木をひとつだけ見つけ、それを手前に配置する」というものです。


具体的な例で説明しましょう。


これは2014年の9月末に裏剱の仙人池という、紅葉撮影の名所で撮ったものです。山旅ツアーのチラシに使えそうな素晴らしい紅葉だと思いませんか。


しかし、この写真を撮った場所から3m左に移動して撮ったものがこちら。


俄然、冴えない風景になってしまいました。しかし、当日の現場の印象としてはこちらのほうが実を表しています。




もうひとつ、こういうのもあります。


これは2013年の9月20日ごろに剱沢で撮ったものですが、これだけ見ると、周囲一帯が紅葉に包まれているように思えます。


しかしここからぐーっと引いて周囲一帯を写すとこんな具合でした。


「コレ」と記したのが、1枚目に写っているオレンジに紅葉した木。豆粒のごとくで、他はまだ青々としており、紅葉というにはまだ早すぎる感じであることがわかると思います。



雑誌に載っているような紅葉の山岳写真は、上に書いた2点のどちらか、あるいは両方をやっているものがほとんどといっても過言ではありません。逆に言えば、これらをやるだけで、あなたの紅葉写真のインパクトは倍増するはずであります。さらに言えば、インスタグラムやフェイスブックのタイムラインに流れてくる写真に「お! すごい!」と早合点して出かけたところ、大したことなかったという悲喜劇を防ぐためにも。。。

2016年10月19日水曜日

白馬岳に新しい登山道ができる!?

白馬岳新ルート検討 雪不足の大雪渓 影響見通せず


不安定な状態が続いている白馬大雪渓についに見切りをつけ(?)、新しい登山道を作ることが検討されているらしい。


これが実現されれば、北アルプス久々の新登山道ということになる(栂海新道以来ということになるんじゃないかな)。ちょっとワクワクするニュースだ。


と同時に、歴史ある大雪渓ルートが廃道ということにもなってしまうのか。それはそれで寂しい。




ところで記事の図によれば、新登山道はこんな感じになるのかな。







地形図を眺めていたら、その左にもっときれいな尾根があることに気づいた(緑線)。



こっちのほうがラインとしてはすっきりしているんじゃないかと思うのだけど、どうなんだろう。ほぼ休みなしの1000m一気登りになるからきつすぎるのかな。それとも、尾根最上部に崖記号が認められるので、通行困難な道になってしまうのか。


地図を眺めながら、こうしてルートプランをあれこれ妄想しているときがいちばん楽しいね。



2016年10月13日木曜日

山岳ガイドが憧れの職業

伊藤 伴。日本最年少にしてエベレスト、ローツェの連続登頂を成し遂げた男---その2


今年5月、エベレスト日本人最年少登頂記録を作った大学生、伊藤伴さんのインタビュー記事です(最年少記録はその直後に南谷真鈴さんに塗り替えられてしまいましたが)。


いちばん印象的だったのは、将来の夢を聞かれて「山岳ガイドになりたい」と答えているところ。


時代は変わったなあと思うのです。


昔は、「植村直己さんのような冒険家になりたい」とか「世界的なクライマーになりたい」という夢を語る若者はいても、「ガイドになりたい」という人はまずいなかった。そのころ(私が若い頃だから25年くらい前)は、山岳ガイドというと、登山にのめり込みすぎてまともな社会生活を送れなくなった人が生活のために仕方なくやる職業、というイメージが強かったんです。プロ意識も低そうで、とても憧れるようなものではありませんでした。


でも今では、19歳の若者が将来の夢として山岳ガイドをあげるのも十分ありえる話だ。伊藤さんの師である近藤謙司さんとかかっこいいもんね。私の知っているところでは、長岡健一さんとか花谷泰広さんとかも同じ。彼らは「仕方なく」ガイドをやっているのではなく、プロとして意欲的に取り組んでいる。そして大きいのは、経済的にきちんと成り立たせているところ。昔のガイドのようにその日暮らしでは憧れようもないですからね。


10代のときにフランスでガイド修行をして資格も取った江本悠滋さんが言うには、フランスでは山岳ガイドが少年の憧れ職業のひとつだそうです。自分もそうなりたくてガイドの道に進むことにしたと。日本もそういう社会にしたいと昔から言ってました。


そういう過去を思い返すと、時代はずいぶん変わった。伊藤さんの言葉はその象徴のように聞こえたのでした。

2016年9月21日水曜日

わかりやすい文章は武器だ

本日話題になった衝撃的な記事。サッカー専門誌で、当事者に取材せずに創作でインタビュー記事が作られていたという告発だ。

サッカー専門誌「エア取材」横行か――作家の検証と告発


それに対して、告発された側の雑誌編集長がすぐさま反論。取材経緯を細かく説明することで、事実無根であることを主張している。

『エアインタビュー疑惑』という捏造記事について


主張は真っ向対立。いったいどちらが真実を語っているのかさっぱりわからない。雑誌作りにおける不祥事というのは、職業柄ある程度見当がつくことが多いけれど、この件に関してはまるでわかりません。


ただ、ふたつの記事を読んで感じたことがひとつ。


前者の記事が論旨が明快でわかりやすいのに比べて、後者の反論記事はいまひとつ内容がすっと頭に入ってこない。話をごまかそうとして不誠実に書いている印象はないのだけど、ちょっとわかりにくくもどかしい。そのもどかしさはかすかなイラつきにつながり、わずかでも自分をイラつかせたことによって、話の真偽とは関係なく、感情的にそちらに味方したくなくなってしまう。


今回のふたつの記事は、いまのところ論証している事実の強さに差はないように思えるのだけど、このわかりやすさの差によって、前者に肩入れする読者のほうが多いような気がする。


前者は入念に準備した乾坤一擲の告発。それ対して後者は、急遽一日で書かざるを得なかった反論なので、文章の完成度的に不利な立場であるのは同情すべきところ。しかしそれにしても、もう少しわかりやすく書けなかったかな……。


わかりやすい文章を書けるというのは、大きな力であるのだなあと思った一件でした。

2016年9月12日月曜日

出版編集の共通ルールが欲しい

今回はライターとしての業界ネタを。


ウエノミツアキ氏「出版編集の共通ルール作ってみようよ?」


たまたまこんなページを読みました。5年近く前の投稿のようで今さら遅いかもしれないけど、もう全力で同意です。このウエノミツアキさんって知らない人ですが、問題意識が同じで親近感わいちゃったな。


これ、そもそも、「編集」という仕事の曖昧さに由来していると思うんですよ。「編集」って仕事はなんなのか、とてもわかりにくい。ライティング(=執筆)についてはほとんどの人が同じようなイメージをもっていて、そしてそれはほぼ正しいのだけど、編集という仕事の具体像は、業界人以外はまず知らないと思います。業界人ですら明確にわかっていないのです。だからこういう問題が起こります。


たとえば、雑誌をはじめとした印刷媒体を作るときには以下のような作業が必要になります。

1)企画立案・・・どういうテーマをどれくらいの分量でやるか決める
2)キャスティング・・・企画に必要な人員を確保
3)構成案作成・・・具体的な構成要素を考える
4)取材・・・インタビュー、資料収集など
5)ビジュアル取材・・・写真撮影、イラスト作成など
6)ライティング・・・原稿執筆
7)デザイン発注・・・デザイナーにページレイアウトをしてもらうための整理
8)校正・校閲・・・間違いがないか確認。写真の色を確認する色校正も
9)校了・・・最終確認
10)印刷・・・印刷会社で印刷
11)発送・・・完成物を協力者や配送先に発送
12)宣伝・・・成果物のPR

このうち、編集者の役割は、通常1〜3、5、7〜9です。会社やモノによっては11と12も担当します。それ以外の4と6はライターが担当し、5は編集者のディレクションにしたがってカメラマンやイラストレーター、7はデザイナーが作業。10は印刷会社が行ないます。


こうしてみると、編集者の仕事ってめちゃくちゃたくさんありますね。編集者ってデスクにふんぞり返って電話ばっかりしているイメージしかないかもしれないけど、真面目にやるとめちゃくちゃ忙しいんですよ。雑誌のクオリティの7割は編集者によって決まると思っています。いちばん近いイメージは映画監督なのかなとよく思ったりもします。


ところが、この役割分担が場によって違っていて、会社や編集部によっては、上の3〜8までライターの仕事となっている場合もあります。それはそれで悪いことではないのだけど、分担が外部の人には明確でないことが多いんですよ。そこですれ違いやトラブルが起こる。


編集者や編集部って「自分のやり方」を囲い込む傾向が強く、ノウハウを共有しようという気風が異常に少ない世界なので、ウエノさんが書いているとおり、そのすれ違いは内輪の人は気付かない。僕も社員編集者時代はよくわかっていませんでした。フリーになって、いろいろな会社と仕事をするようになってから初めて強く感じていることです。さらに、この問題は広告制作やネット業界でもある程度同じということもわかりました。


「役割分担がうまくできるというだけで、その人はかなり仕事ができるといえる」ということを以前なにかで読んだことがあるんですが、まったくそのとおりだなと思います。僕はライターの立場で仕事を請けることもあれば、編集者として仕事を依頼することもあるので、このへんの問題はすげー気になります。


なので、そういうルールブック欲しい!
ウエノさん、本作りましょう!

2016年8月1日月曜日

スポルティバ・トランゴS EVOのソール張り替え


超愛用しているお気に入りのブーツスポルティバ・トランゴS EVO GORE-TEXのソールを張り替えました。なんとなくだましだまし使っていたのだけれど、つま先がすり減りすぎてアッパーにもダメージを与えそうになってきたことと、滑りやすくてさすがに危険を感じてきたので、ついに思い切ってリソールをすることに。


ソールを張り替えて使うべきか、新しいブーツに買い換えるかは少し迷いました。が、このブーツが非常に気に入っていたので変えたくなかったことと、ソールの張り替えをしたことがなかったので、話のタネに一度やってみようという思いから張り替えを決断。


張り替えを依頼したのは、このブーツを買ったICI石井スポーツ登山本店。張り替えの依頼はそれなりにあるようで、スムーズに受け付けてくれました。費用は1万5000円から2万円くらいということで、状態によって変わるそうです。見積もりを出しましょうか?と言われたのですが、この際、多少高くなってもいいやと思って、「3万円以下なら見積もり不要です」と答えて、価格交渉は省略しました。


日数は1カ月くらいかかるということだったのですが、25日くらいで仕上がりの連絡がありました。最終的な値段は税込み2万391円。安めの靴なら1足買えてしまう値段で、高いといえば高いですよね。




しかし高いだけあって仕上がりには満足。これが張り替えアフター状態。冒頭のビフォー状態と比べてみてください。見た目の印象もかなりシャキッとしました。




ソールのエッジはびしっと立って、破れかけていたつま先のランドラバーもまるっと新品になっていました。




アウトソールだけでなく、ミッドソールごと交換。コバのパーツも新品になっていました。スポルティバ純正のマーク付きです。もともとミッドソールは黄色、コバはグレーだったのだけど、ミッドソールがグレー、コバが黄色の逆に変わっていました。しかしデザイン的にはこのほうが締まった感じがして、むしろよかったです。



純正仕様でない独自の張り替え業者もあるようなのですが、純正ルートで頼んでよかった。だって、いくら安いといっても、あのスマートなトランゴがこんな鈍重な姿になって戻ってきたら泣くに泣けませんぜ。


では以下に新旧の比較を。すべて左が張り替えビフォー、右がアフターです。









すっかりくたびれていたトランゴが見事復活! 使い込んだいい感じのヤレ具合と新品ソールの切れ味が同居して、見た目の雰囲気もさらに上がりました。たんなるピカピカの新品よりこちらのほうがカッコよく、思い入れもひとしおに。大満足でございます!


ところでこれ、私は登山ライターという職業上、メーカーにダイレクトで安く頼むこともやろうと思えばできるのですが、一般ユーザー同様に普通にお店に頼みました。メーカーダイレクトでやるとやりとりが少し面倒なのと、特殊な依頼方法をしてしまうと、一般的な張り替え体験にならず、今後、ソール張り替えの記事を書く機会があったときに正確なことが書けないなと思ったことが理由です。


じつは現在発売中のPEAKSにこの張り替えのことをちらっと書いているのですが、これは、PEAKS編集部員に「張り替えしたよ」と何の気なしに話したところ、「そのネタ使わせてください!」と頼まれてしかたなく書いただけなのであります。


なので、この張り替えには仕事モードは一切含まれておりません。ICIの人には私の正体はバレていなかった(はず)なので、私の靴をとくに念入りに仕上げてくれたわけでもありません。一般ユーザーの方が張り替えをしても同じ仕上がりになるはずですよ。



【追記】

スカルパ・レベルと、アゾロ・エルブルースと比較レビューしました。

スポルティバvsアゾロvsスカルパ履き比べ


2016年7月15日金曜日

長野県で登山届が義務化されました

本日15日発売の『山と溪谷』8月号に、長野県登山安全条例についての記事を書きました。長野県内の山168山で登山届が義務化されるということで、注目を集めていた条例です。条例施行は7月1日。


記事はモノクロ3ページという地味なものなのですが、長野県庁にまで取材に行って手間をかけました。わかりにくい条例を噛み砕き、この条例の本質はなんなのか、登山者としてはどう対応すればよいのかを説明しております。今月のヤマケイのなかでは必見の記事かと思います。すごくわかりやすいです。なぜわかりやすいのかというと、たぶん筆者が森山憲一であることが最大の理由かと思います。


長野県登山安全条例

冗談はさておき。


この条例では、冒頭に書いたように、長野県内の主要な山168山で新たに登山届を義務化するということが定められています。その登山届が必要になるのはどこなのか。それが非常にわかりにくいです。まずはここを見てください。


長野県で登山を楽しまれる際は、「登山計画書」を提出しましょう!


ずらっと山のリストが出てくるんですが、文字だけなので、ここがまずわかりにくい。さらに、条例の対象となるのは、もう一段決まり事があります。このあたりかなり複雑なので、詳しくはヤマケイの記事を読んでください。


ただし、記事にも書いたんですが、沢登りやクライミングをする人、あるいは長野県在住の人などをのぞけば、これらの決まりを正確に理解する必要はないかなと思いました。「長野の山に登るならば、いつでもどこでも登山届が必要」と覚えておけばOKです。条例の対象外となるようなところは全国的にはマイナーな山ばかり。登山前にいちいちこの複雑な条例を読み解いて「この山は条例対象かな」と調べるよりも、「どこでも必要」と機械的に覚えておいたほうが、トータルで手間がないということです。


登山届


記事では若干批判めいたニュアンスのことも書きましたが、それは条例に関して少々疑問な点があるだけで、登山届自体には、私は賛成の立場です。条例のあるなしにかかわらず、絶対出したほうがいいです。理由は、自分のためになるからです。


万一遭難してしまった場合、登山届が出ていなければ、救助者はどこを探していいのかわかりません。よくあることなんですが、「山に行ってくる」とだけ言って家を出たまま帰ってこないという通報が、家族から警察にくるそうです。だれか仲間と行っていればまだしも、これが単独だと、探しようはほとんどないわけです。だって、どこに行っているのかさっぱりわからないのだから。実際、このまま行方不明となって数ヶ月後に遺体で偶然発見されるとか、あるいは見つからずじまいという事例もいくつもあります。


遭難してピンチに陥ったときの自分の心理を想像してみれば、その重要性はもっと理解できるかと思います。たとえば、ひとりで歩いているときに、山深くだれも来ないような谷間に滑落して動けなくなってしまった。幸いまだ息はあるが、かなり重傷でこのまま何日もつかはわからない。携帯電話は圏外だ。叫んでも人が通りかかる気配はゼロ。よほどの幸運でもないかぎりはここでゲームオーバー。


しかし登山届を出してさえいれば、この絶望的な状況でも、わずかな望みは残るわけです。だれかが救助に来てくれるかもしれないと。


登山届というのは、エマージェンシーキットや山岳保険みたいなもの。私はそういう認識です。「出せ」と言われるから出すようなものではなくて、出さないと自分が困るから出す。そういうものだと思っています。



登山届を簡単にしたい


とはいえ、登山届を出すのはめんどくさい。はっきり言ってかなり面倒くさいです。登山届の提出率は10%くらいとよく言われます。出していない90%のうち、面倒だから出さなかったという人が半分くらいはいるんじゃないんでしょうか(残りは登山届の存在を知らなかったとか、ポリシーとして出さないとか)。


私は大学探検部というところで登山を始め、そこでは、どこかに行く場合、必ず部に届を出すのが決まりでした。はじめからそういうものとして登山を始めたので、登山届を書くのはかなり苦にならないほうですが、それでも面倒くさいです。時間なくて書かないまま行ってしまうこともあります。


でもやっぱり出すべきで、そのために、登山届をできるだけ省力化することを考えてきました。やっていたのは、パソコンで書式を作っておいて、その都度必要なところだけ書き換えるという方法です。これでかなり手間は軽減されましたが、もっと簡単にしたい。


昔、ニュージーランドに行ったときにそのヒントを見つけました。ニュージーランドの山には、どの登山口にも登山届の用紙が設置されているのですが、それがものすごくシンプルだったのです。書くことは、名前と連絡先、予定コースくらい。用紙の大きさもB6くらいの小さなものだったと記憶します。「これだ!」と思いました。これでいいじゃんと。


そもそも、日本の登山界で推奨される「登山計画書」の書式は複雑すぎるのです。たとえば、今回の長野県が書式例として公開しているのはこれです。


登山計画書作成例


見ただけで書く気がなくなりそうになりませんか。私が編集をやっていたころの『山と溪谷』で作っていた書式などは、もっと書く項目が多いものでした(今でもほとんど変わってない)。


しかし、先に書いたような状況のときに役立つ最低限の情報があればよいという立場に立てば、どうしても必要なのは、登る人の名前と連絡先(本人の連絡先ではなく、家族などの連絡先であることに注意)、そして予定のコースがどこかだけです。ほかは、あればもちろん役には立つ情報ですが、「絶対」必要ではない。


てなことを考えていたころに、以下のブログを読みました。書いているのは、山小屋で働いていて、遭難救助などにも携わった経験のある方なのですが、これを読んで私は首が折れるかと思うほど強くうなずいてしまいました。あまりに共感したので、思わずコメント書き込んでしまってます。恥ずかしい。


入山届を軽量化してみる


現場での経験からなのでしょうか。研ぎ澄まされています。付け加えることはありません。これが登山届のファイナルアンサーであります。


長野県の登山条例と私が意見が合わないのは、ここなのです。長野県が登山届を義務化したことには、入山前によく調べて登山計画書を作ることで、登山への意識を高め、ひいては遭難減少につなげたいという狙いがあるといいます。それは正論ではあるのですが、人間は面倒くささに勝てない生き物であるという視点が欠けているように私は思うのです。多くの人はそんな正論どおりには動けない。後ろ向きな認識かもしれませんが、それが現実なのではないでしょうか。


ならば、登山届はできるだけわかりやすくシンプルにして、とにかく提出率を上げることだけに力を注ぐ。そのほうが結果的に得られる実りは大きいように私は思うのです。


登山届はどこに出すか


いちばん手軽でわかりやすいのは、登山口にある登山届用のポストです。それがない場合は、事前に地元県警にインターネットやファクス、郵送で提出することになります。


ただしこの事前提出がまた面倒くさい。郵送で登山届を提出している人って、いったいどれくらいいるんでしょうか。都道府県によって受け付けている提出方法がまちまちであることも面倒くさい大きな理由です。「どこにどうやって出したらいいのかわからない」というのは、複雑な書式以上に、提出率を下げている大きな理由になっているような気がします。


個人的には、全国統一の専用サイトがあって、そこから提出できるようになるのが理想かと思います。長野県が条例施行に合わせて利用を推奨している「コンパス」というサイトは、それになり得る可能性をもっており、そこは私も長野県の姿勢を評価するところであります。


本当は家族に出せばいい


ただ、本当は、話はもっと単純なことなのかもしれません。ある山岳救助隊員の方が「行動予定を家族に伝えておいてくれればいいんです」と言っていたそうです。それさえしておけば、別に登山届は出さなくたってかまわないと。下山予定日に帰ってこなければ、家族は警察に連絡してくる。登山届を出していたところで、最初の第一報は家族(あるいはもっとも近しい人)からくるのが通常なのだから、届を出していてもいなくても結果は変わらない。


私もそのとおりと思います。なので私は、登山計画書を書いたら、まず妻にメールしておくようにしています。そしてそれをプリントして持っていき、登山口のポストに投函します。ポストがなければ、投函しないまま登っちゃいます。無届け登山になるわけですが、妻が山行内容を知っているので問題ないわけです。


ただしこのとき、意識的に実践しているのは、万一下山してこなかった場合に何をするべきかを妻に伝えておくこと。とはいっても、やることは110番に電話することだけ。しかし私の妻は登山をやらない人なので、教えられなければ、110番に連絡するということもすぐには思いつかないはずなのです。


もちろん110番に連絡するより登る山の地元警察のほうがベターで、登山雑誌などにもそのように書いてあることが多いのですが、登山素人の妻が動揺した精神状態で、山の所在地を調べ、そこの警察の電話番号を調べ……なんてことをてきぱきと遂行できるとは思えません。110番にかけたって、すぐに地元警察に話が回るはずなので、妻がモタモタ調べるよりそのほうがずっと話が早い。ということで、「110番に電話しろ」と伝えておくのがベストだという結論に至っています。


もうひとつ。「最終下山日時」というのを設定して妻に伝えることもしています。その時間を過ぎても連絡がなかったら遭難したと見なせ、という日時のことです。これは、大学探検部の届けにあった項目で、この時間を過ぎたら、部員がスクランブルで捜索に動き出すことになっていました。


一般的な登山計画書ではあまり見ないものなのですが、有効だと思うので今でも採用しています。たとえば下山予定日に帰ってこなかった場合、家族は心配するわけですが、すぐに警察に連絡して大騒ぎすると、その数時間後にひょっこり帰ってくるかもしれない、いつまで待ったらいいのかな……。


家族も登山をする人の場合は、そのへんの案配はある程度判断がつくものですが、そうでない場合は(私の家族とか)、判断できないまま不安な時間を無駄に過ごすことになってしまいますよね。ならば、時間単位で明確に設定しておいたほうがお互いにとってよいということです。これは、同居人がいなくて実家とか知人を連絡人にしている人には、より有効な手段かと思われます。


ただし、この日時の設定はわりと難しくて、ギリギリに設定してしまうと、わずかなアクシデントがあっただけで最終下山日時を過ぎてしまうことがあり得ます。かといって余裕を持たせすぎると、救助出動が遅れて手遅れになってしまうかもしれない。適切な日時を設定するには経験とそれに基づく想像力が必要なので、初心者のうちはやらないほうがいいかもしれません。





登山届は個人的に思うこといろいろあるテーマだったので、つい長くなりました。ほかにも、各種登山計画書作成サイトのレビューなど書きたいことあったのですが、長くなったのでそれはまた次回に。






2016年5月17日火曜日

"The 9th Grade"


先月行ったシャモニで買ってきた本。フリークライミングの150年にわたる歴史を、人物中心、写真中心に解き明かしていくというもの。あまりにもすばらしい本です。


昨年フランスで出版され、書店ではフランス語版と英語版両方売ってました。買ってきたのはもちろん英語版。フランス語は読めないからね。もうあまりのすばらしさに値段見ないで買ってしまったのでいくらだったか覚えておりませんが、50ユーロくらい(6000円くらい)だったかな。


著者は、ダビド・シャンブルというフランス人クライマー。版元はles editions du MONT-BLANCというところで、ディレクターという肩書きでカトリーヌ・デスティベルの名前も入っています。


とにかくすばらしい本です。英語が読めなくても、眺めているだけでお腹いっぱいになれる充実写真の連発。とはいえ、文章も読みたいので、有志の方、手分けして訳しませんか。


まあ、とにかく見ていただきたい。


こんなころの話から本は始まります


エミリオ・コミチ! かっこいい


ボルダリングの教祖ジョン・ギル


やはりというか、この写真も登場。70年代ヨセミテ・ストーン・マスターズ


当然エドリンガー(エドランジェです)! やっぱりイケメンでしたね


わたくしが大好きだったカトリーヌ・デスティベル


これ、1982年のコンペだそうです


キレキレだったころのジョニー・ドウズ


ギュリッヒの話は欠かせません


リン・ヒルさんもです


幻の天才、エリー・シェビューも出てきます。マニアはたまらん


ミッドナイトライトニングvsグロヴァッツ。この写真は初めて見たかも


われらが平山ユージは原寸大くらいの顔で登場


疑惑の男フレッド・ルーラン。こういうマニアックなネタもしっかりおさえてます


破壊王ニコル


この見開きかっこいい


そしてクリス・シャーマ登場


冒険王ディーン・ポッター。このあと、アレックス・オノルドも出てきます


コンペ写真もしっかり収録


左は安間佐千、右は野口啓代。昨年の本なので最新事情までフォローされています


ラストを飾るのはやはりこの人なのでしょうか。未来人アダム・オンドラ


と思ったらさにあらず。クライミングのもうひとつの到達点、トミー・コールドウェル





ああ……おれはこういう本が作りたかったのだ――と、原点を思い起こさせてくれる一冊でした。


Amazonにも売ってました。と思ったら、これはフランス語版。英語版が欲しい方は、上の版元のサイトなどを見てみてください。




25cm×28cm×厚さ2.5cm、重さ1kg以上。この大きさに中身がつまってます。これだけの充実したクライミング本は見た記憶がありません。クライミング好きなら絶対買って後悔しないはず!


2016年5月3日火曜日

オールドレンズの味わい


おもちゃを買ってしまいました。昔のペンタックススクリューマウントのレンズを、最新のキヤノンEOSに装着できるアダプターです。



アダプターといってもこんな簡単なもの。オートフォーカスも自動絞りも動きません。操作はオールマニュアルです。



Amazonでたまたま見つけて安かったので即買い。おそらく中国製のクオリティもへったくれもないものですが、機能的にはこれで充分なのです。



ペンタスクリューマウントレンズは3本持っています。左から35mm/f3.5、55mm/f1.8、135mm/f3.5。おそらく50年以上前のもので、中学生のときにじいちゃんの形見をもらったものです。何十年か死蔵していましたが、活躍のときがやってきました。



実写

50年前のレンズなんてボロボロの写りだろうと予想していましたが、想像以上に健闘しました。さすがに開放はアマアマですが、5.6くらいまで絞るとかなりしゃっきり写るのにびっくり。


まずは、現代の最新レンズで撮った写真


次に、ペンタックスオールドレンズ。いずれも絞り1.8です


中央を200%拡大。まずは最新レンズ


次にオールドレンズ


上の例は違いがわかりにくいので、左上のほうを拡大。最新レンズ


オールドレンズ。これでようやく違いがはっきり




大画面で見ると質感などかなり違って見えるんですが、スマホやパソコンの小さいサイズで見ていると、どっちもそれほど変わらないですね(被写体によっては違いがもっとはっきりするものもあるんですが)。


でも、オールドレンズのまったりとした写りは感じていただけましたでしょうか。これはこれで味があって、とくに四隅がドカンと落ちて暗く写るところなどかなり好み。ひんぱんに使うものじゃないけど、たまーに遊んでみようかと思います。